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弁護士 落合洋司 (東京弁護士会) の 日々是好日 このページをアンテナに追加 RSSフィード Twitter

2006-12-17

[][]Winny京都地裁判決要旨を読んで(前) 01:46 Winny京都地裁判決要旨を読んで(前)を含むブックマーク Winny京都地裁判決要旨を読んで(前)のブックマークコメント

判決要旨を一通り読んでみました。

最も問題になるのは、「補足説明」の中の「6 被告人に対する著作権法違反幇助の成否」でしょう。

判決要旨では、被告人の行為が、「客観的側面としては」、正犯の行為を有形的にも精神的にも容易にしたことが明らかであるとした上で、

もっとも、WinnyP2Pファイル共有ソフトであり、被告人自身が述べるところや村井供述等からも明らかなように、それ自体はセンターサーバを必要としないP2P技術の一つとしてさまざまな分野に応用可能で有意義なものであって、被告人がいかなる目的の下に開発したかにかかわらず、技術それ自体は価値中立的であること、さらに、価値中立的な技術を提供すること一般が犯罪行為となりかねないような、無限定幇助犯の成立範囲の拡大も妥当でないことは弁護人らの主張するとおりである。

と述べて、弁護人の主張にも、一応、理解ありげな姿勢を示し、その後に続けて、

結局、そのような技術を実際に外部へ提供する場合、外部への提供行為自体が幇助行為として違法性を有するかどうかは、その技術の社会における現実の利用状況やそれに対する認識、さらに提供する際の主観的態様如何によると解するべきである。

という基準を示した上で、被告人目的主観的態様の検討に入っています。

ここでわかるのは、裁判所が、本件のような行為の有罪、無罪を、構成要件該当性の問題ではなく、違法性の問題として捉え、違法性を判断するにあたっては、「その技術の社会における現実の利用状況」を前提に、それに対する行為者の主観的態様により決まる、と考えている、ということでしょう。

私は、以前、

http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20040906#1094473097

という見方を示したことがありますが、裁判所は、この問題を、行為の社会的相当性の問題と見ている、と言ってもよいのではないか、と私は判決要旨を読んで感じました。ただ、どういった現実の利用状況があり、どういった主観的態様であれば有罪なのか、ということは、一般化できる基準としては何も提示されていません。

被告人目的主観的態様については、供述調書に、任意性(奥村弁護士への送信メールも根拠に引かれています)及び一定限度の信用性を認めた上で(被告人の「著作物の違法コピーインターネット上に蔓延させようとする積極的な意図」は否定されており、その限度で信用性を否定)、

被告人は、Winnyが一般の人に広がることを重視し、ファイル共有ソフトが、インターネット上において、著作権を侵害する態様で広く利用されている現状をインターネット雑誌等を介して十分認識しながらこれを認容し、そうした利用が広がることで既存のビジネスモデルとは異なるビジネスモデルが生まれることを期待しつつ、ファイル共有ソフトであるWinnyを開発、公開しており、これを公然と行えることでもないとの意識も有していたと認められる

結論づけ、被告人の有罪を導いています。

「十分認識しながらこれを認容」と認定していますが、これだけでは、通常の故意と変わりません。「既存のビジネスモデルとは異なるビジネスモデルが生まれることを期待しつつ」というところに、そういった通常の故意レベルを超えた、一種の「意欲」のようなものを認定しているようにも読めますが、上記の通り、「著作物の違法コピーインターネット上に蔓延させようとする積極的な意図」は明確に否定していますから、どういうレベルでの主観的態様があるから有罪である、という、一般化できる基準のようなものをそこに見出すことは極めて困難と言うしかありません。「公然と行えることでもないとの意識」とある点は、違法性の意識を問題としているようにも見えますが、違法性の意識を現実に有していること自体は犯罪の成否とは無関係である、とするのが一貫した判例の立場であり、公然と行えることでもないとの意識というものが、この種行為を有罪とする上で重要、とも考えにくく、この部分の趣旨は何ともよくわかりません。

