フィッシング詐欺が刑法上の「詐欺罪」に該当しない理由

我が国の刑法では、①他人を欺いて②錯誤に陥らせ③錯誤に基づいて財物または財産上の利益を移転させることにより、詐欺罪が成立します。フィッシング詐欺の場合、①②は満たしますが、IDやパスワードといったものは、それ自体、通常は、財物でも、財産上の利益でもないため、そういった行為自体は、一般的には、刑法上の詐欺罪には該当しないということになります。
現在、経済産業省が中心となって、「情報窃盗」(これも、現行法では窃盗罪には該当しません)を処罰する方向で検討が進められていますが、フィッシング詐欺のような、一種の「情報詐欺」も、深刻な問題であることは認識しておく必要があります。
私が知る限り、捜査当局は、現状では、現行法の枠内での立件(偽装の点での著作権法違反、偽装の被害にあったISP等に対する偽計業務妨害罪など)を目指しているようです。

川に小1女児転落、水死 助けようと友達の母も 岸壁滑り抱えて上れず 福岡

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050529-00000017-san-soci

事故に気付いて川に飛び込んだ清水さんは、いったん優佳ちゃんを抱きかかえて上がろうとしたものの、岸壁がコケなどで滑りやすく間もなく力尽きたという。

人の運命というものは、こういうところでわかれるものなんだな、と思いました。非常に痛ましく、亡くなった方のご冥福をお祈りしたいと思います。

橋梁談合、都OBから発注情報 組織30社に天下り

http://www.asahi.com/national/update/0528/TKY200505280236.html?t1

関係者によると、談合2組織の47社のうち、独占禁止法違反で告発された幹事社の横河ブリッジ石川島播磨重工業など少なくとも30社に計30人の都OBが天下りしていた。A会常任幹事の川田工業には、橋梁建設などを所管する都第3建設事務所長などを歴任し、河川部長で退職したOBが再就職。03年度のK会副幹事の宮地鉄工所に天下りした都OBは退職時、都第2建設事務所長だった。

こういう人間達が天下りするのは、この記事で指摘されているような違法、不当、不明朗なことをするため以外にはない(それ以外には使いようがない)はずなので、利害関係がある民間企業への天下りは一切禁止するしかないと思います。
こういう天下りが、いつまでたっても根絶できないこと自体が、日本人に根強く染みついた談合体質の現れでしょう。

橋梁談合:天下り40人超 出勤ゼロで年収1000万円も
http://www.mainichi-msn.co.jp/today/news/20050529k0000m040115000c.html

国家公務員は原則として退職後2年間は、関係先への天下りが禁じられているが、JHについてはこうした禁止規定がなく、離職直後でも再就職が可能となっている。橋梁専門会社に天下りし、最高顧問に就任している80代の男性は、かずら会の存在を認めたうえで「会社に名前を貸してるだけで、仕事は何もしてない」と話した。
▽JHの話 再就職は職業選択の自由であり、公団は私的な問題に関与する立場にない。

道路公団OBが、天下り禁止規定がないのをよいことに、天下りして談合し放題、よぼよぼになっても「昔の名前で」金をもらい放題、そういった実態を知りながら、道路公団も「職業選択の自由」などとうそぶいて見て見ぬふり、という実態が現れた記事でしょう。
検察庁も、発注者側にも切り込んで、こういった腐りきった連中を徹底的に排除すべきでしょう。

北海道警裏金で初の立件へ 元課長が会計検査妨害容疑

http://www.sankei.co.jp/news/050528/sha100.htm

過去の目を向け、とるべき責任をとるという動きは支持できますが、組織内の誰かを犠牲にして、他のより責任がある者や組織自体が逃げ切ろう、という動きの一環として行われていることであれば、支持できないですね。支持できませんし、そんなことをしても逃げ切れないでしょう。

