大和但馬屋日記

この日記について

2006年01月15日日曜日

ATOK主催日本語テスト

七十六点だつた。八十点くらゐは越えたかつた。悔しいのでまた仮名遣関係を出汁に好き勝手言はせてもらふことにする。

四つ仮名問題

10
問題

「近付く」を現代かなづかいで書きました。正しいのはどっちでしょう。

  1. ちかづく
  2. ちかずく
答え

(1)

解説

「づ」が正解。

「ちかづく」は、形容詞「近い」の語幹「ちか」+動詞「付く」からできた語で、この場合はことばのでき方にしたがい、「付く(つく)」のかなづかいに合わせて、「づく」と書くのが現代かなづかいの決まりです。

「片づく」「基づく」なども同様です。

11
問題

地震」を現代かなづかいで書きました。正しいのはどっちでしょう。

  1. じしん
  2. ぢしん
答え

(1)

解説

地球ちきゅう)」「土地(とち)」に見るように、「地」は「ち」と読むから、「地震」の場合も「ぢしん」が正解だろうと考える人があるかもしれませんが、実は、それは誤りです。

常用漢字表によると、「地」には、「ち」と「じ」の二つの音(おん)があって、「じ」と濁っていう場合は、「ぢ」ではなく、「じ」のほうを使って、「じ」と書く、というのが現代かなづかいの決まりです。

日本語テスト 模範解答

問題10と11は、御馴染のアレである。「じ、ぢ、ず、づ」のいはゆる「四つ仮名」問題だ。何度も話題にしてゐるから見飽きた人も多いだらうが、この解説文は何とも秀逸なので改めて採り上げたい。

「近付く」の解説の中にこの場合はことばのでき方にしたがい、「付く(つく)」のかなづかいに合わせて、「づく」と書くのが現代かなづかいの決まりですとある。よからう。しかし「地面」の方には「じ」と濁っていう場合は、「ぢ」ではなく、「じ」のほうを使って、「じ」と書く、というのが現代かなづかいの決まりです。 とある。「ち」といふことばの出来方に従ひ、「ち」の仮名遣に合せて「ぢ」と書くのは現代仮名遣では誤りなのである。お願ひだから、このことについて誰か納得のいくやうな説明をしてほしい。これの制定に携つた国語審議会の面子や、それを承認した時の内閣は、気狂ひでなければなんだつたのだらう。

長音の仮名遣

12
問題

二百十日」を現代かなづかいで書きました。正しいのはどっちでしょう。

  1. にひゃくとうか
  2. にひゃくとおか
答え

(2)

解説

「十」を「トー」と読む場合の、正しいかなづかいは「とお」。

「十」は、歴史的かなづかいでは「とを」と書きますが、現代かなづかいでは、「を」は、助詞の「を」を除き、すべて「お」と書く決まりになっています。そこで、「とお」と書くことになるのです。歴史的かなづかいで「をとこ(男)」と書いたものが、現代かなづかいでは「おとこ」となるのと同じ理由ですが、「トー」と発音する語は「とう」と書くことがおおいために、つい「とう」と書きがちです。

日本語テスト 模範解答

さてどうしますか。「現代仮名遣で正しい読みを書け」といふ問題なのに、歴史的仮名遣を知らなければ正解に辿り着けない。つまり、現代仮名遣を正しく使ひこなさうとしたら、歴史的仮名遣から勉強しなくてはならない訣ですわ。ところで、高等学校までに歴史的仮名遣について学んだ人はどのくらゐ居るだらうか。ワシは学んだことがない。古典文法の用言の活用形については習ふけれども、歴史的仮名遣を習ふことはまづないだらう。

二十年も前のことは措くとしても、では今の学校教育でそれを教へてゐるだらうかと考へるに、まさか教へてゐる訣があるまい。大体、基礎語彙も知らないのに活用形ばかり覚えさせて何の意味があるのだ。呪文のやうに「あり」「をり」「はべり」「いまそかり」と誰もが覚えてゐたけれども、「いまそかる」の意味を知つてる奴がどれだけ居たか。威張つていふことではないが、ワシは今でも知らない。それを知らなくたつて構はないし、知つたところで現代仮名遣が使へるやうになる訣でもない。

児童生徒に何を学ばせるかについての見識を疑ふ余地だらけのこんな学習指導要綱を作つた連中や、それを承認した時の文部省(現・文科省)の担当者は、気狂ひでなければなんだつたのだらう。

送り仮名

13
問題

次の太字の語は「送り仮名の付け方」に従って送ったものです。正しいものを1つ選んでください。

  1. 私は必らずしも賛成しない。
  2. 幼な子イエスの生誕を祝う。
  3. 恥かしいことをした。
  4. 己の立場ということも考えなさい。
  5. 四季折り折りの歌を歌う。
答え

