神野悪五郎只今退散仕る

真っ昼間から舌長の妖怪に出会った度胸が売りの中学生 紫都子は、祖母の《昔の約束》を果たすため、頭は回るが怖がりの妹 妙子とともに、お化けが出る古屋敷で夏休みを過ごすことになるが――現世利益の宗教を装う妖怪に立ち向かえファンタジー
同じく異世界が重なる舞台設定の『カラクリ荘の異人たち〜もしくは賽河原町奇談〜』(霧島ケイ) *2との最大の違いは、男も恋も何のその、姉妹二人が自分の足で立つ姿。恋に狂った女の自意識過剰な妄執に立ち向かうのは、恋を知らない女の子、この構図に説得力。
登場人物の心情に寄り添わず、一定の距離を保った描写は、擬古的な文体と相俟って、抹香臭いのに見慣れない新鮮さがあります。斬夢剣を振り回して感想を述べた紫都子に、悪五郎が返す言葉が絶妙。
古風な世界観に現代のカタカナ言葉が突然登場するあたり、確かに『高丘親王航海記』(澁澤龍彦) *3に雰囲気が似ています。
出てきた設定が一気に収束するクライマックスは圧巻。お薦め。

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