判決論理を、判決の立場に立ちつつ敢えてわかりやすく補充するとすれば、上記のような主観的態様は、価値中立的でさまざまな分野に応用可能、有意義なソフトの開発、公開であっても、著作権を侵害する態様で広く利用されている現状も踏まえれば、社会的相当性を逸脱しており、違法である、ということになるでしょう。

敢えて、ここから基準的なものを強引に導こうとすれば、開発、提供する対象が価値中立的なものであることを前提に、「その技術の社会における現実の利用状況」と行為者の「主観的態様」の相関関係により違法性が決まる、ということになりそうです。

しかし、これでは、前者の具体的状況(換言すれば違法な利用状況の程度)と、後者の有無、程度(違法な利用状況をどの程度認識、認容しているか)により、無限の組み合わせが考えられ、どこで有罪、無罪が分かれるのか、その分水嶺を明確化することは極めて困難(ほとんど不可能)だと思います。

例えば、ソフトウェアの悪用の度合いが20パーセントから30パーセントといった現状があり(ウイニーよりはかなり低い)、開発、提供者が困ったものだと思いつつ特段の措置を講じず(そういった現状を認識、認容し)提供を続けた場合はどうか、悪用の度合いが50パーセントに達した現状で、悪用防止措置を講じつつ提供を続けたがその措置が極めて不十分であった場合(提供者もそれを認識、認容)はどうか、といった、いろいろな状況を想定すると、何が有罪で何が無罪なのか、考えれば考えるほどわからなくなってきます。

そもそも、京都地裁判決のように現実の利用状況に対する認識、認容や主観的態様を特に問題とする方法論を採れば、そういったことに無頓着で気に留めることもなく(見たり聞いたりしないようにして)開発、提供を続ければ無罪なのか、ということにもなりかねず、刑事政策的にも問題なしとしないでしょう(一種の「主観主義刑法学」に通じるものも感じられ、罰すべきは行為ではなく行為に徴表した行為者の危険性である、という考え方も垣間見えるような気もします)。

そこにこそ、私が、既に

http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20061213#1165973549

http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20061216#1166236421

と指摘しているような、この判決の本質的かつ致命的な問題点があると思います。

ただ、判決要旨の論理を手掛かりに、どのような点に留意すれば、この種行為について違法視されることを回避できるか(回避しきれるかどうかはともかく)、について、やや手掛かりのようなものも見えてきたような気もします(おぼろげなものにしか過ぎませんが)。それについては、次回に述べたいと思います。

(続く)

[]死刑執行「残虐」か?米で論争 一時停止相次ぐ 00:45 死刑執行「残虐」か?米で論争 一時停止相次ぐを含むブックマーク 死刑執行「残虐」か?米で論争 一時停止相次ぐのブックマークコメント

http://www.sankei.co.jp/kokusai/usa/061216/usa061216006.htm

この問題の重要性を否定するものではありませんが、

「米の死刑囚ら188人、DNA鑑定で続々、無実を証明」

http://www.asahi.com/international/update/1213/015.html

の問題のほうが、より深刻度が高いと思います。

「もし取り調べの様子をビデオに収めていれば、違法な捜査が行われたことがわかったはずだ」という元終身刑受刑者の訴えは、我が国が抱える問題にも通じるものがあるでしょう。

[][]中川幹事長、官舎に愛人と同居してた税調会長を擁護 00:20 中川幹事長、官舎に愛人と同居してた税調会長を擁護 を含むブックマーク 中川幹事長、官舎に愛人と同居してた税調会長を擁護 のブックマークコメント

http://www.zakzak.co.jp/top/2006_12/t2006121525.html

「ご本人の説明では規則違反はないということだ。わたし自身は違反にはならないのではないか(と思う)」と擁護した。

中川氏に関する過去週刊誌報道報道の真偽は措くとして)を思い起こすと、擁護するのもわかるような気がします。

離婚協議中に、格安官舎で愛人と同居しているような男は(女でも)、いくら仕事ができて有能でも、私は買いませんね。愛人と同居よりも、むしろ、「格安官舎」というところに、心根の卑しさを感じます。

私が首相だったら、税調会長のような要職には任命しませんし、そういうことをしでかしていることがわかったら、一時的に支持率が下がるようなことがあっても、即座に解任して放逐するでしょう。

