「18年目の正義」英社会の闇照らす

http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/world/europe/540826/

記事の題名がとても良いですね。内容も、この事件の経緯を丁寧に紹介していて、参考になります。

「警察は頼りにならない」と感じた両親は、94年9月に容疑者らへの私人訴追に踏み切る。しかしその後も「証拠不十分」との判断から、96年までには容疑者5人全員が免責となった。
「何かがおかしい」。そう感じる市民の心に怒りの火を付けたのがメディアだった。大衆紙デーリー・メールは97年2月、1面トップで容疑者5人を「殺人者」と断罪する記事を掲載。「本当に無実なら、われわれを訴えてみろ」と容疑者らに挑戦する内容の記事を掲載し、当局に事件の解明を強く求めた。
■「組織化された人種差別」
ここから事態は動きだし、97年に発足した労働党政権は事件の再調査を要求。捜査の不備が次々と明らかになり、99年に発行された第三者機関による調査報告書では、捜査は「職務遂行能力の欠落や組織化された人種差別、上官によるリーダーシップの欠落」などにより阻害されていたと指摘。2006年には、BBCが事件の捜査関係者が容疑者の父親から賄賂を受け取った可能性を指摘するドキュメンタリー番組を放映した。09年には2人の警察関係者が、事件の捜査に必要な情報を提供しなかったなどの容疑で逮捕されるに至った。
■残る3人も捜査継続
そして11年5月、捜査当局は再調査の結果、事件の「重要な新証拠」を発見したと発表。ようやく2人の容疑者が逮捕され、有罪判決が下された。

この経緯を見ていて、まず強く感じるのは、マスメディアが、その機能を健全に発揮することで、闇の中に葬られようとしていた事件に光が当てられ、次第に真実が明らかになり、歪み、問題点が是正されて行く、そのダイナミックさですね。英国社会を手放しで礼賛するつもりはありませんが、こういったことが起きる社会こそが、健全さを持ち、我々が目指すべき社会なのではないか、という気がします。
以前、英国のドラマ

第一容疑者 DVD-BOX

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の初回を観たところ、20年以上前の英国警察内部が描かれ、女性上司に対し、男性の刑事が、すさまじい偏見、蔑視で臨んでいる様子がリアルに描かれていて(このドラマは英国警察の新人研修用にも使われていたとのことで現実をかなり反映したものであったようです)、印象に強く残るものがありました。記事にある事件が起きた18年前の英国警察が抱えていた問題にも通じるものが、ドラマでは描かれていたように思います。
マスメディアが果たすべき役割、心ある人々が勇気を持ち屈せず行動することの重要性、努力が報われ闇に光が当てられることによる大きな成果、といった様々なことを考えさせる、遠い日本に暮らす我々にとっても、貴重な教訓を含む事件であると思いました。

2012年01月05日のツイート

「手配犯きちんと覚えましょう」 警視庁が指示

http://www.asahi.com/national/update/0106/TKY201201060595.html

警視庁によると、平田容疑者は大みそかの夜、「平田信です。出頭しました」「特別手配の平田です」と申し出た。だが隊員は「悪質ないたずら」と判断して門前払いした。隊員は、平田容疑者ら17人の指名手配容疑者の顔写真や特徴などが載る手配書を持っていたのに、突き合わせて確認しなかったという。こうしたこともあり警視庁は、個人で判断がつかない場合は上司に伝え、組織的に対応することも改めて示した。

きちんと覚える、というのは、なかなか難しいように思います。覚えていても、今回のように、逃亡してから長年月が経過していれば、逆に、覚えていればいるほどそれがかえって邪魔して誤認する、ということも起きかねないでしょう。
例えば、iPhone4、4Sには、FaceTimeという、ビデオチャット機能がついていますが、そういった、子供でも持っているような便利な小型機器を警察官に持たせ、必要に応じ、出頭した相手から事情を聞きながら手配情報を検索し、判断がつきにくければ、手配犯について、より的確な判断が下せる部署とFaceTimeのような機能を使ってコミュニケーションを取りながら(その機能を使い出頭した相手とその部署の担当者とが直接対話してもよいでしょう)、検討を進める、といったことができれば、誤認はかなり防止できるのではないかと思います。
ただでさえ負担が重い警察官という「人」に、さらに負担をかけるのではなく、機械にやらせることができることはやらせ、人間ではなかなかできないことをしっかり代替させる、ということを検討すべきでしょう。力任せにやればよい、というものではありません。