2009-07-17
■[取材]雑誌「プレジデント」の記事

現在、発売中のプレジデント8月3日号45ページに、「違法サイト閲覧」というテーマで、私が取材に対し語った内容がまとめられています。インターネット上におけるコンテンツへの接し方について、参考になるところもあるのではないかと思います。
この号では、「法律の新知識Q&A60」という特集が組まれ、
http://www.president.co.jp/pre/backnumber/2009/20090803/
いろいろな弁護士が、各テーマについて語っていますが、読んでみるとなかなか役立つ内容になっていて、買って読んでみたり、手元に置いておくと得ではないかと感じました。私は、自分の事務所の事務員研修用に、当面、保存しておくことにしました。
■[裁判制度]裁判員裁判 被告の着席どこに? 手錠外すタイミングは?

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090717-00000003-khk-l04
協議に先行する形で、裁判員裁判対象の殺人罪で仙台地裁に起訴された被告の法廷に関して、担当の裁判官と検察官、弁護人が同日、着席位置や解錠場所などを打ち合わせた。着席位置については弁護人の隣席を認める方向で調整することが決まった。日弁連は「裁判員に被告が犯人との予断や悪印象を与えかねない」として、最高裁や法務省に改善を求めている。
仙台弁護士会も被告、弁護側と検察側が立証し合う当事者主義や推定無罪の原則から(1)弁護人の隣に被告を着席させる(2)入廷前など裁判員が見えない場所で腰縄や手錠を外す―などの運用を地裁に求める方針だ。
4月から6月まで放送されていたTBSドラマ「スマイル」で、裁判員裁判が描かれていた関係で、被告人をどこに着席させるべきかが問題になりましたが、上記の記事にあるような流れを先取りして、松本潤さんには、弁護人席の隣に着席してもらうことにしました。その際、刑務官2名をどこに座らせるかということになり、1人を被告人の背後、もう1人を左横(被告人のほうを向いて)に、L字型に座ってもらいました。弁護人の隣に被告人を着席させた場合、刑務官の着席位置ということも、今後、問題になるはずです。
■[話題]国家公務員65歳定年 中・高年の給与引き下げ

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2009071702000131.html?ref=rank
報告によると、幹部職員については、職場の活力維持のため六十歳をめどとした役職定年制を導入。
役職定年後は(1)専門職として省庁で働き続ける(2)公務員の身分を残したまま公益法人や大学に出向する(3)加算された退職手当を受け取って早期退職する−のいずれかを選ぶ。
総人件費増大を抑制するため、六十歳までの中高年層の給与は段階的に引き下げ、六十歳以降で一気に引き下げ幅を拡大する。また、定年延長に伴い、幹部以外の一般職員は昇進スピードが五年遅れることになる。
専門性がある人は多くないはずなので1は困難、2も天下りの弊害を拡大することになり不当、3は「加算金」の負担増が問題で、どれを取ってもかなり問題がありそうです。
一般職員の給与が下がったり昇進が遅れたりすれば、士気が下がり不満もたまるはずで、組織の活力が全体として下がる可能性が高いでしょう。
■[事故]遭難:死者10人に、別の登山者の遺体も見つかる 北海道

http://mainichi.jp/select/today/news/20090717k0000e040005000c.html
帯広測候所によると、トムラウシ山頂では15日大雨に見舞われたが、16日はずっと雲がかかり少雨が降っていた可能性が高い。日中の気温は8〜10度とされ、風が強く風速20〜25メートルだったとみられる。風速が1メートル上がると、体感温度は1度下がるとされ、日中でも体感温度は氷点下10度ぐらいだった可能性もある。
業務上過失致死傷罪の成否も、今後、問題になりそうですが、上記のような悪天候を予想しいかなる回避措置が準備されていたか、登山中に適切な措置が講じられる余地があったかということが問われるでしょう。
中高年層の登山愛好者が多くなっていることは、よく報じられていますが、裾野が広がれば、問題のある登山者、登山ツアー等も増えることは避けられず、安全対策ということが、今後、ますます強く求められることになると思われ、また、そうならなければならないと思います。
■[P2P][刑事事件]Winny開発者・金子勇氏の控訴審が結審、判決は10月8日

