下請け運行「経営ギリギリ」 関越道の7人死亡事故

http://digital.asahi.com/articles/TKY201204300002.html?ref=comkiji_txt_end

2010年3月にJRの寝台特急「北陸」と急行「能登」が廃止されて以降、北陸地方では特に価格競争が激しくなっている。あるバス業者は「十数年前にはバス1台あたり30万円ほどで委託を受けていたが、最近では約20万円まで下がった」と嘆く。事務経費を削り、「ギリギリの経営」をしているという。

自由競争賛美論者は、競争がすべてを好転させる、敗者は市場から退出し勝者が残る、と牧歌的に考えがちですが、実際は、敗者は自分が敗者であることをなかなか認めず、合理性を欠如したまま退出を拒み他を食いつぶして勝ち目のない競争を続け、その結果、勝者が誰もいなくなって共倒れする、ということになりがちではないかと思います。典型的なのは規制緩和後のタクシー業界であり、弁護士業界にもその傾向はあるでしょう。
安全性が強く求められる業界で、そういったことが起きれば、安全性が犠牲にされていることで事故や死傷者が出る、ということが必然的に起きてくることになり、そうならないために、必要な規制は行う、ということを避けて通れないのではないかと思います。
規制緩和されて良くなったことだけでなく、悪くなったこともあり、21世紀に入って10年余りを経た日本でも、規制緩和の功罪、緩和から引き締めへと転じるべき点の検証、といったことが早急に行われるべきでしょう。「ギリギリの経営」をしているバスに、日夜、数多くの人々がその命を預けて乗っているということに、今後も続く危険を感じる人は多いのではないかと思います。

2012年04月29日のツイート

違法ダウンロード刑事罰導入を阻止しよう

http://blogos.com/article/37885/

民主党は党としての結論を次回以降の文部科学部門会議に先送りしただけなので、今後の会議で決める可能性は残されている。すでに導入を決定ずみの自公両党は仮に民主党の合意が得られなくても、今国会での法案提出を目指している。オランダの議員達は、ダウンロード(刑罰化以前の)違法化が情報の自由な流れを制約するため、自由でオープンなインターネットの思想に反するとして、これを阻止した。ネットユーザは連休で選挙区に戻る議員に、ネットの特質をそぐ法案には反対する意向を伝えて、違法ダウンロード刑罰化を阻止すべきである。

昨年10月に、この問題について開催されたシンポジウムに呼ばれて話をしたことがあります。

知られざる「違法ダウンロード刑事罰化」の流れ
http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20111013#1318501350

刑事処罰の目的は法益(法により守られるべき利益)保護にある、ということは広く承認されているところですが、刑事処罰化されようとしている、違法ダウンロードの対象になる著作物は、インターネット上においてアップロードされ公衆送信可能になった時点で、既にその法益が侵害されてしまったもので、その後のダウンロードにより新たな法益侵害が生じるわけではないのではないか、という見方もあり得るでしょう。仮に、一定の法益侵害が新たに生じるとしても、公衆送信可能にした、あるいは現に公衆送信している著作権侵害者(当然、取締りの対象になり処罰の対象になります)に比べると、法益侵害に加担している程度は高いとは言えないと思います。こういった立場の者(ほとんどは一般の、ごく普通の生活を営むインターネットユーザーのはずです)を、刑事罰の対象にすることは、よく言われる刑法の謙抑性の観点からも慎重であるべきです。
また、こうした零細な一般利用者について、捜査機関が、現実的に立件の対象にできるかというと、実際の捜査実務(立件すべきものですらなかなか立件されない、ストーカーに殺されかけている人がいるのに放置して警察官が旅行へ行ってしまう)に照らしても、とても無理なことで、そういう中で立件の対象になるのは、権利者や警察が恣意的に狙い撃ちする特定の対象、ということになりかねず、不公平、不正義な立件、捜査(この点を口実に令状を取って捜索、差押を行いマスコミも巻き込んで嫌がらせする、別件で取れない令状をこれを口実に取る等々)を招きかねない危険もあると思います。
刑事罰というものは、社会統制の一手段で、他の社会統制手段とのバランスも考慮しつつ、その在り方を決めるべきで、声の大きな者の言いなりになって特定の分野の瑣末な零細反法行為を過剰に取締りの対象にするようなことは、無用な委縮効果も生みかねず、そうでなくても暗い日本の社会をますます暗くしかねないもので、厳に避けなければならないでしょう。違法ダウンロードを刑事罰の対象にするかどうか、ということを考える上でも、そういった慎重な検討が不可欠ですが、現状ではそういった検討が行われているようには到底見えません。