同期法曹同期法曹 2006/12/17 00:46 愛人に厳しいのは、落合先生が愛人が許されない検察官出身だからと思います。愛人が許されないとしたら、日本経済を動かす一流経営者のうち生き残れるのは(以下自首検閲。

yjochiyjochi 2006/12/17 00:48 愛人問題でつまずいた検事もいましたね。名前は・・・やめておきましょう。

同期法曹同期法曹 2006/12/17 00:59 私が法曹を目指すきっかけとなった故・佐賀潜(松下幸徳弁護士)氏の『民法入門』のサブタイトルが「金と女で失敗しないために」(今ならセクハラですが昭和40年代なので許されたし)でした。金銭に諦淡で女性にもてない人(愛人どころか浮気もなし)がどこの業界でも尊敬を受けるかもしれません(希望的観測目一杯w)。

okumuraosakaokumuraosaka 2006/12/17 02:16  よその判決にも登場してしまいましたか。
 あの時点では(〜逮捕されるまで)開発者が逮捕されるとは思いませんでした。

浮気は活力浮気は活力 2006/12/17 02:33 愛人問題でつまずいた検事を、「浮気は活力だ」と擁護して物議をかもした検事もいましたね。

?????? 2006/12/17 03:11 セクハラは人権問題
愛人は個人的問題
愛人を容認できない人は役所や神様が認めた関係
しかみとめるべきでないという価値観が根底に
あると思うんですが・・・・。

愛人は個人的問題愛人は個人的問題 2006/12/17 09:54 ですがマスコミの格好のバッシングのネタになります。国会議員や有名な検事だけではなく、女子アナや女性キャスターまで。要するに、愛人ごときで職や人生を失う脇の甘さ、という警告なんでしょう。容認するか否か以前の問題として。
証拠が無ければ愛人はない・愛人がなければバッシングもない(汗

rnarna 2006/12/17 11:26 愛人との同居それ自体は価値中立的であること、さらに、価値中立的な愛人関係を持つこと一般が犯罪行為となりかねないような、無限定な幇助犯の成立範囲の拡大も妥当でないことは???氏の主張するとおりであるものの、家賃の格安な官舎に愛人を囲うというのはあまりにセコ過ぎないか、愛人を囲うような男にしては甲斐性なさすぎではないか(マンションくらい買ってやれよ)、愛人っていうけどなんだか安っぽい愛でないか、ということなのではないでしょうか。

税調会長税調会長 2006/12/17 12:08 この人、愛人と官舎で同居しながら、すぐ近くにある官舎については売ればいいなんて言ってたわけで。公の問題を語る資質に欠けるんじゃないですか。
http://www.city.noboribetsu.hokkaido.jp/gikai/report/faction/siminnet/siminnet%20H180411report.htm

↑ 2006/12/17 12:10 失礼、これ原典だけどわかりにくい。引用元はここです。
http://bewaad.com/20061212.html#p03

判決文の内容は判決文の内容は 2006/12/17 16:06 例えば、どれほど有用な技術であってもそれを何らかの理由で葬り去りたい場合、違法な(あるいは反社会的な)運用法をある一定以上流行らせれば作成者を有罪にできることになる、と判断しているのでしょうか。
「流行らせた」ことにネットランナーなど一部の出版雑誌が大きく絡んでいながら、全くその責任を言及されていないことと併せると、法律に詳しくない一市民としては、どうにも腑に落ちない、といった感じがします。

kenji47kenji47 2006/12/17 16:44 >Winny京都地裁判決要旨を読んで(前)

大変参考になりました。

懐疑論者懐疑論者 2006/12/17 20:52 私は法律の専門家ではありませんが、率直な疑問があります。それは、何故法律家は「幇助」や「教唆」などという、曖昧な概念を法律に導入したのしょう? 実行犯による犯罪がなければ「幇助」や「教唆」がありえないとすれば、「幇助」や「教唆」をした者が犯罪者であるためには、彼らもまた実行犯と共同して具体的に犯罪を行ったことを必須の条件とすべきでしょう。そうでなければ、論理的に矛盾すると思うのですが。「犯罪」の枠を曖昧に拡張する効果しかないと思えてなりません。

