香港電影放浪録

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2010-07-15

光陽似箭 如水流年

| 21:01

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台湾への扉は、二人が開いてくれた。


台北の小さな映画館「光點電影院」。緑に包まれた建物は、旧米国大使公邸。どっしりした白壁が、しっとりした空気を包んでいる。売店の壁には、監督たちの顔が掲げられていた。見上げると、侯孝賢ホウ・シャオシェン)と楊徳昌エドワード・ヤン)が並んでいる。二十年近く前、「恋恋風塵」と「恐怖分子」に出合わなければ、きっと今ここにはいなかった──。


階段を上がる。教室ほどの小さな部屋をのぞくと、シンポジウムが開かれていた。フィリピン人権映画が上映され、監督と観客たちが意見を交わしている。台湾への出稼ぎ女性たちの姿も見える。監督の隣に座った顔を見て、息をのんだ。侯孝賢だった。


黒いシャツの侯孝賢は、刻まれた皺が増えただけで、若いころと変わらぬように見えた。口をへの字に結び、やや早口に、意見を述べている。思った通りの聞かん気だ。言葉を懸命に耳で追いながら、痩せた、浅黒い顔を見つめた。シンポジウムが終わった後も、玄関脇に降りて、知人たちと話し続けていた。黒いジャンパーに、白っぽい野球帽。煙草を片手に、言葉は尽きることがない。


夜。楊徳昌の「恐怖分子」を見た。映画館で見るのは初めてだった。端から端までいっぱいの──ほぼ若い人で埋まった──客席は、四半世紀前の台北を静かに見ていた。


楊徳昌が去って、三年になる。侯孝賢は、六十歳を過ぎた。

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