DNA鑑定で無罪、全米で200人

http://www.asahi.com/business/update/0426/TKY200704260349.html

IPによると、無実が証明された200人が刑務所で過ごした時間は計2475年、1人平均約12年。無罪を勝ち取った人の62%は黒人だった。
88%が性的暴行、28%は殺人で有罪判決を受けていた。77%は誤った目撃証言が有罪判決の根拠だった。当初のDNA鑑定が誤っていた例も3件あった。

目撃証言の危険性は、繰り返し指摘されてきましたが、上記のような恐ろしい結果を知ると、改めてその危険性を痛感させられます。今後、一般の人々が裁判員になって目撃証言を評価する、という場面が全国各地で生じますが、自信満々に、絶対間違いはない、自信がある、などと語る目撃証言の中で、見事に間違っているものがあるということが珍しくない、ということは、頭の片隅に置いて覚えておいて損はないでしょう。
職業裁判官は、証拠のちょっとしたほころび、矛盾を、職業的な「なれ」もあって、有罪方向で合理化しがちですが、そういった「なれ」にとらわれない裁判員こそ、ほころび、矛盾を鋭く見抜き、上記のような悲惨な事態を食い止める防波堤になるべきだと思います。

鄭相明検察総長、死刑制度への苦悩にじませる

http://japanese.yna.co.kr/service/article_view.asp?News_id=2007042500370088&FirstCd=03

鄭総長は1977年に司法研究院を卒業し、光州地方検察庁の検事として赴任していた時期を振り返り、自身の手で6人の死刑を執行してきたと述べ、人間の尊厳と価値に対し思い悩んできたと話した。
また、検事は法の名の下に生命を奪うことができるという非常に大きな権限を持つので、バランス感覚を備え、公明正大であるべきだと述べた。法の執行に最も重要なのはバランスだと強調し、バランスを失えば法は殺人道具になり得るとしている。被疑者の権利があれば被害者の権利もあると述べ、検事は被疑者にも被害者にも肩入れすべきではないと主張した。

韓国の検事総長は、なかなか良いことを言っていると思いますが、これは、韓国の検察官だけでなく、日本を含む他の国の検察官にもあてはまることでしょう。
最近、強く思うのは、日本の検察官は、誰の目にも明らかな冤罪事件を生み出したり(例えば富山のケース)、デタラメな捜査で多数の人々を苦しめたりした場合には(例えば鹿児島の選挙違反事件)、単に表面的に謝って、あとはうやむやにしてしまうのではなく、その職を辞すなど、とるべき責任をきちんととる、ということをすべきでしょう。

ファン1000人にキムタク興奮!「HERO」ロケで釜山初上陸

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070427-00000008-sanspo-ent

主人公の久利生(くりゅう)公平検事に扮する木村と、事件を捜査する韓国検察局のカン・ミンウ検事役で出演するビョンホンという注目の日韓スター“競演”。

木村は釜山では30日まで撮影予定。夢の共演は今秋、スクリーンの話題を独占しそうだ。

韓国での、韓国の検事との出会い、韓国における活動の成果、等々が、この映画の中では重要な意味を持っています。また、そこが、ストーリーに深み、厚みを持たせることにもなっていると思います。
日本であれ、韓国であれ、検事が職務を誠実に遂行し、真実を追及するということに差異はなく、同じ目的の下に動く者の心と心の通じ合い、といったことも、私は、台本を読んで感じました。

<ネット掲示板>中傷書き込み放置の管理人を書類送検 大阪

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070427-00000053-mai-soci

府警によると、中傷が書き込まれたのは「学校裏サイト」などと呼ばれる掲示板。昨年8月20日ごろ、大阪市内の私立中学校に関する話題を在校生らが自由に書き込む欄に、当時1年生の女子生徒について「うざい」「ブス」などと中傷する内容が書き込まれた。同10月中旬、友人から知らされて女子生徒が気付き、母親が掲示板のプロバイダーにメールで削除を要請したが、プロバイダーは「掲示板の管理人に言ってほしい」と回答。改めて管理人にメールなどで要求したが、応じてもらえず府警に相談した。府警のサイバー捜査担当者が、書き込んだ女子生徒と管理人の男を割り出した。

この問題については、以前、

インターネット上の誹謗中傷と責任

インターネット上の誹謗中傷と責任

で、私なりの考え方を述べたことがあり、また、東京大学山口厚先生や奥村弁護士と座談会を行い、それについても上記の本に掲載されています。興味のある方は読んでみてください。
なぜ、私が検察庁を辞めた後、ヤフー株式会社法務部に入り、先月末で退職するまで6年7か月にわたり在籍していたか、と言えば、こういった問題に対して適切に対処するため、ということが最も大きかったと言っても過言ではないでしょう。
詳細は言えませんが、過去にも、複数回、この種の問題について、ヤフー株式会社関係者の刑事責任が追及されようとしたことはあり(適切に対応しいずれも不発に終わっていますが)、今後も、そういった動きがなくなることはないと思います。
上記のような経緯を見ていて、よくわからないのは、「管理人」が送検され、「プロバイダ」は送検されていないようである、ということです。物理的な意味での問題情報の管理、という意味では、両者に差異はないと思われますが、敢えてプロバイダまでは送検していないということについて、警察が何らかの理屈を考えたのであれば、それが何かについて興味を感じます。
過去に、オークションサイトの運営者(ヤフーオークションのような巨大なものではなく、もっと小さなサイト)の運営者が、出品された物について、刑事責任を追及され、逮捕、勾留された、という事件がありましたが、それは不起訴に終わったと聞いています(嫌疑不十分なのか、起訴猶予なのかまではわかりません)。
既に何年も前から、プロバイダや同種の立場にある人、組織は、上記のような「幇助責任」を問われかねない脅威の下に置かれていて、だからこそ、私自身は、刑事責任発生の範囲を合理的な範囲内で明確に限定する必要性を感じて、例えば名誉毀損であれば、犯罪の成立が客観的に明らかであり、かつ、故意についても未必の故意ではなく確定的故意を要すると解してはどうか、などと言ってきています。
ウイニーの事件の関係でも繰り返し指摘してきましたが、刑事責任の追及、ということについては、その性質上、謙抑的である必要がある上、人の自由を保障、確保するためには、どこまでが適法でどこからが違法なのか、ということを予め明示しておく必要があります。特に、極めて多数の人々が利用するインターネットにおいては、その必要性は高いでしょう。インターネット掲示板の運営、といったことは、ごく普通の人が、日常生活の中で簡単に行う可能性があることで、ブログのコメント欄も一種の掲示板であって、かく言う私も、いつ名誉毀損等の幇助責任を問われかねない、極めて不安定かつ危うい立場に立っている、ということになります(ただ、私の場合はそれなりの専門知識はあるので、そういった事態にならないように回避する術も心得てはいますが)。
上記の記事にある事件について、どのような刑事処分になるかはよくわかりませんが、現状では、この問題について明確な指針といったものはなく、当面、関係者は、不安定な立場に置かれ刑事責任追及のリスクを常に感じつつ過ごすしかない、ということになりそうです。それが、インターネットにおける健全化よりも、むしろ、得体の知れない恐怖感や萎縮へとつながる危険性を、我々は深刻に受け止める必要があるのではないかと思います。