宮本輝『道頓堀川』新潮文庫、1994年12月

道頓堀川 (新潮文庫)

道頓堀川 (新潮文庫)

■内容
昭和44年の大阪、両親を亡くし、喫茶店「リバー」の2階で暮らす大学生の邦彦と、道頓堀で生活する人々との関わりを描く。

■読後感
ここでは「泥の河」「蛍川」の主人公が少年であったのに対し、どこか翳のある大学生の主人公を中心に描いている。
前掲作品のような強烈な死の影は薄れているものの、まだ戦後の混乱を引きずっている世の中で、一旗あげようという活気や、反面で恵まれているとは言えない生活ぶり、毎日の生活に将来の希望を抱くことのできない状態が描かれた作品だった。
細かく丁寧に描いている印象があるが、個人的には前掲作品の方が場面ごとの描写が明確に心に残り好きだった。