真夜中は別の人

2007-02-20

オウムのこと(2) 騙す側と騙される側 22:06  オウムのこと(2) 騙す側と騙される側を含むブックマーク


(続き物になってしまったので、前エントリを改題しました。)


個人的には、松本智津夫という人物については、宗教家というより詐欺師という視点で見ている。たとえば彼の初期の犯歴を見る。

1976年7月、知人を殴打する。これにより傷害罪で罰金刑を受ける。

1980年保険料の不正請求が発覚し、670万円の返還を要求される。

1981年、健康薬品販売店「BMA薬局」を開局したものの、1982年に無許可の医薬品を製造販売したため薬事法違反で逮捕され、20万円の罰金刑を受ける。

麻原彰晃 - Wikipedia(一部抜粋)

一番最初こそ暴力事件だが、その後は詐欺罪ではないにしろ似たようなものである。特に薬事法違反の件は、みかんの皮を原料にニセ薬を作ったというもので、この時点では、まあ小悪党である。



だから、オウムという団体も松本智津夫の詐欺の結果という視点で見ることが多い。



地下鉄サリン事件などの一連の事件の動機も、基本的に組織防衛のためだったのだと思っている。オウム内部の無駄に細かな階層制度や、無駄にややこしい“省庁制”などの組織化、一般信者には禁欲を要求しながら、妻はともかく他の女性信者との間に複数の子供を作っていたことなどから、オウムにとっての組織防衛とは要するに麻原教祖としての安楽な生活を守ることだったのだろうということだ。それを支えている詐欺のからくりを喝破されるのは困る。だから阻止する。そして、そのための手段は選ばない。


タントラ・ヴァジュラヤーナだか金剛乗だかよく知らないが、そういう“危険な教義”というのは、実行犯に選ばれた信徒の最後の良心を黙らせるための麻酔薬の役目でしかなかったのだろうと思っている。つまり宗教上の大目的ではなくて単に手段・方便であろうと。そう思って見ているから、その“危険な教義”のオウムの教義全体との整合性だとか、まして仏教全体における位置づけだとかいった議論にてんで興味が向かない。要するに詐欺師のする詐話の一つ、からくりの種じゃねえかと思えば、それまでだからだ。



だから問題は、教義の中身がどうとかではない。それが教義であれ、詐話であれ、それを信じて恐るべきことどもをやってのけた人間が相当数いた、という単純な事実に絞られる。たとえ詐欺師一人の欲望から発したことであっても、それを自らの信じる宗教の大きな目標のためだと思って、どんな恐るべきことでも実行できる人間を多数作り出したということが、オウムという団体の最大の危険性だと思っている。


そして、それを今は多くが死刑囚となっている実行犯だけの問題とできるのか、という点について、私は強い疑問を持っている。実行犯の多くが組織の幹部ではあったが、彼らが信者として特別強烈な信仰心を抱いていたのかというと、このあたりはよく分からない。彼らは信者の中にあって、たまたま騙されやすい人間だったのか? そうは思えない。彼らの多くはたまたま古参であってそうした立場になっただけで、他の多くの信者も似たような機会があれば同じような行動をとる割合が相当に高かったのではないかと、私は強く疑っている。


思い出すのは、地下鉄サリン事件以後の一斉捜索とその後の大量の逮捕者を出していた時期のことだ。逃亡者をかくまって捕まった一般の信者達がいた。指紋を消すなどの工作に携わった信者がいた。高級幹部の一人であった上祐は、比較的早い段階で真相を知ったそうだが、それでも嘘をつき続けた。だが、組織を“裏切って”自ら重要な証言をした信者や、重大な事件を行うことを良心から拒否した信者の話をほとんど全く聞かなかった。


事件後の騒動がある程度終わり、数年が経ってもなおサリン事件などを自らの組織がやったのだということを認識できなかったという信者の証言は多い。あるいは、今でもそう信じている信者がかなりの数いるのではないか。なによりも今でもオウムはかなりの数の信者を擁し、“セミナー”や“イニシエーション”でかなりの額の資金を資金を集めつづけているのだ。


ある人はそれを麻原への帰依がまだ残っているのだと言う。私には松本智津夫が作り出した詐欺の世界に今でも住んでいるのだなと見える。今もって騙す側と騙される側の関係がそこで続いているのだと。



