ツナグ想い人の心得

続編。死者と生者を繋ぐ使者役である主人公。社会人になり木工デザイン会社と使者役の2足の草鞋を履く。全5編の連作。それぞれにサプライズプロットが用意されるところは流石。自らの恋話もあり引き込まれる。設定を知っているのでやはり前作ほどの衝撃は無いのは仕方ないか。

 

 

 

 

 

密航のち洗濯

戦中戦後を生きた朝鮮人の小説家。彼の残した作品と日記から、家族の運命を探るルポ。終戦直後の北からの逃避行、米軍占領下の日本への密航。最愛の妻を残して単身泳いで上陸する。日本人と再婚し東京でクリーニング店を営むが、絶えず差別と貧しさとの戦い。体を壊し早逝する。彼と家族に象徴される植民地での厳しい現実は、反日感情へ結びつくことは理解できる。力のあるノンフィクション。

 

 

 

人生が楽しくなる世界の名画150

著者がヨーロッパ駐在時に通いまくった美術館からお気に入りの名画を抽出して照会。趣味ははっきりしていて、ルネッサンスからロココまで。印象派以降は趣味に合わないとのこと。また裸体を含めて美女がお好みと正直に吐露。ルーブル、ナショナルG,ウィフィ、プラド、美術史美術館を5大美術館に挙げる。好きな絵だけ対面して帰る贅沢は羨ましい限り。文章は簡潔カラー画像が充実して読みやすい構成。

 

 

 

商社進化論

日本の5大商社の現状と将来をルポする。日経産業新聞の連載。それぞれの伝統や得意分野を踏まえながら、共通する課題はDX対応、SDGS、若手の活用とレベルは違うがこちらも一緒。大きな危機を乗り越え、現在は総じて好調である。最後のトップインタビューは迫力があったが、中盤の記事の部分は繰り返しも多く正直今一つスピード感が出ない。

 

-果敢に笑いながらチャレンジして欲しい

-商社はビジネスエンジニアリング会社、連携を作る

-究極の御用聞き

 

 

 

 

池上彰の世界の見方北欧

北欧4国の国事情。厳しい環境と列強の間にはさまれて独自の政治、文化の路線を歩む。税負担は高いが、高福祉、教育重視は少ない人口で生き抜くための合理的な選択。日本が見習うべき制度も多い。中学校での授業にしては内容のレベルは高い。シリーズを遡る形で読破。

 

-フィンランド 枢軸国として敗戦、賠償金負担、教育大国

-スェーデン  工業国、軍事産業、かっての大国

-デンマーク  酪農王国、かっての大国だが肥沃な南をドイツに割譲

-ノルウェー  漁業国、EU非加盟、NATOには加盟、

-アイスランド 漁業国、EU非加盟、地熱発電

 

 

 

 

オードリーヘップバーンの言葉

伝説の女優の発言を抽出し、彼女の人生を追う。1929年生まれ、ナチスの時代を生き抜き、バレリーナを目指すが、身長が高すぎて断念。本人はやせぎすの体形にコンプレックスを持っていたようだ。ローマの休日で銀幕デビュー。その後の活躍は知られている通り。2度の結婚と離婚。仕事よりも家庭を優先する。晩年はユニセフの親善大使として恵まれない子供たちにつくす。誰もに好かれる気品と筋の通った生き方。享年63歳は今の私と同じ。一気読み。

 

-自分には二つの手がある。ひとつは自分を支えるため、もう一つは誰かを助けるため。(サムレヴァンソン)

 

 

 

世界を驚かせたスクラム経営

2019年のラクビーワールドカップ日本大会。その舞台裏で運営に当たった人々のノンフィクション。強豪国以外では初めて、そしてアジアでの開催ということで前例がなく準備は遅々として進まない。国際組織からの要求は高く、そして上納金の義務。唯一の収入はチケット売り上げ。寄合所帯の組織はサイロの壁を突破できない。流れを変えたのは徹底したコミュニケーションと、「すべての参加者に一生に一度の舞台にする。という合言葉。開催後はトラブルに迅速に対応。台風による中止も混乱なく収めた。醸成された信頼関係の勝利。感動的な内容であるが、公式レポートのようでやや文章は硬い。