英語で情報を取る:中​流階層、テロリズム、​エスペランザ・スポル​ディング [久松 20110215]

浅見さん、綾部さん、西中さん、須賀さん、丹羽さん:
<関心がありそうな人には転送してもかまいません>
<不要なら、久松に送るな、と言ってください>
<暇な時に読んで頂ければ幸いです>

どうも。「英語で情報をとる」です。春休み中は発信できますが、
おそらく学期に入ると、私のブログから、皆さん勝手に久松が
チェックした情報を見てもらおうと思ってます。
http://cocolog-yoshi.cocolog-nifty.com/

この一週間は、何と言ってもエジプトの民衆蜂起と政権崩壊でした。
皆さんにスペイン語が読めれば、2010ノーベル文学賞受賞者の
ペルーの作家、マリオ・バルガス・ジョサが書いた闊達なop-ed、
『自由とアラブ人』を読んで頂きたいのですが、それはまた将来。
http://www.elpais.com/articulo/opinion/libertad/arabes/elpepiopi/20110213elpepiopi_13/Tes
(フランス語が出来る人なら感じはわかるかもしれないのでリンクを貼ります)

では、英語に戻って、今回の民衆蜂起・政権崩壊において、
活躍したのが「中流階層」ということに注目しましょう。
中産階級とか、中流階級とか言いますが、要はmiddle classです。
middle classという言葉は、やや欧州と米国で語感が違います。
というより、元々、欧州の言葉だと思ってください。もちろん、政治学
社会学では重要な概念で、それはそれとして米国でも使います。

手元にある三つの英英辞典を引いてみました。
the social class to which people belong who are neither
very wealthy nor workers with their hands
(Longman Dictionary of American English)

the people in a society who are not of high social
rank or extremely rich but are not poor. They
expect to be able to have a good job and/or a
college education
(Cambridge International Dictionary of English)

social class between upper and lower, including
professional and business people
(The Oxford Dictionary of Current English)

英英辞典を使ってくださいね。私は高校大学はLongman
使っていました。自分の好きな辞書ならなんでもいいです。それはそうと、
それぞれの辞書で言葉が違うのが面白いですね。エジプトの民衆蜂起では、
こんな人が活躍していたことを書いていたブログがありました。

Around me were many people I knew―writers, doctors, researchers,
filmmakers―among the many more I didn’t, but who still smiled in
mutual recognition of the revolt we had taken part in for the past
eighteen days.
http://www.nybooks.com/blogs/nyrblog/2011/feb/12/freedom/

作家、医者、研究者、映画作家、これらはprofessionalであり、good jobであり
その多くは大学教育を受けているでしょう。エジプトの高校進学率が28%(2008年)で
あることを考えると、社会の中の上層とは言えなくても、下層とは呼べない人々が
多数参加していることが想像できます。もちろん、労働者の参加もあったでしょう。
それでも、今回の民衆蜂起の主役は「中流階層」であると私は考えます。
(高校進学率データは世界銀行のWorld Development Indicatorsから
とりました。世の中は随分、データ参照が楽になったものです。)
http://data.worldbank.org/data-catalog

business peopleと言う言葉に困惑した人もいるかもしれません。
しかし、今回の民衆蜂起のきっかけとなったFacebookのページを
作ったWael Ghonim氏はGoogle Executiveだそうです。
つまり、business peopleと言ってもいいでしょう。
ちなみに、彼のTwitterはこれです。
http://twitter.com/Ghonim

もし万一、社会階層と政治との関係を知りたい人がいれば、
今田高俊『社会階層と政治』(東京大学出版会、1989年)
という本があります。古い本ですが、やや難しいかも。
こういうのを図書館でbrowseするというのが大事な能力です。
米国を代表する哲学者・心理学者と言われているWilliam Jamesが
こう言っているそうです。
『The art of being wise is the art of knowing what to overlook.』
全ての本を最初から最後まで全部読んではいけません。
<研究室で、学生から『先生、この本は全て読んだんですか?』と
聞かれると、いつもこう思います。>

さて、私のちょっとした関心は、このような中東の民衆蜂起・政権転覆が
民主主義をもたらす方向で動いていくとすると、中東の方々が起こす
テロリズムにどのような影響があるかということです。私は国内テロが
やや減る方向に行くのではないかと推測しています。それは、以前に
アラン・クルーガー『テロリストの経済学』(東洋経済新報社、2008年)
を読んだからです。ここには、貧困はテロリズムの土壌ではないと議論されています。
では、テロリズムの土壌は何かと言うと、中流層への自由の途絶だと
推定されています。すなわち、より中間層が自由になれば、
国内テロは下がることが予想されます。いつか覚えていれば、
こちらのサイトを使って、チェックしてみようと思います。
http://www.nctc.gov/wits/witsnextgen.html

では、国際テロはどうでしょうか。これについてもアラン・クルーガーが最近、
研究を発表しています。データをとって、見てみたということです。
Podcastでインタビューに答え、そしてtranscripもあります。
http://www.sciencemag.org/content/325/5947/1534/suppl/DC2
http://www.sciencemag.org/content/suppl/2009/09/17/325.5947.1566-b.DC1/SciencePodcast_090918.pdf

最後です。2月13日に米国音楽の最大イベント、グラミー賞がありました。
私は、Best New Artistに選ばれたEsperanza Spaldingという
ベーシスト兼歌手を知りました。素晴らしい繊細さですね。
今日は彼女が歌ったPonta de Areiaというミルトン・ナシミエントという
ブラジル人シンガーのカバー曲を10数回聞いてますが、たいしたものです。
でも、これだけ才能があった彼女でも、もう音楽はやめて政治学でも
学ぼうと思った時があったそうです。その時に何があったかという
インタビューがありました(伝 Wikipedia)。

Q: Then it was off to Portland University and the Berklee College of
music, where you “aced” the audition and received a scholarship. Tell
me about your “defining moment” with (guitarist) Pat Metheny.

A: Hilarious. I don't know if he even remembers the conversation! For
him it was so nonchalant and for me it was so huge! I was just talking
to a friend about this. When you're looking for an answer the tiniest
thing becomes the most significant thing. Anyway, the conversation
took place at Berklee when Gary Burton and Pat Metheny were producing
a record by the student ensemble. Everybody had left the studio and I
was there, probably practicing and Mr. Metheny walked in and asked me
what I was planning to do with my life. I told him that I was thinking
of leaving school and pursuing a degree in political science. He told
me that he meets a lot of musicians, some great, some not so great and
that I had (what he called) the “X Factor.” Meaning, that if I chose
to pursue a career in music and I applied myself, my potential was
unlimited.

Q: How did that make you feel?

A: Mind you, he didn’t say I was “great.” He said if I worked hard I
could make it, which is what it’s all about. Any creative pursuit is a
lifelong process.

ということで、新しい歌手を知った2月15日でした。
皆さんにも毎日「新しい発見」がありますように。では。

久松