「画像鑑定、信頼できる」札幌高裁、建造物侵入事件の被告を逆転有罪

http://www.sankei.com/affairs/news/160126/afr1601260026-n1.html

北海道滝川市で平成26年7月に起きた建造物侵入事件で、防犯カメラに写っていた人物と男性被告(47)を「同一」と判断した画像鑑定の信用性が争われた刑事裁判の控訴審判決で、札幌高裁(高橋徹裁判長)は26日、「鑑定結果は信用できる」との判断を示した。

判決理由で高橋裁判長は「鑑定は頭髪の生え際、鼻や耳など多数の部位の形状が一致・類似していると指摘した。『同一』判定は合理的な検討結果を踏まえている」と評価。

平成元年(1989年)に、新任検事として東京地検にいた当時、被告人が犯行を完全に否認している事件で、銀行のATMでその事件に関わる金を引き出している、防犯カメラに映った後ろ姿を、「被告人にかなり似ている、同一人物と認められる」と公判部に引き継いだところ、公判部の担当検事から、見た目だけで判断する程度でとどめておいたのを、鑑定して別人とされたらどうするんだ、と、こっぴどく叱られたことがあり、証拠の見方の甘さや、積極証拠(有罪方向の)と安易に考えていたものが決定的な消極証拠にもなりかねない怖さを痛感して、とても勉強になったことが今でも思い出されます(その事件はその後有罪となり確定しましたが)。
当時の防犯カメラ画像は、今に比べるとかなり粗いものでしたが、今は、解像度も格段に上がり、上記のような画像鑑定の精度も、鑑定対象や手法が良好なものであればかなりのものになるでしょう。客観証拠重視の流れの中で、防犯カメラ等の画像が、鑑定結果も含め、被告人と犯人の同一性など、検察官立証上、重要なポイントになる事件が今後ますます増えることが予想されます。そういった証拠は、客観証拠ということで、その存在自体により信用されやすそうですが、鑑定の対象や手法によってはその精度、信用性に問題が生じる可能性もあると思われますから、鑑定人の専門性もきちんと見つつ、個別に検証しなければならないと思われます。
1審と2審の判断が、同じ鑑定に対して真っ向から違っていて、この種の鑑定を評価する上で参考になりそうな気がしますから、判例誌で紹介してほしいところです。

2016年01月29日のツイート