オウムが引き起こした事件の中で比較的最近のものは幹部の一人である野田成人が起こした薬事法違反であった。師匠と弟子ということを思う。

ちょっとショック 22:26  ちょっとショックを含むブックマーク

美也子さんにこんなことを言われてちょっとショックだった。

私はそちらで数学の話題になるたび、PCの前でのけぞりつつ後ずさっております。

うちで時々やっているのは、数学なんてものじゃなくて算数ですよ(汗)基本的に掛け算と割り算だけですし。


日常的なスケールから出発して馬鹿馬鹿しいサイズまで膨らませるか、非日常的なスケールから出発して珍しくも無いサイズまで縮ませるかの2パターンしか無いんです。それをできるだけ単純なステップでやって、日ごろの想像を絶しているものを少しでも実感できないもんかなというネタなんですが、後ずさらせてましたか、そうですか。しくしく。



精進いたしますので、後ずさらないでお読みくだされば幸いです。最近、エントリ少ないけど。


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美也子美也子 2007/02/21 12:48 い? 算数ですと?
「月と五円玉」の話なぞ、「グッドウィルハンティング」でやってた高等数学というのはこういうもんかと思ってました(恥)。
とてつもなく想像を絶してまして、申し訳ありません。
私がついていけるレベルは、ビールの広告どまりです。どおかお気になさらず。

yetanotheryetanother 2007/02/21 22:32 あー、あの式はたしかに高校範囲なので、かろうじて数学の範疇ですね。でもその次の回でやってるように掛け算と割り算だけでも十分な答えが出る場面です。じゃあなんでかっていうと、はてなにTeX記法というのがあって、一度使ってみたかっただけでして。

なんというか、無駄に桁の多い数字に憧れるというのは、ある種のバカであり、フェチなのです。生暖かい眼でご覧ください。

eshekeshek 2007/02/22 02:23 >ある人はそれを麻原への帰依がまだ残っているのだと言う。私には松本智津夫が作り出した詐欺の世界に今でも住んでいるのだなと見える。今もって騙す側と騙される側の関係がそこで続いているのだと。

このあたりが、滝本弁護士が「麻原への観想」と言っている部分ですね。実行犯の麻原への帰依は絶対で、典型的な洗脳だと思います。
だから、その環境からはなれると、半分くらいは解けるんです。
BB氏が紹介していたような事例は不幸なめぐり合わせでお客がサマナだけになってしまった。つまり、現世にいても出家と同様の状態になっているからなかなか解けない。
ケースバイケースなんです。最終的には面談しないと詳しいことはわかりませんけど。

eshekeshek 2007/02/22 02:30 本エントリに関係ないですが、TB送りました。よろしく。

yetanotheryetanother 2007/02/22 03:17 >eshekさん
こんばんは。
例えば、村上春樹氏の「約束された土地で」なんかを読んだ限りでは、
>だから、その環境からはなれると、半分くらいは解けるんです。
とあっさり言うことは、少なくとも私にはできません。むしろ、単に離れるだけでは足りなくて、他に何か必要なんだなと感じました。例えば恋人ができること、というのは滝本弁護士がどこかで書いておられました。

洗脳というのは確かに強力なものだと思いますが、一般には身柄を拘束された上で拷問などによって強制されるものだと私は考えています。決して大枚をはたいたり、私財を擲って自ら進んで受けるものではないと。だから、オウムに関して洗脳されたから仕方が無いというような見方は私はしないことにしています。ある意味でこれがこのエントリの主題でもありました。

TBの件等ですが、できるだけリンクしないように書いているつもりなんですが、この状況下では無理ですかね。直結なエントリも書きかけたんですが、ずいぶん悩んで捨てました。

eshekeshek 2007/02/22 03:49 環境だけでは確かにだめですね。ただ、それはやっぱりすごく重要なので、とにかく離すように向けるのは大切なんです。無理やり離すと被害妄想が募ってかえって逆効果なので、施設を離れるのをじっと待つわけですが。まあこの辺は統一協会とかも同じです。

あとは確かに人生の方向が変わること。仕事に熱中するとか、新しい人間関係で今まで見えなかった部分が見えるとか、いい仕事をしてその成果が出るとか・・・でも人それぞれなんで、「これだ」って決定的なものはないと思います。恋愛は確かにいいと思いますがまあ相手がいてのことなので(笑)。まずは仕事をすることだと思いますよ。外界とできるだけ接すること――これも無理なときもあるので、鬱とかでつらければ引きこもっても仕方ないとは思いますが。あくまで本人の意志で、強制したらその時点でおじゃんです。

洗脳は組織だけでなく、個人間でもありえます。犯罪の中にはものすごく顕著なものもあって、今回引こうかと思ったんですが、あまりに残酷な事件なのでちょっと。本当に善良な人が、自分では望んでいない犯罪を犯しますね。オウムの実行犯は完全に麻原に支配されていて、逃亡中も(麻原に対する)罪悪感が消えなかったそうです。犯罪はやっぱり、示唆した人間により重い責任があると思います。実行犯も責任はありますが。insaneというほどのことは言えないからです。ただ示唆した人間と同等の刑=死刑というのは理屈に合いません。はっきり区別しないと今後のためにならないです。

