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読丸電視行

本に遭っては本を読む活字中毒系プログラマー 読丸 の読書感想文日記です。    [総目次]    この日記をアンテナに追加    rss

2008/02/28 yom yom 6 - 講談社BOXが銀色箱を脱いだら

[][][][][][][] yom yom 6 / ヨムヨム2008年3月号  yom yom 6 / ヨムヨム2008年3月号を含むブックマーク

yom yom (ヨムヨム) 2008年 03月号 [雑誌]

特集「ファンタジー小説の楽しみ」の本号は、十二国記シリーズ短篇を含む3篇が特集作として掲載。

しゃばけシリーズひなのちよがみ」(畠中恵)は、綺麗になった彼女が外で活躍すると駄目男は嫉妬する、逆末摘花系といった感じ。『つくもがみ貸します』(畠中恵) *2が人に直接関わろうとしない妖怪の話なら、本作は、人を猫可愛がりし過ぎる妖怪の話です。

大学奇人変人を取材する豆新聞編集部の男を描く「或る失恋の記録」(森見登美彦)には、むさ苦しい大学生がフられる話ならお手のもの、の安定感がありました。

注目の短篇丕緒の鳥」(小野不由美)は、『月の影 影の海』(小野不由美) *3 *4陽子が慶王に登極する頃の話。御代を言祝ぐ射儀で使われる動く的「陶鵲」に懸けた職人気質は、新王に通じるのか。本人を知らない周囲の者や遠くの者が、特別な人に抱く勝手な虚像で自分を振り回してしまうあたりは、同じく掲載の「lie cylinder」(嶽本野ばら)も同じ趣向。

前王や「lie〜」のボルグと、陽子の差は、突然振りかかってきた自分のポジションを受け入れようとするか否か。人が育ってポジションにつくのではなく、ポジションが人を育てる*5、あとは育つ気が本人にあるか否かなのかもしれません。

やっぱり短篇じゃ物足りないので、講談社でも新潮社でもいいから、続きを!

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2008/02/27 BLOODLINK - そういえば2001年下半期ラ板大賞受賞作だった

[][][][] BLOODLINK 雪花〈上〉  BLOODLINK 雪花〈上〉を含むブックマーク

地蟲に感染した恋人カンナ(9)を救う手がかりを得るため奔走する和志(17)は、地蟲成虫と化した夏美が罪を犯す気配を感じ――3年半ぶりの新刊、衝撃の最終章開幕。

女の子同士のどろどろした感情の絡み合いも見処の一つのこのシリーズ、今巻も、沙由里と夏美の関係は勿論、毒のある女性が多数登場で、期待に違わぬ展開。男どもの「何も見えてなさ」加減がたまりません。

ここ数年で、この年齢差は当たり前になってしまった感のあるカンナと和志。シリーズ中では、『獣と神と人』*2観覧車前の告白の激しさ、『天使の幻影』*3の年相応のはしゃぎよう、と、様々な魅力を見せるカンナですが、今巻はいい大人にからかわれる姿がとてつもなく可愛い。

天使〜』が出るまでにも1年半待ちましたが、今巻は店頭で見るまで安心できませんでした。本章最終巻は4月刊行予定、絶版だった『果南の地』*4 *5も出る可能性あり、とのこと。とにかく続きが待ち遠しい。お薦め

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2008/02/24 ダンシング・ヴァニテイ - 郵便配達は三度ベルを鳴らす

[][][] ダンシング・ヴァニテイ  ダンシング・ヴァニテイを含むブックマーク

著:筒井康隆 オ:小池隆 新潮社*1

誰かが家の前で喧嘩していると言う妹におれは、とばっちりを受けないようみんなを奥の間に連れていけと命じるが――執拗に繰り返される反復記述の乱丁ならぬ乱調小説

誰かが家の前で喧嘩していると妹が言うシーンで始まる本作ですが、「魔法存在・誤配――筒井康隆ダンシング・ヴァニティ』論」(桜坂洋)/「新潮2008年3月号」*2を読むために手に取りました。『All You Need Is Kill』(桜坂洋) *3が、プレイヤーキャラクターが死ぬたびにリセット自動的に係る状況を描いているのに相当するとすれば、本作は、ノベルゲームで「ルートを間違えた!リセット!」で、最初に戻るような描き方。ところがこの反復記述、毎回テキストが異なるのです。

