地球行商人

味の素の営業部隊。アジアやアフリカでのどぶ板営業を描く。有名大学出身のエリートが徹底した現地化。小袋での販売で拡販に貢献する。文化の違いや社員の不正、自殺。時には強盗や革命など生命の危険にも遭遇する。評価関数は売り上げでは無く、インボイスの枚数。地道な信頼関係の構築がやがて実を結ぶ。500頁弱の大作。小説仕立てで読みやすいが、ややバラエティに欠けるか。

 

 

 

半導体ビジネスの覇者

TSMCの創業からファウンダリーとしての成功、今後の課題を描くビジネスルポ。最初は欧米から技術を導入し、天、地、人の利を活かして発展。創業者モリスの存在が大きい。TIに長く勤め、政府の要請で起業する。当初はフィリップスが出資。成長した時点で売却。競争力の源泉は高い歩留まり。これはPC生産等で蓄積した工場の現場力。利益を巨大投資に廻し、研究開発も怠らない。圧倒的で優秀な技術者の集団。著者は台湾紙の記者。基本はTSMC礼賛だが台湾側の視点は新鮮。引用多数。

 

-今後はEVとスマートロボ需要

-CEOは企業と外界とつなぐ重要なパイプ

-制度は米国式だがリーダーシップは台湾式(管理ではなくリーダーシップ)

-両手戦略(技術力とコスト競争力)

-営業にはビックデータとAIをすでに活用

 

中国との関係

-護国神山 TSMCの存在が台湾の防衛を国際社会に訴える

-同文同種 使用する文字も人種も同じ

 

将来の課題

-水と電気

-世代交代

 

 

 

 

鞍馬天狗のおじさんは

戦前の大スター嵐寛寿郎の想い出語りを、ルポライター竹中氏がまとめた大作。時代劇、チャンバラ映画の全盛期。興業的には成功であるが、芸術的には一段低く見られ評価されてこなかった。各スターが独自のプロダクションを設立するも、映画業界の資本の論理もあり、離散集合を繰り返す。アラカンは良い映画を撮れれば満足で、金には無頓着。女には甘い。それでいて部下の面倒見は良い。戦後は脇役となり明治天皇役も演じる。アラカンの独白部分は面白いが、映画界の内紛話は正直退屈。読破には時間を要した。書評では絶賛されているが、評価は微妙。

 

 

 

 

 

 

ツナグ想い人の心得

続編。死者と生者を繋ぐ使者役である主人公。社会人になり木工デザイン会社と使者役の2足の草鞋を履く。全5編の連作。それぞれにサプライズプロットが用意されるところは流石。自らの恋話もあり引き込まれる。設定を知っているのでやはり前作ほどの衝撃は無いのは仕方ないか。

 

 

 

 

 

密航のち洗濯

戦中戦後を生きた朝鮮人の小説家。彼の残した作品と日記から、家族の運命を探るルポ。終戦直後の北からの逃避行、米軍占領下の日本への密航。最愛の妻を残して単身泳いで上陸する。日本人と再婚し東京でクリーニング店を営むが、絶えず差別と貧しさとの戦い。体を壊し早逝する。彼と家族に象徴される植民地での厳しい現実は、反日感情へ結びつくことは理解できる。力のあるノンフィクション。

 

 

 

人生が楽しくなる世界の名画150

著者がヨーロッパ駐在時に通いまくった美術館からお気に入りの名画を抽出して照会。趣味ははっきりしていて、ルネッサンスからロココまで。印象派以降は趣味に合わないとのこと。また裸体を含めて美女がお好みと正直に吐露。ルーブル、ナショナルG,ウィフィ、プラド、美術史美術館を5大美術館に挙げる。好きな絵だけ対面して帰る贅沢は羨ましい限り。文章は簡潔カラー画像が充実して読みやすい構成。

 

 

 

商社進化論

日本の5大商社の現状と将来をルポする。日経産業新聞の連載。それぞれの伝統や得意分野を踏まえながら、共通する課題はDX対応、SDGS、若手の活用とレベルは違うがこちらも一緒。大きな危機を乗り越え、現在は総じて好調である。最後のトップインタビューは迫力があったが、中盤の記事の部分は繰り返しも多く正直今一つスピード感が出ない。

 

-果敢に笑いながらチャレンジして欲しい

-商社はビジネスエンジニアリング会社、連携を作る

-究極の御用聞き