波間の国のファウスト 感想(レビュー)

【波間の国のファウスト

〜Story〜

あの日、幼馴染たちと見上げた青空を、まだ覚えている。

若草つぐみが笑って手を振って。
早乙女凪が口を尖らせそっぽを向いて。
滝沢和彦がいつものように突っかかってきて。
そして、渚坂白亜が静かに微笑んだ。

置き去りにした過去が心を締めつける。
透明な硝子に映る空は変わらず青いのに、
その空の下にいた私たちは変わってしまった。

直島経済特区
経済を活性化させる特例法が敷かれ、
世界で最も資本の集まる島。
世界中の投資家たちが集まり、日々巨額の富が動く。
若者達は島唯一の学園へと通い、夢を競い合う。
金の前には全ての人が平等な世界。
富こそ至福と信じ創られた、ビジネスの楽園だ。

結城律也がこの地を離れて三年。
ロンドンの名門ファンド・ストラスバーグに勤めていた彼は、
この金の亡者たちの天国に帰ってきた。
特区最大のファンドマネージャー選抜試験に参加するために。
――たとえ幼馴染たちと喰らいあうことになろうとも。

あの日、微笑むあなたに問いかけた。

「だってさ、この世界は、カネが全てなんだろ?」
はじめはただ欲しかった。
「そうね。お金があれば、自分にないものを手に入れることができるわ。」
その言葉をただ無邪気に信じた。
皆で幸せになりたいと願って。

青空の下で聞いた言葉をまだ覚えている。
儲けて失って、失ったものを取り戻そうとして。
そうして失い続けるなら、はじめから無いのと同じこと。

『どれだけ稼げば、取り戻せますか?』

答える言葉は、今はもう無い。


【シナリオ】

経済をテーマにしたゲームで、それを中心に話が展開されるのでヒロインとのイチャラブはほとんどないです。

株などマネーゲームを取り扱った作品は、他のメディアだと珍しくもありませんがエロゲでは自分が知る限りではこれが初めて。

自分は経済についてよく知っているわけではないので、シナリオの何割かは理解できてないと思いますがそんな自分でも十分楽しむことができました。

リアルタイムでの市場の緊張感とかよくわからないなりに熱くて面白かったです。

そして読んでると自分が頭良くなった気になる(

【CG】

若干崩れてるなと思うようなものもありますが、期待してなかったから気にしない(

【キャラ】

この作品は、ヒロインの魅力の見せ方に「ビジネスをやる理由やその姿勢」といった珍しい要素を使っています。
幼馴染キャラ全員理由や姿勢がすごく感動できてよかった;;

【音楽】

BGMが一部クールでかっこよくて(意味不明)よかった。
OPは鳥肌が立つ。

【システム・演出】

選択肢なんてなかった(
シナリオが1本道は賛否両論あるみたいだけど、シナリオゲーだしこれで良かったと思う。

あと金融用語などが会話に出てくるのに、作品中に用語説明がないので人によってはグーグルなどで調べないといけないかも。

【総合】

bitterdrop」さん処女作「波間の国のファウスト
処女作なのにこのような未開拓なジャンルに挑戦し、特殊経済圏における私たちの絆買い戻しADVという名に恥じないシナリオを書き上げた作品にしたことはすごく評価されるべきことだと思います。
おすすめはもちろん経済系を好きな人ですが、このようなジャンルをやったことがないという人にも是非やってもらいたいです。

【総合評価】

B (ABCDEの五段階評価)

これは金と絆の物語。特殊経済圏における私たちの絆買い戻しADV「波間の国のファウスト」〜bitterdrop〜