マインドコントロールについては、洗脳が恐怖などのネガティブな手段によって心を支配するのに対してポジティブな手段のような気はしますね。苫米地さんなんかはそれで説明しています。だから洗脳よりも解くのは難しいと思います。でも人それぞれです。きっかけ次第です。離れた人間は1万人もいて、オウムのために犯罪を犯す人間はほとんどいないです。

TBの話ではリンクという話は別に問題ないです。ただ、他のサイトの話ですが、あまりにひどくて、実名や、誤解を招くような表現は避けませんか、変な仄めかしをしないで、はっきり問題を規定しましょう、公開でできなければメールの中ではっきり聞きましょう、ということなんです。私もいくつかエントリで批判しましたけれど、全然自覚がなくそういうことをしてしまったりする人もいるので。それで今回の騒ぎですから、いいかげんに追求側の方でこれくらいは気をつけましょうよ、ということで。あといつまでもだらだら拷問のように続けないで、きっぱりと期限をつける、ということです。仄めかしは文学ではいいですけど、人に質問をしている身でそういうことばっかりしてるというのは嫌がらせですね。これはすべてこちらのサイトのことではないですが、回覧といった感じでTBさせていただいたものです。

kerodonkerodon 2007/02/22 08:02 eshek氏
>恋愛は確かにいいと思いますがいますがまあ相手がいてのことなので(笑)。

なんか、あなた専門家気取りだけど、底が知れるね(笑)

つ 2007/02/22 20:01 ヤクの話はないの? 両手落ちだな。これは精神をとっても壊すよ。

yetanotheryetanother 2007/02/22 20:08 >kerodonさん
争いごとが嫌いなら無駄に煽るんじゃないのっ。


>eshekさん
もちろん私は上記のあなたのコメントが「一般的な洗脳の知識」の開陳であると認識しておりましたし、「特定の人物」についての話題であると連想さえさせるような表現は、エントリ本文も含めてしていないつもりです。にもかかわらず、あえて追記なさり、あえて彼の名前をここに持ち出す意図が正直に言って私には分かりかねます。

たとえそれが筆名とはいえ、特に彼を話題にしている場面でなく、私はできるだけ彼の件と「リンクしないように」注意していると述べた直後に、そしてこの微妙な状況下に、彼を過度に追いつめないよう主張するあなたが、です。あなたの述べた彼についての見解に対する私の意見をお望みですか?あるいは議論でもしますか?

私は面識さえ無い人物の、そのように微妙な精神状態について、第3者と公開の場で云々するつもりは基本的にありません。それを直接・間接に指し示す資料でもあれば、また別ですが、その場合でさえ私は大いに躊躇します。それがたとえ一見その人物を擁護する意見の表明であったとしても。

yetanotheryetanother 2007/02/22 20:35 >つ さん
チベット高原に住むウシ科の動物の話が本エントリに必要だったのでしょうか?

いや、まあ、麻薬の話だってことは分かってますけどね。それってeshekさんの洗脳の件ですか? それともやっぱり私のエントリ?

eshekeshek 2007/02/22 22:35 >yetanotherさん
追記
上に書いたのは一般的な洗脳の知識です。
特定の人物がそういう状態かどうかはわかりませんが、少なくとも麻原の支配はすでに及んでいないと私は思っています。』 (2007/02/22 12:21)(22:30訂正移動)

eshekeshek 2007/02/22 22:56 >yetanotherさん
はっきりと否定したかったので特定したのですが、本人の許可を得たことではないので直近に訂正移動しました。ご指摘ありがとうございました。

その人物については、ではこのエントリーは「全く関係ない」記事だと考えてよろしいですか。
つまり、TBに書いたとおり、現在の精神的苦痛においては実名の表記とともに、「ほのめかし」も苦痛を与えているということもあります。「全く関係ない」社会問題としてならいいですが、関係しているなら、本人に充分な弁明の機会を与えるように叙述した方が本人にとってはやりやすいですし、誤解を解きやすいと思います。ご本人が主張していたのは「文章に責任を持って明確に書いてくれ」ということだったと思いました。徒に名指しを避けてくれ、ということ「だけ」ではないと思います。実名は論外ですが。


それはともかく、実行犯において麻原の支配は強力だったという資料はありますね。だから教義ではなく主として組織の問題で、麻原を観想しているか否かが重要だという話になるかと思います。

yetanotheryetanother 2007/02/23 00:14 > eshekさん
はっきりと否定したいと思われるのはあなたのご自由ですが、なぜそれをここでする必要があるとそれほどに思われるのか、私には理解できません。