http://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/20090716_302758.html
公判で検察側は、Winnyの機能と特質自体が著作物を流通させることに特化したもので、それ以外の利用は考えられないと主張。また、金子氏の2ちゃんねるへの書き込みなどからも、現行の著作権ビジネスモデルへの挑戦を目的としたもので、コンピュータソフトウェア著作権協会(ACCS)などが行ったファイル共有ソフトの利用実態調査からも、違法な著作物流通による被害は甚大であり、金子氏の責任は重大であると指摘。罰金刑とした一審判決は軽すぎると訴えた。
一方、被告側は、被告人の金子氏はWinnyを開発しただけであり、一審判決でも認めているようにファイル共有ソフトやその技術は価値中立的なものだと主張。価値中立的な技術を開発したことが安易に幇助に問われてはならず、その基準は明確であるべきだが、一審判決では「その技術の利用状況やそれに対する認識、提供する際の主観的様態」によるとだけされており、基準とは呼べない曖昧なものだと指摘した。
また、著作権侵害について開発者やサービス提供者の責任が問われた海外の裁判では、米国のグロックスター事件、韓国のソリバタ事件、台湾のezPeer事件などではいずれも厳格な要件を求めており、一審判決は世界的な趨勢とかけ離れた曖昧なものだと主張。一審判決に対する「立法手続きを経ずに刑事的制裁を加えることは罪刑法定主義に反する」「民事責任より広範に刑事責任を認めるものであり、容認しがたい」「不特定多数という公衆に対する幇助を認めるのは誤りである」といった法学者の意見も紹介した。
私自身は、、この事件の本質的な問題点は、インターネットのように極めて多数の人々が利用するサービスにおいて、その中の一定数はサービスを悪用するという必然性の中、サービス提供に関わる立場の様々な人々につき、特に、刑事責任のような重い責任が、いかなる場合に問われるのか、その線引き、限界といったことがいかに明確になるのか、ということではないかと考えています。捜査機関は、自分がやりたい事件を、やりたいときにやりたいようにやれば良いと考えていても、そういった恣意性が恣意性のまま横行するようでは、インターネットのようなサービスにおいて、人の行動の自由は大きく制約されてしまうでしょう。
その一方で、インターネットでは何をやっても良い、どういうサービスが提供されどれだけ人が迷惑しようが何をやっても構わない、といったことになってしまえば、一種の無法地帯になってしまい、建設的な発展ということが望めなくなります。
大阪高裁が、そういった問題意識をどこまで持ち、基準、指針のようなものをどこまで打ち出せるか、来る判決に注目したいという気がします。
■[裁判制度]<裁判員裁判>組抗争公判の除外請求を検討 さいたま地検

