夏月の海に囁く呪文

yomimaru2005-11-11

bk1

本当の自分の居場所に連れていってくれる呪文「なつのまもの」。穏やかに時が過ぎる夢久島で、呪文のバトンが紡ぐ物語は――イラストなしの連作短篇集。
能面を被りながら日々を送る高校2年生 修一と、島を訪れた23歳の女性 赤城さんとの出会いを描く第一話「能面の日々」ですが、ふたりの共鳴が エリオットひとりあそび(水樹和佳子) *2好きの私がハマる展開。二人の歳の差も、絶妙の配分。
第二話は女子大生、第三話は老人、第四話は犬と、ある意味で電撃文庫らしからぬ主人公が紡ぐちょっと哀しい物語には、イラストなしの装丁が良く合っています。かといってどのレーベルの雰囲気かというと――蛇と水と梔子の花(足塚鰯) *3と一緒に、末期の小説ジュニアかな? ちょっと違うような気もします。
物語の大半を占める第一話と第二話では泣かせにかかり、エピローグ「午前二時、明かりの灯るあの部屋にて」で小さなくすぐり、後味の良い人情咄を聞いたような印象でした。

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