おまえにハートブレイク☆オーバードライブ

2003-09-27 ワラッテイイトモ、

「ワラッテイイトモ、」というビデオ作品が気になっている。

今年のキリンアートアワードで審査員一同を震撼させたすごい映像らしいのだが、「笑っていいとも!」を素材にしているので公開できないのだそうだ。

朝日新聞9/25付朝刊の記事より。

「最高作なのに非公開 なぜ」大西若人

K・Kさん(註:作者のこと)の部屋のテレビで、日の丸が放送終了を告げている。と、一転して「いいとも」に。動作を短く繰り返すといった技術を駆使した後、焼け野原が現れ、玉音放送が重なる。タモリさんが終戦直後に生まれ、米国文化に親しんだことを示し、マッカーサーの顔がサングラスだけ残して同氏に変わる場面も。放送された発言を巧みにつなぎ、テレビから問いかける仕立てを経て、K・Kさんが番組収録地である新宿に向かう――。

「いいとも」の明るさや軽さを肥大させて、裏返しにしていく。見る側の内面が暴かれているようでもある。五十嵐さん(註:審査員のひとり、建築評論家の五十嵐太郎)は「呪いのビデオを見ているよう」と評した。

いったんは最優秀作に選ばれたものの、素材をめぐる権利関係から公開が難しいということにキリンが疑問を呈し、優秀作なしということにして賞金はそのままあげようという方向へ話がまとまりかけたのだが、これにも疑問の声が出て、作品を公開可能なかたちに修正のうえ新たな賞をもうけようということになったという。

審査員である椹木野衣がいち早く『群像』9月号に、この作品をめぐる「このうすら寒い夏の正午に」と題したエッセイを寄せている(五十嵐太郎も『10+1』に書いているらしいが、そっちは未読)。

こうして『ワラッテイイトモ、』は、彼がひきこもっていたという八王子の自宅と新宿アルタ前を往復しながら、赤塚不二夫とタモリとの人形劇や、『笑っていいとも!』に登場するゲストたちの画像に対する容赦なき切り刻みとイメージ変形を通じて、一種、異様な雰囲気をつのらせていく。作者の手によって近くの公園に小さなテレビのモニターが置かれると、それは電源を引かれ、お昼になるや誰が見るともなく『笑っていいとも!』の場面が現われては消えて行く。12時00分を過ぎると、画面は唐突に巻き戻され、ふたたび11時59分が訪れる。そしてまた、何度繰り返されたかわからない12時00分が訪れると、ふたたびあのテーマソングが流れるのだ。終わらない正午。いくどめかの正午。正午の中の正午。(中略)

けれども、この作者の創造には「死」も「復活」も、そのための「安息日」も存在しない。『笑っていいとも!』は、月曜から金曜までのウィークデイの円環の中でしか存在せず、ゆえに「安息日」には辿り着かない。月、火、水、木、金のあとはまた、月、火、水、木、金が平板に続いているにすぎない。弁証法的展開が欠落したまま、薄っぺらな人間関係だけで接続されていく月、火、水、木、金……月、火、水、木、金……これらは互いに等価で交換可能だ。だからこそ、あの瞬間は何回でもやってくる。11時59分から12時00分へ。12時01分からふたたび11時59分へ。そしてまた12時00分へ……。それは、神の死とともに「映画」が終わったあとの、ニーチェ的な永劫回帰の産物に他ならない。

そして、権利関係などの問題が待ちかまえているだろうがしかし、本当の問題はそんなところにあるのではないと椹木は結論する。

しかしほんとうの問題は、この作品を見た人が受ける精神的ダメージの方だろう。目を伏せたくなるような映像が映っているわけではない。反対に、そこでは僕らが飽きるほど見慣れた映像しか使われていない。にもかかわらず『ワラッテイイトモ、』は限りなく不穏で、そこには「完全犯罪」の匂いすら漂っている。

くぅー、ここまで煽っといて見られねえって何事よ! とひとしきりジタバタしたぼくは、椹木氏にゆかりの編集者Kさんに記事をファックスし、「ねえねえすごく見たくありません? 見たいですよねえ、はあ」というような婉曲表現でしたためたメールを送ってみた。親切にもKさんは椹木氏に問い合わせてくれたのだけれど、やっぱり見るのは難しそうだとのこと。しかし、何とか公開できるように動いているということだったので、興味のある方は刮目して待つべし。


追記(関連リンクなど)

www.taro.st-> MovableType(ニシモトタロウ氏のblog。「ワラッテイイトモ、」関連情報・サイトのまとめあり)

http://taro.readymade.jp/blog/

cybermetricの中の50's THUNDERSTORM (五十嵐太郎氏)

http://www.cybermetric.org/50/50_twisted_column.html


群像』9月号以来、取り立ててチェックしていなかったのだけれど、五十嵐氏の日記によると、かなり状況が動いているようです。楽しみ。

しかし、それにしても情報の回るのが想像以上に早いな、はてな

taro-sttaro-st 2003/09/29 23:06 上記blogの持ち主ですが、僕も編集者Kさんに以前連絡して聞いたことも。そのあとkさんから新聞がFAXで届いた件を聞いたのですがそれがkuriharaさんだったのですね(笑)

ykuriharaykurihara 2003/09/30 04:05 はじめまして。先ほどぼくも、編集者Kさんからメールを拝受したところです。まるでエージェント・スミスのように「ワラッテイイトモ、」の陰で暗躍する編集者K(違うって)――インターネットは油断がならない(笑)。

geidaigeidai 2003/11/05 22:42 初めまして。「ワラッテイイトモ、」のオリジナル版を東京芸大取手校アートパス取手というイベントの一つで12/6の13:00から上映するのでぜひいらしてください。k.kさんも名古屋からいらっしゃって講義もしていただきます。入場無料です。

ykuriharaykurihara 2003/11/06 07:39 お、それらしき噂はどこからともなく耳にしていたのですが、決まったのですね。ぜひ伺いたいと思います。お知らせ、ありがとうございました。

geidaigeidai 2003/11/06 21:57 お待ちしています☆

geidaigeidai 2003/11/06 22:02 ↑芸大生100名以上の展示もあわせてお楽しみください☆

geidaigeidai 2003/11/06 22:11 今タモリのマネージャーともコンタクトを取っていてもしかしたらタモリもくるかも(笑)

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