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○雑誌宇宙
「新潮」7月号に「雑書宇宙を探検して」というお題の坪内祐三・谷沢永一対談があることをナンダロウさんの6月11日の日記(http://d.hatena.ne.jp/kawasusu/20050611)で知った。
最近私は司馬遼ブームであり、数少ない司馬遼言及者である谷沢の著作にも無関心を装いつつやはり気に留めている。この対談は、たぶん司馬遼にはあまり関係ないと思ったが、もののついでに図書館で読んでみた。
坪内によれば、昨年暮れに和泉書院より刊行された谷沢の「遊星群 時代を語る好書録」明治篇・大正編(ISBN:4757602871, ISBN:475760288X)は、「明治、大正期に刊行された600冊以上の雑誌、つまり学会や文壇ジャーナリズムでは価値を認められることなく、視野の外に置かれてきた書物から貴重な証言や面白い記述をピックアップしたもの」とのこと。
対談は、その「遊星群 」の編纂コンセプトを中心に坪内が谷沢に訊くという体裁になっている。
それにしても明治篇大正篇二冊合わせて二千三百ページを越えるというこから、谷沢のこの本に対する意気込みは並大抵なものではない。一体全体そんな途方もない本をどうしてこしらえようと思ったのか、谷沢の魂胆が気になる。
以下166ページより引用。
谷沢(略)近代文学の文学的価値というのは、いわゆる東大系の史観が気品になっていて、早稲田の人的山脈を多少軽く見ようとする傾向がある。それとは逆に、早稲田に発する文化の系統をいささかクローズアップするというのが狙いのひとつでした。
私学出身者の意地ってことか!苦労したんだねぇ。
谷沢はときたまPHP研究所あたりから、素っ頓狂な雄叫びを挙げるわけが、後生の書誌学者はどのような文脈でオピニオンリーダー(?)としての谷沢を一体どう評価するだろう?
対談全体を通した印象はイマイチ。
これは「幻の大阪」の対談にも感じたが、どうも坪内は、谷沢としゃべっているとズブの素人的に書痴のポコチンを出てしまう傾向にあるように思う。
本や古本ライターはいまでこそわんさかいる。けれど何を書くかと同時にどう書くかというスタイルに確固としたイメージあるという点で誰も坪内に並ぶ者はないはず。
簡単に言うと、坪内ほど編集者感覚に優れたこの方面の書き手はいない(それが鼻につく場合もあるが)。
そんな坪内の編集者な勘が谷沢との対談には全く発揮されていない。谷沢は、坪内の書痴ポコチンを開帳させる媒介なのか。
ま、単に私が対談中飛び交う固有名詞に反応できない不勉強のせいかもしれないが。
この二人の対談は今後もまめに拾ってみたい。
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