談合体質

橋梁談合が立件されて、大きく報道されているが、私も、これまでに、仕事の中で、談合を取り扱ったことがあるので、事情はある程度わかっているつもりでいる。
特に強く感じるのは、いつまでたっても談合がなくならないのは、やはり「談合体質」が日本人の中に根ざしているのではないか、ということである。
日本人は、元々は農耕民族であり、農耕のためには、相互の協調、話し合いが不可欠である。例えば、稲作の上で不可欠なのは、「水」であり、限られた水を、皆が効果的に利用するためには、一種の「談合」が必須となる。そこに加わろうとしない者は、徹底的に排除され、つぶされる。同質性が非常に高く、同質性の中で「競争」の要素がほとんどなく(競争は、外部との間で行われるということになるのだろう)、「共存共栄」(最近の報道の中でもよく見る言葉であるが)がキーワードになると、談合が常態になって行くというのは必然的である。
しかし、日本の社会自体が、内向きに閉じた状態ではいられず、業界が一体となって、という状況でもなく、そもそも公正な競争が国民全体の利益になる(逆に不公正な競争は国民全体の利益を害する)という考え方が浸透すれば、上記のような談合体質は、厳しい批判にさらされて当然、ということになるし、そういった談合体質を引きずる限り、刑事事件として立件されたり、小菅の巨大な別荘で別荘暮らし、といったリスクを負いながら仕事をするということになってしまう。
人間の物の考え方や体質、といったものは、一朝一夕で変えられるものではないので、談合体質を変えるのも難しいことではあるが、この辺でそろそろ抜本的に変える努力をしないと、同じ愚行を繰り返しているだけになってしまうと思う。

署員採用試験で得点改ざん、消防長と消防署長を逮捕

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050529-00000204-yom-soci

職員採用試験の第1次(筆記、適性検査)で、複数の受験生の得点を改ざんし、実際の試験結果と異なる合格者名簿を作成した疑い。

自分の趣味とか思いつきで、このようなことをするはずがなく、受験生かその家族(おそらく家族)に依頼されてのことと推測されますし、そういった依頼をするのに、何もお礼をしないということも考えられないでしょう。
収賄事件の、いわゆる「入口事件」として立件、着手したものと、しがない弁護士は推測しました。

那覇地検、冒頭陳述に映写機活用

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050526-00000010-ryu-oki

岡口裁判官のブログ経由で知りました。

この日の法廷では、検察官が冒頭陳述に合わせてパソコンを操作し、犯行当日の足取りをたどった地図や絞殺の方法を示したイラスト、犯行の動機につながる男性被告の借金の推移を示すグラフ、調書の写真などがスクリーンに次々と映し出された。スクリーンは、傍聴席から見て法廷内の左側に位置する検事席側に設置された。

こういった動きに反対するわけではない(むしろ賛成)のですが、例えば、「調書の写真」(おそらく調書添付の写真のことだと思いますが)を、その調書が証拠になっていない冒頭陳述の段階でそのまま示して良いのか?と思いますね。
その他の具体的に紹介されている上記のものの中にも、証拠そのものを引用しているものがある可能性が高いでしょう。

第296条
証拠調のはじめに、検察官は、証拠により証明すべき事実を明らかにしなければならない。但し、証拠とすることができず、又は証拠としてその取調を請求する意思のない資料に基いて、裁判所に事件について偏見又は予断を生ぜしめる虞のある事項を述べることはできない。

これが、検察官の冒頭陳述に関する刑事訴訟法の規定ですが、明らかにすべきなのは「証拠により証明すべき事実」であって、「証拠そのもの」は、その後の証拠調べで、証拠として採用されてはじめて裁判所の目に触れるべきもの、というのが刑事訴訟法の建前です。
わかりやすさの追及は、反面で、刑事訴訟法の基本構造に反することになる場合もあり得るので、従来の法令の改正も含め、検討すべきだと思いますし、新しい試みも、法令の範囲内で行うべきであるということを忘れてはならないと思います。
あまりにも「生々しすぎる」冒頭陳述では、それ自体が、裁判所(裁判員も含む)に対し、実質的な意味での偏見や予断を生じさせ、証拠を調べる前から、「有罪」という心証を生じさせる危険性を忘れるべきではないでしょう。検察庁が、単に「国民にわかりやすい裁判」だけを目指して、必死になっているわけがなく、「裁判員制度の下でも確実に有罪判決を獲得できる方法」を、組織をあげて模索し、上記のような報道で紹介されている出来事も、そのような「野望」達成の一環として行われていることも指摘されるべきです。

三菱グループ 法令順守軽視の風潮、印象づけ

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050528-00000003-maip-bus_all

辞任する当事者である高木・地所社長、西川マテリアル会長は姿を見せず、両氏からマンション購入者に対する直接の陳謝を聞くことはできなかった。両社とも「被疑者の立場のため出席しなかった」(井手マテリアル社長)などと弁明に追われた。
また、辞任する2トップはそれぞれ取締役相談役として残る。
(中略)
今後も経営に関して“指南”を受ける姿勢を示し、国民の感覚からのズレをみせつけた。

「被疑者の立場のため」と称して記者会見に姿を見せず、その一方で、今後も経営について指南を受けます、では、被疑者として表にも出られない者が「黒幕」として裏で操る企業、という、悪い印象を与えると思いますが。
いつまでも「三菱」とつけば何でも通る時代ではないことに、早く気付くべきでしょうね。