ドラゴンキラーあります

著:海原育人 画:カズアキ C★NOVELSファンタジア*1

部隊全滅で戦場を後にして便利屋になった今でも原因のドラゴンキラーを思い出すと激しい頭痛に呵まれるココは、世間知らずのアルマを守るドラゴンキラー リリィを見ただけで興奮して気絶――命あっての物種ファンタジー、第3回C★NOVELS大賞特別賞受賞作。
冒頭の回想シーンはココの夢、起き抜けの野菜ジュースを呑みに行けばひったくりの腿を撃ち抜いて罵るウェイトレスに出逢い、と、何ともハードボイルドな展開。ココを含め、登場人物の誰も彼もがまずは自分の命を大切にして、《命知らず》の献身的活躍を見せるのは一人で万人規模の兵隊に匹敵するドラゴンキラーだけ、という首尾一貫した設定が絶妙。
一見ココのトラウマ解消モノのように見えますが、リリィが次第に本性を現し変化していくのを男の視点から描くヒロイン成長モノと見た方が良いかも。ココとの距離が狭まるにしたがって、口調や言い回しが皮肉っぽく乱暴に変わっていくところもいいです。考えてみれば、最初はしおらしい女依頼者が本性を現すと――の展開は、ハードボイルドの王道ですね。
冷静に考えると運良すぎかも、なんですが、節目節目でココが気絶してダメージを喰らうことで埋め合わせ、その間に事態が超変化、テンポ加速で最後まで展開にぐいぐい巻き込まれていく感じ。
二人の楽しい口喧嘩、銀河郵便シリーズ(大原まり子) *2みたいな感じで続篇が出るといいかも。お薦め。

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