(4)

解説

それぞれ「必ずしも」「幼子」「恥ずかしい」「己」「折々・折折」が正しい送りがなです。

特に、「幼子」「己」は、「幼な子」「己れ」としたくなるかもしれませんが、現行の送りがなでは認められていません。

日本語テスト 模範解答

ワシはこの問題を間違へた。解説にある「正しい送りがな」が、なぜさうなのか理解できるだらうか。ワシには理解できん。「恥ずかしい」がありなら「己れ」があつてはならない訣がなからうし、「折り折り」だつてあるんぢやないか。さう思つて(5)と答へたら間違へた。誰か基準を教へてくれ。

送り仮名など全くもつてどうでもよい。要するに読めれば良いのであつて、いちいち「これは正しい」「これは間違ひ」などとお上に決付けられる必要などどこにもないのである。国語政策の最大の錯誤は、「正解」と「不正解」を定めてしまつたことにある。しかも、理に適ふ考へ方をすればその「正解」に辿り着けるといふものですらなく、そのルールは出鱈目としかいひ様がないときてゐる。「正しい日本語」といふのは時の為政者の定めた基準に沿つて居るといふ意味では全くあるべきでないのだが、世の大半の「正しい日本語」を扱ふ読物の筆者はそのことを理解してゐないのではないか。

外来語の仮名書き

14
問題

次の文で、外来語の表記がより適切なのはどちらでしょう。

  1. ボーリング大会でストライクを連発する
  2. ボウリング大会でストライクを連発する
答え

(2)

解説

外来語の伸びる音は、一般に「ー(長音符号)」を使って書きます。それに従えば、「ボーリング」が正しいことになりますが、この場合は例外で、「ボウリング」が正解。

穴を掘るほうの「borring」を「ボーリング」とし、スポーツのほうの「bowling」を「ボウリング」として、紛らわしい語から生ずる混乱を避けようとするわけです。野球の場合は「ボール(ball)」、ボウリングの場合は「ボウル(bowl)」のほか、スポーツは「バレー(volley)」、舞踊は「バレエ(ballet)」なども使い分けられています。

日本語テスト 模範解答

問題14。どちらでもよい。つか、本当にどうでもよい。問題作成者も実はそのことを知つてゐるから、ここだけは「正しい」ではなく「適切な」といふ表現を用ゐてゐる。他の問題に「現代かなづかいで」と書いてゐるところからも、非常に気配りの行届いた「よくできた」問題だと思ふ。

話を戻さう。日本語の「とう」「とお」「とを」「とほ」についてもいい加減な基準しか示せないのに、この上外来語からの表記に何の基準が示せるといふのか。

「ボーリング大会でストライキを連発する」とまでいふと流石に文意まで変つてくるが、それはさういふ慣例が出来てゐるからだ。もちろん慣例にはある程度従ふ必要がある。解説文に書かれてゐる使ひ分けといふのはさういふことだ。そして、実はそれは外来語だけでなく、日本語についてもさうなのだ。

慣例に従ふといふこと

歴史的仮名遣はその名の通りに歴史的な普遍性を持つ。何故さういへるかといふと、それは通史的な慣例の研究の成果だからだ。慣例慣例と言つてゐるが、日本人とて馬鹿ではないから千年以上に及ぶ文字遣の中でそれなりに合理的な体系を獲得してきた。「歴史的仮名遣」は決して「正解」と「不正解」を選分けるために作られた訣ではない。あくまでもその時点での歴史的な体系を確認したものなのだ。

ところが「現代かなづかい」は大東亜戦争以前の全てを否定するといふ目的の元に作られたものだから、普遍性などどこにもない。常識で考へてみてほしい。ミニマムな普遍性を持つものに屋上屋を架すやうな改変をして、それが元より普遍的になり得る訣がないではないか。おまけに無理矢理「正解」と「不正解」を作つてしまつたから、それ以降の日本語の変化に耐へることもできない。なぜなら、変化したものはすべて「誤り」となるからだ。つまり、慣例といふものの生れる余地すらなくなつたといふことだ。その結果、日本語はこの六十年の間、進歩をやめてしまつた。そしてこんな「日本語テスト」の結果に一喜一憂しなくてはならない。

ここに挙げた五問に関しては、正解しても自慢にはならないし間違へても全く恥ぢる必要はない。ワシも他のところで随分間違へたが、それは自分の教養の無さを恥かしく思ふ。しかしこの五問だけは教養とは全く無関係の問題だ。

関連しさうな面白い資料を一つ挙げて終りにする。

それにしてもアレだ、たつた五問を取上げるだけで現代仮名遣と正書法の抱へる問題点をきちんと網羅できるのだから、このテストの問題は本当によくできてゐると、皮肉でなくさう思ふ。

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