大和但馬屋日記

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ロケットまつり13

yms-zun2007-07-09

昨晩行つてきた。同行メンバーが揃はず、一人といふのも寂しいので最後まで入口のところで物販の邪魔をしてゐた。
今回の話はちよつとログに纏めるにはアレな話が多すぎるんで、当り障りのないところだけ重点的に書留めておく。
元ロケット打上げ班長の林氏が取り出した、黒い棒状の物体。中島飛行機でテストパイロットを務めた林氏の御父上が、テスト中の事故で殉職された時に握つてゐたといふ「隼」戦闘機の操縦桿である由。それは、ただの舵取り棒に留まらないスイッチの塊と化した現代戦闘機の操縦桿を見慣れた目からはただの金属パイプにしか見えないが、それを手にした元ロケット設計担当の垣見氏が仰るには実に精巧な工作であると。各パーツの勘合、握つたときの自然に手に馴染む感触、そのやうな高い工作技術が戦前の日本には確かにあつたといふ話。
当時、「中島の現物合せ、三菱の馬鹿穴」などとと呼ばれてゐた。それは今の富士重工vs三菱自動車にも連なるライバル関係にあつた両社の企業風土を端的に表した言葉だらう。中島系の色濃い垣見氏をして、しかし「だからこそ三菱の設計は大量生産には向いてゐるんですね」と。さらに、当時は「中島規格・三菱規格・川崎規格」といふ三つの規格がそれぞれにあつたとも。
中島の現物合せの風土は宇宙研に色濃く受け継がれてゐて、ロケットの射場で組上げる際に、合はないパーツをヤスリで削つて無理矢理組合はせるなどといふことは日常茶飯事であつた、時には推進薬そのものを削ることまでやつたらしい。製造誤差の所謂「プラスマイナス」といふ奴の、全部のパーツが「プラス」の方に振れてゐたら組み合さらないのは当り前。それあさうか。
仕様と設計のどちらが先かといふ話。カッパーロケットの頃までは、ある程度手探りで物を作つてから仕様書を上げるといふことが当り前に行はれてゐた。ラムダロケットほどの規模になると流石に仕様ありきで設計される様になつた。私見を混ぜるが、これは「手作りで出来るものの限界」を示してゐると思ふし、それは組織の規模の話にも当て嵌まるだらう。後半に出た「組織疲労」にも繋がる話だと思つた。
これ以外の話について詳しく書くのは、差控へておく。
何があつたかだけを備忘的にメモしておくと、主宰・進行役のM氏が数日前に某所で宇宙開発に纏はる講演をした内容の紹介と、その時の反応の報告が主たる内容だつた。なんといふか、これほど盛下つたロケットまつりもかつて無かつたんではないかと。ううむ。
その講演の中で、個人的にひどく引掛つた点を一つだけ。「国民の関心を惹くために、日本人宇宙飛行士をアメリカの船に乗せてもらふことに意味は無い。彼等が必要とされる理由は国民の感情移入の為だが、べつに人間が居なくても感情移入くらゐできる」といふ主張の実例として「はやぶさたん」の画像を御歴々に見せたらしい。しかしその反応を聞くと、「見事に無反応でした」。ここにワシは深い絶望を感じた。あまりのヲタ臭さに引かれた、といふならまだ救ひはある。所謂「常識人」なら引くのが当然だとも思ふ。ところがさうではなくて、無反応だつたと。つまり、予想外の何かに対して好奇心(あるいはその裏返しの嫌悪感でもいい)が惹起される心を持たない人たちがナニ(?)を握つてゐるのだといふことを改めて明確にされて、仮令聞かなくても分りきつたことだとしても、それはあまりにキツかつた。そんな方々が宇宙に興味持つ訣ないぢやん‥‥
でも、それはエラい人(あッ)だけの問題ではないんだよな。この日記で再三愚痴を垂れてゐる様に、例へば日本ではモータースポーツが根付かないといふ事実がある。技術競争の「お祭り」であるル・マン二十四時間レースに、日本のコンストラクターが毎年社運を掛けて挑戦してゐるのに誰も見向きもしない。数年前のテレビ放送では、ヨーロッパの弱小チームに「乗せてもらつた」日本人ドライバーの若造をヨイショして、上位を戦つた日本のコンストラクターなど存在しないかの様な扱ひをしてゐた。それが失敗だつたと悟ると、その後テレビ局はル・マンの放送を取り止めてしまつた。感情移入のために「日本人のうんてんしゅ」が必要といふ錯誤は、さて一体どのレベルから始まつてゐるだらうか。さういふ実例を既に知つてゐるだけに、まして宇宙開発の分野で日本がイニシアチブを取ることに誰が本腰を入れてくれるかを思つても、空しい気持になるばかりである。‥‥といふ空気が会場を満たしてゐたといへば、少しは内容が伝はるだらうか。
尚、八月四日に大阪・日本橋で「ロケットまつり外伝」が開催される由。興味ある人はぜひ参加してみては。詳細→DAICONmini7-ロケットまつり外伝in大阪


【イトカワ】小惑星探査機はやぶさ Part26【ISAS】に晒された。まあ、書いても問題なさげな(?)話題はスレッドの方で網羅されてんぢやないかしら。なんか u-to???.ac.jp(ミヤコとかウミとか)からアクセスがあつてビビッた。

  • 2007年07月11日 nobody 航空宇宙 科学振興 体制 予算 次世代への橋渡し. etc. まだ難問多そうか?.
  • 2007年07月10日 adramine ロケットまつり

庖丁砥いだ

ロケットまつりから帰つて、録画しておいたイギリスGPを観ながら庖丁を砥ぎ始めた。一年以上手入れせずにおいたから刃先がギザギザになつてゐて、葱を切るにも難儀する様になつた。
馴れない頃は、見た目綺麗に砥げたと思つても完全に刃を潰して絶対安全庖丁に仕上げてしまつたりしたものだが、流石に今回はさういふこともなく。験しに葱を切つてみたら、久しぶりに「トトトト」と切ることができて気持ち良かつた。今まで手前に引かないと切れなかつたもんな。葱は豆腐に掛けた上からしらすをまぶして美味しくいただいた。