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弁護士 落合洋司 (東京弁護士会) の 日々是好日 このページをアンテナに追加 RSSフィード Twitter

2009-10-08

[][]winny開発者無罪判決(大阪高裁) 11:22 winny開発者に無罪判決(大阪高裁)を含むブックマーク winny開発者に無罪判決(大阪高裁)のブックマークコメント

先ほど判決が終了しました。原判決破棄、完全無罪でした。大きな感銘を受けました。

改めて、判決を分析したいと考えていますが、無罪判決の理由を、メモに基づいてざっくりと書くと、

winny自体は価値中立的な、有用なソフトであるところ、このようなソフトの提供者に幇助犯が成立するかどうかについては、新しい問題であり、慎重な検討が必要である。当審(大阪高裁)における証拠調べの結果も踏まえると、winnyによる著作権侵害コンテンツ流通状況は調査、統計結果により差異があり明確ではないなどの事情が認められる。

被告人の行為は、価値中立的なソフトを提供した価値中立的な行為であり、提供されたソフトをいかなる目的でいかに利用するかは個々の利用者の問題であって被告人には予想できなかった。罪刑法定主義の観点からも、このような行為につき幇助犯が成立するためには、原審(京都地裁)が示したような、違法行為に利用されることを認識、認容していたという程度では足りず、提供された不特定多数違法な用途のみに、あるいは主要な用途として違法に利用することを勧めている場合にのみ、幇助犯が成立すると解するべきである。

被告人は、違法な利用があり得ることの蓋然性を認識、認容してはいたが、違法な利用をしないよう注意するなどしており、不特定多数違法な用途のみに、あるいは主要な用途として違法に利用することを勧めて提供していたものではなく、幇助犯は成立しない。

したがって、被告人無罪である。

というものでした(おって、さらに書きますが、一応の参考ということでご覧下さい)。

既に、

http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20050619#1119183010

等でもコメントしたような、中立的行為と幇助という問題があって、正に本件の本質部分であったわけですが、今回の大阪高裁判決は、その点に正面から答え、明確な基準を打ち出したもので、画期的判決と言えるように思います。

追記1:

現時点では、まだ、分析というより感想にとどまりますが、有用なツールを開発、提供し不特定多数が利用するという状況の下で利用者の中に悪用した者があった場合、開発、提供者が法的責任、特に刑事責任を負うのかという根源的な問題に対し、裁判所が、バランスのとれた一つの回答を示したということは言えるような気がします。

大阪高裁は、その後に私が入手した情報によれば、

価値中立のソフトインターネット上で提供することが、正犯の実行行為を容易ならしめたといえるためには、ソフトの提供者が不特定多数の者のうちに違法行為をする者が出る可能性・蓋然性があると認識し、認容しているだけでは足りず、それ以上に、ソフト違法行為の用途のみに又はこれを主要な用途として使用させるようにインターネット上で勧めて提供する場合に幇助犯が成立すると解すべきである。

として、刑事責任の成立範囲を明確にしつつ限定していました。「ソフト違法行為の用途のみに又はこれを主要な用途として使用させるようにインターネット上で勧めて提供する」行為が幇助になる、というのは常識的に考えて納得できるのものがあります。ただ、「主要な」というのが、やや不明確と言えば不明確ですが、違法ではない用途が現実的に存在して実際にもそのような利用が行われていれば、違法な用途が主、とは言えないはずですから、基準として使える範囲内にはおさまっていると言えるでしょう。

刑法理論上、判決の上記のような理由付けが、幇助犯の構成要件の問題として捉えているのか、違法性の問題として捉えているのかということも問題にはなるように思われます。判決趣旨としては、違法性以前の構成要件の問題として捉えているように読み取れ、その意味で、従来、かなり緩やかに捉えられがちで、それだけに、取締目的で濫用されがちであった幇助犯規定の解釈に、一般的に一定の限定を加えたものという評価も可能ではないかという印象を受けます。インターネット上のソフト提供といった行為だけでなく、広く一般的に、各種の中立的行為といったものに対し幇助犯の成立ということを考えるにあたり、この判決が、今後、重要意味を持ってくる可能性もあって、それだけに極めて注目すべき判決ではないかと思います。

そもそも、本ブログの最初のエントリーは、

Winny事件を契機に情報処理技術の発展と社会的利益について考えるワークショップ

http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20040630#p1

でした。有用であり悪用もされるツールの開発、提供行為が悪用されたからといって刑事罰を科せられべきなのか、そこに明確な基準があり刑事責任が限定的に捉えられなければ、特に不特定多数(極めて多数)が関わるインターネット世界において様々な不都合が生じツールやサービスの提供者を委縮させ、技術サービスに悪影響を及ぼし、ひいては利用者にも不便を強いることになるのではないかという、私自身の素朴な疑問、問題意識は、当時から現在に至るまで一貫して存在し続けてきました。

そのような疑問、問題意識に対し、今日の大阪高裁判決は、私自身としても納得できる基準を示しつつ答えていて、帰京する新幹線の中から、台風一過後の晴れ晴れとした風景を見ながら、私の心の中でも晴れ晴れとしたものが広がるような気がすることを禁じ得ませんでした。

追記2:

