人形の部屋

著:門井慶喜 画:八木美穂子 東京創元社*1

誕生日からいくらもたっていないのに娘 つばめの年齢を間違え、鋭く追及される父 敬典も、専業主夫生活がすっかり板につき、かつての同僚が壊したビスクドールに対する反応にも どこか余裕が――父と娘の壮大な蘊蓄ミステリ。
母親役の年上女性の影が薄い点も含めて、『舞田ひとみ11歳、ダンスときどき探偵』(歌野晶午) *2と登場人物の配置が似通っている本作ですが、その発想と会話が自分のペースなのか、大人のペースに合わせるのか、がひとみとつばめの最大の違い。そのためか、『舞田〜』では、ひとみが謎解きのきっかけになるんですが、本作ではつばめは主に良い聞き役に回っている感じ。
これだけ素直に父の蘊蓄に聞き入ってくれる娘って、希少価値かも。
聞き分けの良いはずのつばめが家出をする「お子様ランチで晩酌を」では、野球選手をやめて専業主夫になった父『ハンサム・ガール』(佐藤多佳子) *3にも似た、娘の忸怩たる思いが。よつばと!(あずまきよひこ) *4や『Papa told me』(榛野なな恵) *5のように、家事をしつつも仕事もきちんとやる父の方が、娘にとっては安心なのかもしれません。

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