ノベルゲームの共通ルートテキストは何回も読むと飽きるせいか、既読スキップの機能がついているのが通例で、『All〜』でも、「既読部分」を大胆に省略する手法が取られていました。それに対して本作は、既読スキップができないノベルゲームで共通ルートテキストを何回読んでも飽きないようにするには――という課題を究極までつきつめたモノに相当します。

誰かが家の前で喧嘩していると妹が言う展開を頭に思い浮かべつつ、「魔法存在・誤配」と一緒にお薦めループモノの新技法に興味のある方は是非。

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2008/02/23 三千世界の星空 - お兄ちゃんと異世界から戻って4年が過ぎました

[][][][] 三千世界の星空 ヒーロー失業 三千世界の星空 ヒーローは失業中を含むブックマーク

著:吉野匠 画:むらかわみちお トクマ・ノベルEdge*1

幼い頃、異世界勇者となって現われたアメのお兄ちゃん 天人に助けられた記憶を持つ星空は、家も学校もままならない今、メールを出して助けを呼ぶが、天人は絶賛失業中で自分が助けてもらいたいくらい――不思議ちゃんの言うことは全部ホント ファンタジー

かつて好きだった女の子と同じ名前の発信人のスパムメールを貰うと一瞬どきっとするんですが、ヒーロー役の天人がヒロイン役の星空から貰ったメールもまさにそんな感じ。URLじゃなくて住所が書いてある、ってところが逆に怪しかったり。

日傘のお兄さん』(豊島ミホ) *2ロリコン男として追われるお兄さんも、幼馴染みに慕われる駄目男ですが、本作の天人は勇者として活躍できる分、まだ取り柄あり。

そんな彼ですが、勇者記憶は夢となり、幼い頃にアメで餌付けした彼女に再会して見れば、今は思い込みの激しいゴスロリ系。「命を狙われているの!」などと言われれば、たとえ異世界に行った記憶があったとしても、ちょっと引いちゃうかも。

お兄ちゃんとの逃避行では、体育会系の元気さで進む『日傘〜』の夏美に対して、本作の星空はサークラ系の押しで迫る感じ。お兄ちゃんへの思いはどちらも一途なのに、星空の方がアブナい感じがしちゃうのは、言動の怪しさよりも、お兄ちゃんの駄目さ加減をヒロイン現実的に判断しているかどうか、にありそうです。

2008/02/22 つくもがみ貸します - 貸し水着はOKなのに貸し褌が嫌なのは何故か

[][][][] つくもがみ貸します  つくもがみ貸しますを含むブックマーク

深川雑貨レンタル店「出雲屋」を営む義理の姉弟 お紅と青次が貸し出す品は、どれもこれも、由緒正しき百年モノの古道具――壁に耳あり大江戸ミステリー

お紅と青次が黙っていると、貸し出し先で見聞きしたことを喋り出す古道具付喪神たち。彼らのやっていることは、RFIDタグで移動履歴や購買履歴を追跡なんてのと似たようなことで、ある種プライバシーの侵害のはずなんですが、仕入れてくる情報が、女中や小間使い、社員や丁稚の噂話レベルなせいか、どうせいつかは外に漏れること、という感じであんまり罪がありません。

主人と下僕の間で会話が成立する場合、『ドラゴンキラーいっぱいあります』(海原育人) *2のように、主導権がいつの間にやら逆転しているところが見物の一つなんですが、本作の場合、お紅や青次と付喪神との間には、原則として会話は成立しません。自分に利するように相手を動かすゲームをやり続けているような感覚は、ちょっと新鮮でした。

