フィラデルフィアオケ Opening Night

September 29, 2007
Verizon Hall
Opening Night

The Philadelphia Orchestra
Christoph Eschenbach, conductor
Anne-Sophie Mutter, violin

BRAHMS Variations on a Theme of Joseph Haydn
BRAHMS Violin Concerto




待ちに待ったフィラデルフィアオケ定期のオープニング。


普段は結構ぼろい格好の客が多いVerizonホールも、今日は蝶ネクタイ、ドレスでごった返していた。
『ヨーロッパ社会における階級を持ち込まなかった新世界アメリカ社会において、唯一のステイタスをあらわすものは富。』・・と解くハーバードビジネスの論文を読んでものすごく納得したことがあるが、こういう機会に改めて実感する。


そして、ヴァイオリン協奏曲の第一楽章の後、拍手が盛大に鳴り響いてしまう(しかもなかなか鳴り止まない・・5割くらいの人が曲の終わりだと信じていなければこうはならないだろう。ここまで「まともに」楽章間で拍手が鳴ったのは初めての経験。)ところに、その彼らがいつも聴きにきている音楽ファンとは違うということが明らかになってしまう。今日はオープニングということで、スポンサー関係者などのオーディエンスが多かったのだろうか、本当の音楽ファンのためのものではなく、ちょっとお金のある人たちが集まるお祭り、みたいな雰囲気だった。チケット代もいつもより20ドルくらい高く設定されてたし・・。




(写真:演奏後、ホール外部では関係者が集う食事会?みたいなセッティングに。なぜかジャズの生演奏が流れている。さっきクラシックの名演を聴いたあとで、ジャズを聴くってのはどうなんだろうか。)


オープニングにあたっては、フィラデルフィアオケのCEOの挨拶や、色々とDonationした人・会社の紹介、今日のオープニングナイトのSponsorである、フィラデルフィアを地盤とする地銀・PNC BankのCEOが挨拶が続く。金持ちが寄付するという社会的循環が働き、芸術が寄付で支えられているということを改めて実感する。
ただ、寄付している個人が本当に芸術を愛する人たちであることは疑いないのだけど、アメリカ社会におけるオペラやオーケストラは、結局教養・社会ステイタスを示すためのシンボル的に扱われている面がすごく強いと思う。そんな面が今日のコンサートには凝縮されていたような気がした。オペラやクラシックがより身近なものとなっている欧州と比べると大きな差があると思う。一方で、クラシック音楽にそんなステイタス上の価値があるからこそ、金持ちが寄付をしてくれるというのもまた事実である。

ステイタスシンボルとしてではない、クラシック音楽とのもっと身近なふれあいの機会を、より多くの人に広げる、そういうことに関わっていきたいなと強く思う。



・・それはともかく、演奏は、まずはアメリカ国家に始まり(エッシェンバッハのタメの効いた指揮がよかった)、ブラームス2曲。


今日のプログラムの目玉はアンネ=ゾフィー・ムターカラヤンに評価され、13歳のときにベルリンフィルと初共演したという人。カラヤンと残した録音も数多い。初めて生で聴いたが、そんな評価をされているヴァイオリニストにしては音程が安定せず、表現も個人的には大味な感じ。・・まあ、超名曲なだけに余計がっかりしてしまった面もあるけど。アンコールで弾いたバッハの無伴奏のほうがはるかによく、「アンコール『が』とても良かった」と言っている人は周囲にも多かった気がする。個人的にはバッハは確かにブラームスのときよりもはるかによかったとは思うけど、それでもあの「雰囲気で弾いてる」感じの表現がやはり気になった。

まあ、今晩のプログラムは本日限りのもので、リハーサルが足りなかった面もあるのだと思う。エッシェンバッハがよく合わせてたなあ、という印象だった。いやはや、期待が大きすぎるとやっぱりろくなことはない。オープニングだというのにまともな感想がかけないのが残念だが、次に期待します。