2005年。フランス。
パリに暮らす31歳のロマンは、売れっ子の写真家だったが、ある日、癌で余命3ヶ月と診断される。
そのことを両親や姉にも言えない彼は、真っ先に一人暮らしの祖母に打ち明ける。
「どうして、私なの?」と訊ねる祖母に対し、彼は「ぼくとおばあちゃんには共通点がある。もう長くない、ということ。」と応えて微笑み合う。
この映画でいちばん好きなシーンだ。
死にゆく人の心を本当に理解し安らぎを与えることができるのは、死にゆく人だけなのだろう。
祖母と一夜を過ごして、朝に別れた後も、彼の心は祖母とともにあるかのようだ。許せない人を許し、願う人の願いに応える日々を送り始める。
やがて彼は、生命に満ち溢れていた子供の頃の自分の幻影を見るようになる。そして、彼の血を受け継ぐ新しい生命を残して、子供の頃に遊んだ夏の海辺でひっそりと人生を閉じる。
それは、終わりゆく命と始まりつつある命が交錯する瞬間だ。