Winny事件被告金子勇氏 二審で逆転無罪

http://news.ameba.jp/domestic/2009/10/47226.html

裁判を傍聴した落合洋司弁護士は、自身のブログで「中立的行為と幇助という問題に正面から答え、明確な基準を打ち出したもので、画期的判決」と評価した。

アメーバニュースにちらっと登場していました。こういった視点でこの判決を見ている人は、私がネット上で接した限りでは見当たりませんでしたが、今後、こういった視点での議論も深まることを期待したいですね。

[]米アマゾン英語電子書籍端末、日本など100カ国発売 08:47 米アマゾン:英語版電子書籍端末、日本など100カ国発売を含むブックマーク 米アマゾン:英語版電子書籍端末、日本など100カ国発売のブックマークコメント

http://mainichi.jp/select/biz/news/20091008k0000m020044000c.html

日本語書籍には対応していないが「アマゾンサイトを通して英語書籍を購入している顧客は多い」(アマゾンジャパン)ため、一定の需要が見込めるとみている。

これは買いだ!と思ったのですが、日本語書籍には未対応ということで、対応しはじめるまで様子見ですね。

たとえば、法律書(特に実務書)では、参照したいときにどこでも参照できれば便利であり(いちいちPDFにするのも面倒)、こういった情報端末に配信できる形式で販売すれば、紙の本だけで売っているよりも売上が見込めるのではないかと思います。

日本で、一気に、全面的に電子書籍を普及させるのが難しいとしても、そういった特殊な分野からでも良いので、徐々に導入してほしいものです。

[]足利事件、検察「否認おかしい」 「自白」促す様子録音 00:43 足利事件、検察「否認おかしい」 「自白」促す様子録音を含むブックマーク 足利事件、検察「否認おかしい」 「自白」促す様子録音のブックマークコメント

http://www.asahi.com/national/update/1007/TKY200910060437.html

複数の事件関係者によると、この供述が録音されていたのは92年12月初旬の2日間。足利事件について犯行を「自白」していた菅家さんが初めて否認に転じた第6回公判(同年12月22日)の直前にあたる。不起訴が決まっていなかった別の2件の女児殺害事件を取り調べていた。

関係者によると、菅家さんは取り調べ中、担当検事に「やっていません」と、足利事件への関与を否認。起訴前の調べで「自白」した理由について「検察官も怖かったからだ」などと話したとされる。

ところが、翌日の調べでは検事から「昨日の否認はおかしい。(菅家さんが)犯人であることは証拠上も間違いない」などと追及され、再び「自白」に転じたという。

供述の変遷状況というものは、供述の信用性を判断する上で重要な要素になるものですが、取調べが全面的に、あるいはそれに近い形で可視化されれば、変遷の有無や内容といったことがよくわかりますから、より正確、緻密な分析、評価が可能になるというメリットがあると思います。

その点、従来の密室状態下での取調べでは、被疑者が否認している、あるいは自白、否認の間で供述を変遷させている間は供述調書を作成せず、引っ張るだけ引っ張り、様々な圧力をかけ、揺さぶり懐柔もして、被疑者も、このままでは供述調書を取ってもらえないと不安になる中、少なからぬ場合に、「もぎ取る」形で供述調書が作成されてきたものでした。供述調書作成場面だけの録画・録音では、そのようにして「もぎ取られた」結果の場面だけが記録に残るということになりかねず、それでは「もぎ取られる」までの経緯が抜け落ちてしまいますから、意味がないということになります。逆に言えば、捜査機関側が、供述調書作成までの経緯を記録に残したくない、隠したいとして躍起になるのは、従来の、供述経過を記録に残さず変遷状況をわからなくする、という、姑息とも言える発想からなかなか抜け出せないことの現れ、ということにもなるでしょう。

そういった観点で、上記の記事に出ている足利事件における供述経過を見ると、改めて興味深いものがあります。

くまちんくまちん 2009/10/08 12:56 わー,同期が法壇の上にも,下にも,傍聴席にも
片田舎より皆様のご活躍をお祈り申し上げます。

酔うぞ酔うぞ 2009/10/08 13:45 >電子書籍端末

電子書籍は場所を取らないという意味でも非常に期待していて、何年も前にテスト的に購入しましたが、いまや日本には全く無くなってしまいました。

もう一つは、携帯型の書斎とでもいった用途があるのですが、PDFで持っていれば英語版でも使えるのですが、低消費電力の元である e-ink がページの更新が遅い、というのですね。

つまり、小説などのように、一ページずつ読んでいくのには実用的であるが、辞書を調べるような事には向かないのだそうです。

安いからと、ネットブックを使っていますが、これは電池の実用上の限界が1時間ぐらいです。

結局は、パナソニックの LetsNotekなのか・・・・。

同期法曹同期法曹 2009/10/08 19:51 かなり昔ですが,同期が,法壇の上にも下の両側にも,そして被告人席にもというのは辛かったです(T_T)

謎現謎現 2009/10/09 00:13  「みかか社」じゃなくて「みくの社」ネタ
ウィニー裁判で記者が「弁護妨害」 NHKが弁護団に謝罪
10月8日18時55分配信 J-CASTニュース
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20091008-00000001-jct-soci