身におぼえがある

図書館に行くと、たまにはこれまで読んだことない作家を手にとろうと、小説のコーナーで腕組みして仁王立ちして本棚をにらむんですけど、最近の本をまったく知らないので、なにを選んでいいのかわからん……、で、おもしろいとわかっている作家の本をとってしまうのです。奥泉光桑潟幸一准教授のスタイリッシュな生活』。うん、おもしろいですよ……。『モーダルな事象 (本格ミステリ・マスターズ)』の、続編、というほど続いているわけではないと思う(おぼえてないけど!)、単体で読めます。
下流大学教師クワコー(手取り110,350円)が、トラブルに見舞われて泣いていると、コスプレ文芸部員たちが、てきとーに慰めたり、てきとーに放置したり、てきとーに観察したり、てきとーに解決したりしてくれる、という話。有料で。

 実をいえば、桑幸が心を入れ替えて勉強しようと決意したのはこれが何十回目かのことであった。季節の変わり目や、年度が改まるときはだいたい決意していたし、連休が明けたり、パソコンを買い替えたり、部屋を模様替えしたりする度に決意した。部屋の電球を取り替えたり、ドラクエを全クリしたり、風邪で寝込んだあとなどにも決意したし、ときには一〇〇円のボールペンを買って、そうだ、心を入れ替えて勉強しようと、にわかに思うことさえあった。そういう小さいのまで勘定に入れれば、ほぼ三日に一度のわりあいで桑幸は生活刷新を決意し、しかしそれは一度として実現しなかった。読書勉強は続いて半日、大抵は決意だけに終わった。

そうなんだよ、決意だけに終わるんだよ……。