横浜弁護士会、覚せい剤所持の弁護士に懲戒請求

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060612-00000415-yom-soci

弁護士は弁護士会の聴取に対し、所持を認めたうえで、「法律相談を受けたいと呼び出され、待ち合わせ中に外国人に茶封筒を渡された。入っているのが覚せい剤とは思わなかった」と釈明している。

これが真実なら無罪、ですが、起訴されたということは、捜査機関には信用してもらえなかった、ということになります。
証拠を見ていない立場で、断定的にものは言えませんが、法律相談で呼び出され待ち合わせ中に、外国人から茶封筒を渡され、その中に覚せい剤が入っていた、という弁解は、捜査機関だけでなく、裁判所にもなかなか採用してもらえないでしょう。いわゆる「不自然、不合理な弁解」と判断される可能性が高い、ということは言えると思います。

追記:

こういった場合に、以前から覚せい剤を使用していれば、尿中から覚せい剤成分が検出され、覚せい剤使用でも起訴される場合があります。ただ、摂取した覚せい剤が体内にある期間は、最大で2週間程度とされていて(通常は1週間程度ですべて体外に排出される、と言われているはずです)、尿中から覚せい剤成分が検出されなかったから、覚せい剤は使用していない、とか、所持していた覚せい剤について使用目的や薬物性の認識がない、とは、なかなか見てもらえないでしょう。
そもそも、現在の刑事実務では、「覚せい剤のような、日常生活の中で簡単に持ったりやり取りしたりすることがない(と裁判所や検察庁が考えている)薬物に関わる以上、それと認識して関与したことが強く推定される」という考え方で判断される傾向が強く、「知らずに持っていた」「知らないうちに体内に入った」といった弁解は、よほど具体的、説得的でないと、通りにくいと言えると思います。
実質的に、証明責任が被告人側に転換されてしまっている、という見方も可能かもしれません。

「共謀罪 見通し暗く」(6月13日朝日新聞朝刊)

今日の朝日新聞朝刊の「オピニオン」で取り上げられていました(12版では13面)。問題点や、英国の中世に端を発する「共謀」概念の歴史などが、うまくまとめられていて、参考になる記事だと思いました。特に、西原春夫元早稲田大学総長の「共謀の概念が広がりすぎている」という意見は、この問題が共謀罪に限られないことを示していて、非常に示唆的です。
記事の中で、

捜査は供述に頼ることになる。幅広く身柄をとって、弱い人をたたく捜査になる。1人がうそを言うと、それを元に全体のストーリーができ、冤罪が起きる危険がある

と、日本刑法学会の非公式会合で「警告」した元検察官の弁護士、というのが、私のことを指しているそうです。

「無理な」マンション計画、最高裁が説明義務違反指摘

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20060612i114.htm

判決によると、男性は1990年、京都市内の所有地について、積水ハウスと同行から「南側部分にマンションを建て、北側の土地を約3億円で売却して返済に充てる」との計画を提案され、同行から約4億6000万円を借り入れ、マンションを建設した。
ところが、完成後、北側の土地を売却するとマンションの容積率建築基準法に違反することが分かった。このため、男性は土地を売却できずに返済不能に陥り、土地とマンションを差し押さえられた。

1990年というと、バブル最盛期、ですが、当時は、このように、不動産業者と銀行が結託して、知識に乏しい一般人に言葉巧みに近寄って、融資とセットでいろいろな計画をもちかけ金儲けに奔走していたことが思い出されます。
それにしても、この記事で紹介されている事案は、ひどい話で、最高裁がこういった判断をするというのは、よほど業者・銀行側の行為に問題があると認定されたものと推測されます。
最近、一部で、一種の「ミニバブル」現象が起きている面がありますが、この種の業者や銀行が考えていることは、今も昔も変わらないので、一般の人々は十分注意が必要でしょう。
そういえば、この記事の中で「説明義務違反に問われる可能性」が認定されている銀行は、

http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20060320#1142817912

で述べたように、六本木ヒルズ内で、貧乏人はそっちのけで富裕層をターゲットとして狙い、網を張って待ちかまえていますね。説明義務違反に注意しましょう。