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090717-00000010-mai-soci
捜査当局は前日に山口組系関係者が刺殺されたことへの組織的な報復とみており、地検は公判で裁判員が伊藤容疑者や証人に背後関係を追及する質問をした場合、事件関係者から危害が加えられる可能性があると懸念している。
裁判員法は3条で除外規定を設け、その条件を「裁判員候補者や裁判員が畏怖(いふ)し、出頭を確保することが困難な状況」などとしている。ある捜査関係者は「広く国民に参加してもらうための制度だから、除外のハードルは高い。実際に襲撃の予告などがなく、懸念があるだけでは裁判所に認められない可能性がある。だが、予告なしに襲われる心配もあり、除外対象とすべきでは」と話している。
裁判員法3条1項では、
地方裁判所は、前条第一項各号に掲げる事件について、被告人の言動、被告人がその構成員である団体の主張若しくは当該団体の他の構成員の言動又は現に裁判員候補者若しくは裁判員に対する加害若しくはその告知が行われたことその他の事情により、裁判員候補者、裁判員若しくは裁判員であった者若しくはその親族若しくはこれに準ずる者の生命、身体若しくは財産に危害が加えられるおそれ又はこれらの者の生活の平穏が著しく侵害されるおそれがあり、そのため裁判員候補者又は裁判員が畏怖し、裁判員候補者の出頭を確保することが困難な状況にあり又は裁判員の職務の遂行ができずこれに代わる裁判員の選任も困難であると認めるときは、検察官、被告人若しくは弁護人の請求により又は職権で、これを裁判官の合議体で取り扱う決定をしなければならない。
と定められ、単に危険だから、というだけでは駄目で、
1 被告人の言動、被告人がその構成員である団体の主張若しくは当該団体の他の構成員の言動又は現に裁判員候補者若しくは裁判員に対する加害若しくはその告知が行われたことその他の事情により
2 裁判員候補者、裁判員若しくは裁判員であった者若しくはその親族若しくはこれに準ずる者の生命、身体若しくは財産に危害が加えられるおそれ又はこれらの者の生活の平穏が著しく侵害されるおそれがあり
3 そのため裁判員候補者又は裁判員が畏怖し、裁判員候補者の出頭を確保することが困難な状況にあり又は裁判員の職務の遂行ができずこれに代わる裁判員の選任も困難であると認めるとき
という、かなり厳格な要件になっていますから(特に上記の1)、上記の記事に出ている程度の事情では、3条1項の決定は困難でしょう。暴力団の抗争事件だから、という程度の理由で決定が出るような、緩やかな要件ではありません。
私も、検察庁にいた当時は、暴力団関係者の取調べや、そういった人々が関係する公判立会を多数経験しましたが、彼らは、裁判所、裁判官といったものに対しては、それなりの敬意は持っていて、イタリアのマフィア等のように、気に入らないから殺害するとか、裁判所の建物や裁判官の自宅を爆破する、といった行動には、通常、出ないものです。ただ、裁判員のような素人が入ってきて、それらに影響力を及ぼすことで、判決結果が変わりうる、ということになれば、先日まで放送されていたフジテレビのドラマ「魔女裁判」のように、じわじわと脅かすとか金で買収する、といった行動に出る可能性はないとは言えません(暴力団関係の事件に限ったことではありませんが)。
しかし、そういった危険性は、元々、制度の中に内在するものであり、だから裁判員を除外する、と言っていては、裁判員制度自体が成り立たないでしょう。
■[刑事事件]早大OB 株価操縦疑い デイトレーダー集団、強制捜査

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090717-00000099-san-soci
監視委は一昨年夏ごろから、同グループの動向を長期にわたり監視。不正な取引は、昨年秋のリーマン・ショックで株価が下落した後も、複数の証券会社を介し連日行われていた。監視委は1営業日に行われた1銘柄の取引にしぼって調査を進めるもようだ。
デイトレーダーをめぐっては、平成16年11月に北海道釧路市の男性が建設会社などの株価をつり上げたとして、監視委に証券取引法違反罪で初告発されているが、組織的に違反行為を行っていた疑いが浮上するのは初めて。同様の手口を行うデイトレーダーグループは複数存在するとみられ、別グループへの監視も強化していくとみられる。
拠点が六本木ヒルズにある、というのが、いかにも、という感じですね。「ヒルズ族」の残党が、リーマン・ショック後の状況の中で、落ち武者狩りにあっているというところでしょうか。
SECの調査能力は、ここ数年でかなりの伸び充実してきていると見たほうがよいという印象を、私は受けていますが、今後は、従来、摘発が困難と見られてきたこの種の手口にも、広く調査の網がかかってくる可能性が高いでしょう。
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加害者の立場に立つと、自動的に被害者の権利は侵害せざるをえないという事案での考え方の一つの試金石になると思います。