共犯理論共犯理論 2006/12/17 21:28 >実行犯と共同して具体的に犯罪を行ったことを必須の条件とすべきでしょう。
 お気持ちはわかりますが,それでは組織犯罪だと末端の鉄砲玉しか処罰できなくなります。ヤクザの親分が「お前あいつを殺して来い」と言ってチンピラにピストルを渡して,チンピラが人を殺しても,ヤクザの親分は常に不可罰です。

懐疑論者懐疑論者 2006/12/17 22:36 ご教示ありがとうございます。>共犯理論さま。
 確かに、親分が教唆または幇助したと考えれば親分も罰することが可能ですね。ただ、その場合には、親分が教唆・幇助したとするよりも、親分が実行犯と共謀して犯罪を行ったとする方が自然ではないのでしょうか。それなら、教唆や幇助という概念が要らなくなるなりそうですが。犯罪の主体性という点で、親分も実行犯と同じとみなせそうな気がするのは、素人考えでしょうか。

共犯理論共犯理論 2006/12/17 23:25 >親分も実行犯と同じとみなせそうな気がするのは、素人考えでしょうか。(懐疑論者さま)
そのとおりです。それが共謀共同正犯という共犯です。これは現行刑法に明文の規定がありませんが,明文規定の「共同正犯」には,実行共同正犯のほかに共謀共同正犯を含む,という判例解釈で認められています。一般常識にそった解釈です。
犯罪を自ら実行しなくても,広義の共犯となるのは,共謀共同正犯・教唆犯・幇助犯の3つです。

懐疑論者懐疑論者 2006/12/17 23:34 >共犯理論さま
「犯罪を自ら実行しなくても,広義の共犯となるのは,共謀共同正犯・教唆犯・幇助犯の3つです。」
 そこで、初めの考えに戻りたいのですが、広義の共犯を共謀共同正犯に限定した方が論理的に矛盾なく、曖昧性を排除できるのではないでしょうか? なぜ、共謀共同正犯以外に、教唆犯・幇助犯を犯罪者として罰する必要があるのですか? その点に、Winnyの件に感じられる、曖昧さとそこから生じる拡大解釈に対する危惧の原因があるのでは、と感じたのですが。

共犯理論共犯理論 2006/12/17 23:58 実務では,教唆犯や幇助犯で起訴有罪になる例はほとんど見ません。実行正犯と並列し得る正犯性価値がないので,かわいそうだから教唆犯・幇助犯で処理する場合がほとんどです。
金子氏は本当は共謀共同正犯で起訴有罪としてもよかったと思います。βテストで参加者をつのって使用させ,自分は中央センターのようにソフト開発してアレだけの社会的混乱を招いたのですから。

okumuraosakaokumuraosaka 2006/12/18 00:32 最近では、画像掲示板の管理者Aと投稿者Bの関係で、通りすがりのBが投稿した画像について、AB共謀共同正犯とする判決もあります。名誉毀損や児童ポルノ陳列。
 検事さんいわく、「インターネット時代の新しい共謀概念」だそうですよ。

?????? 2006/12/18 19:00 インターネット時代の新しい共謀概念」だそうですよ。』
そういう検事さんにはアクセス規制をかけずに
不眠不休でお絵かき画像掲示板の管理人でもやってもらいましょう。
で、うっかり一眠りしている間に立派な共犯者
「机上で理論をこねくり回してる間は自分はデンパだときづかなかった」

okumuraosakaokumuraosaka 2006/12/18 21:25  共謀はむちゃだとしても、単独正犯か幇助かの責任は免れない。幇助なのか単独正犯なのかというのが実務上の課題です。

?????? 2006/12/19 13:33 奥村さんがブログで画像投稿可能なコメント欄
を開設したら嫌がらせで児童ポルノ画像を投稿
するアフォの一人や二人は必ず登場するから
幇助犯だとする理論はどう考えたってデンパじゃ
無いですか?
そんなデンパに税金払う余裕は日本にあるの?