このエントリーの関係性についてですが、「かつてオウムの信者だったという経歴がある」という意味においては、完全に関係が無いとは言い切れないでしょう。そういう経歴を持ったすべての人たちと同程度の関係はあると思います。

また、このエントリで私が最終的に問題にしているのは、「現在オウム者である人たち」です。主題は現在のオウムの危険性についてなのですから。まあ、このことの意が尽くせないとすれば、それは私の責任だと思いますが。

従って、どなたであれ元信者である方がこれに対して「弁明」する必要があるとは、私には思えません。あるいは、以下のような部分、
>だが、組織を“裏切って”自ら重要な証言をした信者や、重大な
>事件を行うことを良心から拒否した信者の話をほとんど全く聞か
>なかった。
について、元信者から「いや、そんなことはない。このような事例があったのだ。」というような「証言」はありうると思いますし、それはありがたいことだと思います。でもそれは「弁明」ではありませんよね。結局、私はそもそも誰かに「弁明」が必要となるような文章を書いたつもりは無いですし、というかどこかそう読めますか?

>徒に名指しを避けてくれ、ということ「だけ」ではないと思います。
しかし、営業上の迷惑を被っていると書いておられるのですから、お仕事で使われている筆名をこういう場面で出すことについては私は不適当だと思うのですが、いかがですか?オウムの話を書くと、特に関係ないのに何故か彼の脱会を主張する人が現れる、といった状況はむしろ彼にとって非常に迷惑だと思うのですが。さらに言うと、その舞台としてここを使用されることは、私にとって迷惑です。

これは、彼を過度に追い詰めるのはやめようと主張なさっているあなただからこそ、改めて申し上げます。そういう意味では先日のトラックバックも不要というか、不用意だと感じました。

ところで、もしやeshekさんは今のidを取得される以前に、別のハンドルで当ブログにコメントを書き込まれたことがありませんか?私の勘違いなら申し訳ないことですが。ちょっと思い当たることがあったので。

eshekeshek 2007/02/23 00:55 >ところで、もしやeshekさんは今のidを取得される以前に、別のハンドルで当ブログにコメントを書き込まれたことがありませんか?

まったくありません。こちらに書き込むのはこれが初めてです。
以前「ユーザーカルマ」について2ちゃんでお話は多分したと思いますが。

該当の人物については、「彼について何かをほのめかした記事である」ということでないとわかれば充分です。そうなのか、そうでないのか、考えなければならない状況というのはひどく苦痛なものなので。
今までそういう状況が多すぎて、そのたびにご本人は筆名名指しでない場合でも出張して弁明しなければならなかった、そういうことをしてきた、という状況を、私たち追及側としては十分理解するべきだと思いました。ほのめかしというのは明確なモラルハラスメントですから。yetanotherさんは、していない、と明言してくださったので充分です。タイミングとしてこの時期に、と考えてしまったので。誤解をお許しください。

追求の結果として、ああいうことがありました。こちらが意識を改めなければならないと思っています。だからTBを送りました。ご本人の代弁ではなく、私たちがしてきたことの責任として、全員で考えるべきこととして。もしよかったら、考えませんか。

yetanotheryetanother 2007/02/23 01:44 >まったくありません。こちらに書き込むのはこれが初めてです。
これは失礼しました。

>以前「ユーザーカルマ」について2ちゃんでお話は多分したと思いますが。
おお、そうでしたか。あー、あの時のことかな。

「意識」の件については、上のコメントで述べたようなことを考えているということで、繰り返しません。

eshekeshek 2007/02/23 09:22 # eshek 『そうです。どうも、あの節は(笑)。引用もしていただいたようで。

まあ・・・今やってるのはあの時の続きのようなものです。いいかげんなことで人を追及するのがいやなもので。ここしばらく、ちょっとひどすぎる話が続いて、追求側から内部批判もやっと出たわけですが、今までやらなすぎだったという感じ、ですね。
とりあえずご指摘までということで、これからもよろしく。』 (2007/02/23 02:01)
追加訂正@9:20
眠くて変な言い方をしてしまいましたが、本題は実行犯についての洗脳と麻原の支配についてですので、その点はよろしく。追記についての説明が本題のようになってしまったので。

つ 2007/02/23 21:16 一行レスで意を尽くせず誠に申し訳ありませんでした。
そうです、そうですチベットのヤクです。今の私の心境にはピッタリです。この十年、脳内化学物質の研究が矢のように進んでいますから、”科学は諸刃の剣”恐ろしいなと。つい観想。
あっ、いつもおもすろくROMっておりますです。「月と五円玉」なんて抜群。モームを思いだしたです。ときどきやってます。ではでは

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