「社外取締役ガイドライン」のちょっとずれた使い方

日弁連が2月14日に「社外取締役ガイドライン」を出しましたね。
簡単に言うと、社外取締役が就任から退任まで、どのような役割を果たし、どのような行動をとればよいのかについてのガイドラインです。


http://www.nichibenren.or.jp/library/ja/opinion/report/data/2013/guideline_130214.pdf


個人的には、取締役の善管注意義務の内容がコンパクトにまとまっていて、役員向けの社内研修資料作成に役に立つなあと思いました。
ガイドラインの「はじめに」に、法務パーソンには、社外取締役活用のヒントに活用してほしいなんて書いてありましたので、本来の目的からは逸脱した利用方法ですが。。。


取締役の義務を正確に・わかりやすく・もれなく整理した文献って意外とないので、役員向けの研修で結構苦慮します。


受講者は、善管注意義務、忠実義務、利益相反取引、利益供与、競業取引、内部統制システム構築義務、監視義務といった言葉だけご存知で、中身はさほど詳しくない方々。
要するに新聞は読んでるけど、法務担当役員ではないので詳しく知らないよってな感じです。


そんな方々に、バラバラと個々の義務を説明しても、わかりにくいことこの上なし。
頭に入らないですし、平板なので、寝てしまいます。
なので、これらの義務を何らかの形で整理して、流れができると、多少は聞いてくださります。


いろいろな整理の仕方があると思いますが、私はいろいろな義務を次のような感じで大きく2つに分けています。


レイヤー1が、善管注意義務・忠実義務、法令等遵守義務ですね。簡単に言うと、法令の範囲内で最善を尽くせと。
レイヤー2が、利益相反取引、利益供与、競業取引、内部統制システム構築義務、監視義務など。


その上で、レイヤー2の義務をレイヤー1の2つのいずれかで整理できると、話に流れができてわかりやすくなります。
ただ、これが難しい。
例えば、内部統制システム構築義務は、構築しなかったら、法令等遵守義務違反になると思いますが、システムを構築したけど実効性がなかったという場合は、善管注意義務違反でしょう。敢えて整理するなら、構築していることを前提に、善管注意義務に位置づけます。
監視義務は、善管注意義務の一つでしょう。このガイドブックにも明確に書いてあります。
利益相反取引の禁止や利益供与は、善管注意義務と決めつけるのはややためらいがありますね。法令等遵守義務ですかね。


まあ、こんな感じで、レイヤー2の義務を、レイヤー1の義務に対応させる形で整理するのは、困難・不可能なんですよね。


なので、研修では、


1.取締役の義務は、抽象的にいうと、法令の範囲内で最善を尽くせということで、これを善管注意義務・忠実義務、法令等遵守義務なんて言います。
2.これを具体的にすると、利益相反取引、利益供与、競業取引、内部統制システム構築義務、監視義務等があり、具体的には・・・


といった感じで、現状ではレイヤー1とレイヤー2を紐づけずに説明してます。もう少しわかりやすい整理ができるとよいのですが。


ガイドラインでは、善管注意義務がメインに書かれていて、私がもやもやしていることへの回答はありませんが、監視義務等を全うするためのチェックポイントが結構細かく書かれています。チェックポイントを見逃す=義務違反ですから、このチェックポイント自体を監視義務等の生々しい具体例として利用できますね。今度役員に研修するときにこの内容を盛り込んでみます。