「えー、今日のブログ通信簿ですー」
「おおー」
「下がったのです」
「若返ったねー」
「というわけで仮説は反証されました」
「どの仮説?」
「『年齢は十歳から足していってる』『引き算はしない』の両方、あるいは片方」
「っていうか、仮説の立て方が整理されてないんだよね……」
「まー、実際の設計がどうってのは最重要課題じゃないのです」
「負け惜しみですか」
「負けてません」
「……」
「負けてません」
「……ところでひとつ気づいたんだけど、ping送れ、って書いてあるけど、送る設定になってたっけ?」
「……ないような気がする」
「じゃあ、最新の更新が反映されてないんじゃない?」
「……かもね、いや、そもそも、pingってなに?」
「……さあ、送ってなくても、ブログサーチには引っかかったりしてるよね……」
「ふーん、まあ、最新が反映されてようがなかろうが、いったん年齢が上がったらそのエントリが流れない限り下がらない、という見立てだったんで、はずれははずれなんだけど」
「新たに仮説を立てる?」
「めんどくさいからもういいや……ちょっと違う話をしよう」
「なに?」
「ブログ主の年齢や性別を推定する需要ってどこにあるのか」
「そりゃーまー……広告屋さん?」
「そう、マーケティング……あれ、マーケティングってなんだ……まあ、ものを売りたい人は、売りつける相手のことを知りたいよね」
「まあ、そうだよね、それが?」
「なんか本末転倒じゃない?」
「どこが」
「いや、年齢や性別を知りたいのは、そこから収入とか、いまなにが入り用とか、なにが欲しいっぽいかとか、そういうのを類推したいからでしょ」
「まあね……ああ、なのに、趣味嗜好から年齢や性別を推定しようとするのは無駄手間だって?」
「そうそう」
「まあ、そうかな……ああ、年齢をとっても知りたい商売も、あるね」
「たとえば?」
「生命保険屋」
「ああ……、保険屋さんは、死神の目が欲しいだろうね」
「あのさ、他の友だちの通信簿を見るってところを見ると、右側に『男女比率』とか『年代比率』とかって出るけど、これは……ブログ主のデータ? 検索した人のデータ?」
「ブログ主じゃないの?」
「同じgooなのに、根拠は別だよね、これ?」
「うーん……10代未満があるね」
「ブログ主の正確なデータを知りたいっていう広告屋さんの需要はまだわかるんだけど、そうしたらブログ通信簿の意義ってなんなのかな? 僕としてはそっちのほうが不思議」
「……ネタとしてはびみょうだね」
「そうそう、ネタとしてびみょう」
「ちなみに『ネタとしてびみょう』を翻訳すると『あんまりおもしろくない』です」
「いや、わざわざ翻訳しなくていい……ってか、その『あんまりおもしろくない』ものをここまで引っぱってるんだから、甚だ説得力がない……」
「いや、おもしろいよ?」
「どっちなんだ……」
「いやいや、つっこみのネタとしてはじゅうぶんおもしろいよ、っていうか、なんだっておもしろいよ」
「なんでもおもしろいってのは、なにもおもしろくないって意味だよね」
「いいんだよー、それでも……で、話は戻るけど、ネタとしてびみょうだし、本気で推定できますってパフォーマンスなのだとしたら精度がぜんぜんダメだよね」
「ええと、はじめに十歳って結果が出たのを根に持ってますか」
「持ってません」
「……」
「持ってません」
「……ふーん、まあいいけど……でも、ふつうに、ネタをサービス――供給、なんじゃないの?」
「えっ、ネタとしてびみょうなのにっ」
「びみょうだと思うのはネット者としてすれているから、ってだけかもしれない」
「……」
「……それはどうだろう」
「あ、じぶんでつっこんだ」
「精度がダメっていうのも……」
「まあ、僕は、そのへん……コンピュータがどれだけ言語を『理解』できるのかってことに対して、かなり悲観的だからね、もともと」
「先入観があるよね」
「うん、あるよ……自己評価なんてたいしてあてにならないものだけどね、それでも文章を理解していないコンピュータよりは、自己評価のほうがよっぽど正しいはずなんだよ」
「ああ、主張度が下がったのを気にしている?」
「気にしてません」
「……」
「気にしてません」
「……めんどくさいなあ、君……」