よこみち珍道中 剣尾山編 第4話 指の間からこぼれ落ちていく砂のように、岩の上から転がり落ちる白い影

連休はいかがお過ごしでしたでしょうか、よこみちです。



母と一緒に動物園へ行こうと予定してたんですが、ニタローが風邪ぎみであおっパナを垂らしていたのであえなく延期。
家族の人数が増えると、こういう時の体調管理が難しくなりますね。



結局、世界的にも他の追随を許さない究極のぐだぐだアイテム、コタツの独壇場とあいなりました。
この半ば強制的な癒し、癒しの押し売りとでもいいましょうか、もし怠惰が罪であるのなら、真っ先に主に滅ぼされるであろう悪魔の道具。
よこみち一家の貴重な連休は、あわれそのイケニエとして捧げられたのであった。



何言ってるかよく判らない、って?



タツでぐだぐだ過ごした、ってことですよ!



さてさて、気分だけでもどっか行った気になりましょう。
よこみち珍道中、続きです。






剣尾山山頂の、大きな岩のうえに陣取ったよこみちとmark-na。
先客のおじいさんへの挨拶もそこそこに、さっそくガスストーブをとり出してお湯を沸かしはじめる。



山頂で見晴らしが良いということは、すなわち風をさえぎるものが何もないわけで。



さささ寒い。



日は照っているものの、冷たい風が容赦なく吹き付けてくる。



どんどん手がかじかんで。



いかん、もう一枚着よう。
富士山で活躍したレインウェアを取り出して、ウィンドブレイカーの上から羽織る。
だいぶマシだ。



朝、来しなに買ったカップラーメンを取り出すと。




低い山なのに、パッケージがいっちょ前に膨らんでる。
ちょっと登ったくらいやのに、気圧低いんやなぁ。



そうこうしてるうちに先客のおじいさんが席を立ったので、その特等席に移動するふたり。
お湯も沸いたので、カップに注いで。



いただきまーす!




冷たい風が吹き付けるなか、熱いラーメンを啜る。
目の前には低い山々と清々しい空。



くうぅ、ウマイ。



温かい、というだけでご馳走たりえるわけで。



山頂で食べるように買っておいた惣菜パンを、ラーメンの残り汁で流し込んで。



かあ。



ごちそうさま。



お腹も満たされ、のんきに景色を見ていると。




ガスストーブに金網をセットして、おもむろに白いものを炙りはじめるmark-na。



おモチだ。



「よこみち、そっちでお湯沸かしてくれへん?」



mark-naの手には、カップ汁粉が。



おぉ、おしるこ!



任しときな!
今日のお湯はホース臭くないぜ(懐かしいな)!




ちなみにmark-naの使っているガス器具は、スパイダーっていってボンベから五徳が離れているタイプなんだけど。



五徳からの熱でボンベが爆発するのを防ぐ、安全なガス器具らしい。
でもこれだけ寒いと、むしろ一体型のコンロのほうがボンベが温まって火力が安定するらしい。



といった解説をしながら、ボンベを手で温めたり、箸でモチを突いたりしているmark-na。



そのとき、悲劇は起こった。



あっ。



短い悲鳴とともに、金網から滑り落ちる白い影。



ああ!



モチが、網から落ち、岩のうえからも転がり落ちて。



かさっ



岩のしたに積もっていた落ち葉のうえに軟着陸。



必要以上にあわてるmark-naと、岩の上で笑い転げるよこみち。



運良く土もつかずに無事回収したモチを焼きながら、まだ笑い止まないよこみちを少し気まずそうに睨むmark-na。



こんな、何も起こりそうもない低山のハイキングですら、何かしらハプニングは起こるもんで。
それが、こんな笑い飛ばせる程度だったら大歓迎なんだけど。



この後ふたりに襲いかかる恐怖を、彼らはまだ知るよしもなかった。



続く。