ぐるぐる猿と歌う鳥

好奇心の赴くまま行動するおれ 高見森は、引越先の隣人 佐久間心に、不思議な少年パックの正体を尋ねるが、かつておれを助けてくれた少女あやの記憶が――社員寮の子供と大人の世界を彩るパワーゲームミステリ。
住む街も働く街もすべてが近接して会社の影響から離れられない息苦しさがひしひし伝わってきて、子供ならではの冒険、実は何てことのないガス抜きについた一息が気持ち良い。秘密を守れる子供の団結、ってところは、パックの正体とも相俟って夢幻的。
電脳コイル(宮村優子) *2で同じ読みの優子と勇子を区別するためにヤサコとイサコという呼び方をしますが、本作では森と心の同じ読みシンをミモリとココで区別。これが結末の謎解きに大きく効いてきます。
森の性格は思い込みが激しい猪突猛進タイプで、坊ちゃん(夏目漱石) *3的。とすると、思い出の少女あやは、坊ちゃんの唯一の理解者清に相当するのかも。そう考えると、東京に帰って清と一緒に暮らし、遺骨を自分が入る墓に入れた坊ちゃんの結末は、本作とどこか共通するような気が。
繊細な少年と直情径行な少年の組み合わせに目がない方に、是非お薦め。

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