採尿スランプ

 猫の採尿をするってのはなかなか難しい。人間のように、「はい、今おしっこ出してね。このコップに入れてね」ってことができない。いつするかわからないし、なんせデリケートな動物なので、いたしているところをちょっかい出されようものなら、すぐやめてしまう。じっと見ているだけでもダメなこともある。さらにその採り方というのが、なかなかアカデミックなのである。
 動物病院でもらえるものはこんなのである。細い棒にうすっぺらい吸引抜群のモノがついている。ちっさい箒みたいな形。これを、猫がいたしている間に後ろから、サッ!っと股の間に入れ、吸引するのだ!タイミングが大事です。
 トイレに入って座った状態でも、まだ出てなければ、自分の股下にへんなモノを差し込まれては、誇り高き猫は、チッて感じでやめてしまう。例え「貴様!なにやっとんねん!」ってなっても、もうジャーとでている時という生理的弱点を狙わねばならない。さぞかし心の中では辱められていることだろう。そして、より正確な数値獲得のためには、できるだけ菌をつけないことが求められる。手で触ったり、猫砂につけたりをなるたけせず、尿だけにさらすテクニックも必要である。

 さて、上手いこと猫がジャーとしているその股の間にブツを仕込めたとして、次の難関は、ちゃんと的に当てなければならないということである。差し込めても、見当違いの所に置いていては全く意味がないのである。ではできるだけ多くの尿を吸引部に上手く当てるにはどうしたらよいのだろうか? 勘です。だいたいこのあたり。あとは、放尿時間が長い猫ならば、一度引き抜いてあ当たっているか確認することができるがこれはなかなか高度な技である。
 うちでいうと、ドキは比較的差し込むのも楽(ちょーちょーベリー気にする質ではない)だし、放尿が長いし、そしてそのシッティングスタイルも少し腰を上げ気味で差し込みやすい。が、ひっそりとトイレに座りいつの間にかいたしている場合が多く、気づかないのが難点である。ごいしは、する前から砂をかくので事前の準備はできるが、まあなんと忙しなく、一度座ったかと思ってもなんか座り具合が悪いとか、そわそわするんだとかでちょこまかして、こちらの差し込むタイミングが早すぎのことが多く、すぐやめてしまうし、そのブツを見るとおもちゃかと思って気がそがれちゃってなかなかジャーまでいかないし、さらに、砂上ギリギリぐらいに座るので差し込みづらいし、放尿時間も短めである。
 「よし!差し込めたぞ!」と思って引き抜いたら全然採れてなかったり、ちょこっとしか採れてなかったりしたときのがっかり感たるや言い尽くせない。一度失敗すればその日はほぼあきらめねばならないからだ。なぜ?それは次の難関に関係する。

 次の難関それは、時間帯である。今してくださいができないのであれば、こちらが猫様の生理現象に合わせるしかないのだ。しかしこちらも生活があるので平日であれば、朝の時間か夜の時間かしかない。しかし夜の時間といっても動物病院が開いている時間まで(大体19時)となるとほぼ絶望的である。それ以降の夜の時間に採って翌日の朝に持っていけばよいのではと思うがそれもだめなのである。尿は新鮮であればある程いいのだ。時間がたった尿は細菌検査で正確な数値は期待できない。細菌検査は膀胱炎などの指針になるのでとても重要だ。となれば、朝の時間がその一日の勝負なのである。そして猫も人間同様、眠りから覚めた朝にすることが多い。ただ、ご存知の方もいらっしゃるだろう、猫は朝がとにかく早いのである。
 うちの猫で言うと平均6時。それより早いことはざらである。トイレしに起きたりもするので、私はグースカ寝ていても、猫の砂をかくザッザッという音で跳び起きたりするのだ。でももうした後だったりして!(ドキの場合これが多い)。

 そしてもう一つの難関。猫の生理現象は一つではないのである。シッティングし、いたすその時までに見極めなければならない。しかし、これはこれまでの難関の中では簡単な方である。見分ける方法は二つ。(うちの)猫はビッグの時はスモールのときより、より興奮気味になるので、いたす前にえらい勢いで砂をかいてかいてかくのである。
 ザザザザザッザザザッザッザッザザザザザザザッッ!!!という具合。
 そして座るのであるが、そのスタイルも少し違う。より腰がアップ気味になり、身体も立て気味になる。ごいしにいたっては、片手があがり、出だすとどんどん立ち上がる。

 猫の新鮮な尿の採尿に必要な条件は、
  ・朝早く起きていつでもOKな状態でいる
  ・スモールであることを確認する
  ・絶妙なタイミングで差し込む
  ・的に当てる
 これらが全てかなってはじめて動物病院で検査ができるわけである。コツさえつかめばなんてことないはずであったのだが、今、私は猫の採尿スランプに陥っている。かれこれ2週間ぐらい・・・・。
 休みも朝起きて挑むがどうしても採れないのである!!!猫の健康のためだ。しかたがない。が、心の底からもうそろそろこのミッションを終了させたい。

 眠い。