お紅が探し求める蘇芳の君の行方が青次の心を惑わせ、と、三角関係匂わせつつ進む連作なんですが、勝手ロマンス(?)を思い描く男と、地に足をつけて物を考える女の差が面白い。絶妙のタイミングで飛び出すライトDV、お紅の闘魂ビンタもお薦め

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2008/02/21 BLACK BROOD BROTHERS - かつてクイーンと呼ばれた調停屋

[][][][] BLACK BROOD BROTHERS S 5  BLACK BROOD BROTHERS S 5を含むブックマーク

権力の絶頂からドン底生活に墜落したミミコ達は、初心にかえって人間吸血鬼調停屋を始めることにしたが、街の便利屋としていいように使われ――屋根があるのは幸せ日常コメディ

ラッキーチャンス!』(有沢まみず) *2ではテント、『いぬかみっ!』(有沢まみず) *3では橋の下、そして本作のビルの屋上の小屋、家を追い出された異能者のシチュエーションでは、「やっぱり金がないと困る」という価値観と「金がすべてじゃない」という価値観が激しく衝突します。

何のために仕事をするのか、食っていくためなのか、それとも――というテーマは、たとえば、南の島のベーシックインカム制を描く『サウスバウンド』(奥田英朗)の下巻*4や『エンデの島』(高任和夫) *5あたりと共通するかも。

都会生活ですっかり性根が汚れてしまっているせいか、人間だけが営む共同生活モノはどこか嘘臭く感じちゃうんですが、常人とは違う価値観を持つ存在自然にそこにいる設定だと、納得させられてしまう。こんなところにも、このジャンルの可能性があるんじゃないか、なんて思います。お薦め

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2008/02/19 倒立する塔の殺人 - 万華鏡の継ぎ目が綻びるとき

[][][][] 倒立する塔の殺人  倒立する塔の殺人を含むブックマーク

銃後で働く2つの女子校の生徒の間で廻し書きされる小説『倒立する塔の殺人』には、空襲で焼失したチャペルの中で亡くなった葎子の死、彼女親友杏子疎開の真相が――戦時下のミッションスクール、S《エス》の幻想ミステリー

話全体のナレーターである欣子の物事に大らかな様子は、ミッションスクールに紛れ込んだ異分子という点も含め、『マリア様がみてる』(今野緒雪) *2祐巳に似ています。

一方、作中作の登場人物でもある葎子、杏子小枝の三人は、戦時下の学生女工という泥臭い設定にもかかわらず、儚いというか幻想的というか。本人達は「エスなんて興味ない」と言ってはいるものの、程度の差こそあれ、やっぱりその傾向が感じ取れます。作中作中作の登場人物ミナモとナナも同趣向。物理トリックが人を狂わせるあたりに、何とも古典少女小説耽美さが。

本名は「律子」なのにわざわざ草冠をつけて「葎子」で署名する、とか、言及される詩や小説芸術に漂う退廃の匂い、とか、そういう小技も光ります。複数の少女人間関係を読み解く『リリカル・ミステリーシリーズ(友桐夏) *3や、蕗谷虹児世界が好きな方にお薦め

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2008/02/18 悪魔のミカタ666 - メガネは服の一部です、見せキャミです

[][][][] 悪魔のミカタ666 (5) モンストラムレッド  悪魔のミカタ666 (5) モンストラムレッドを含むブックマーク

イハナと同棲しつつも添い寝までの清い交際を始めたコウは、サクラとのけじめをつけようとするが、当のイハナがサクラとも付き合い続けよと願い――みこし祭で巫女(みこ)まくり、めがね祭で目が()まくりの、堕ちた偶像ハードボイルド

実の双子のイハナとサクラの間で戸惑うコウ、二重人格の綾と日奈の間で戸惑う小鳥遊、と、『魔女を忘れてる』(小林めぐみ) *2で菜穂・佐穂と付き合う朗人 同様、今巻のキャラ配置の基本コンセプトは、双子恋人を持つ苦しみのようです。

コウにせよ小鳥遊にせよ、いままでクールにきめていたはずなのに、突然オトコの欲望に目覚めてしまったり、相手を間違えて告白してしまったりと、何とも格好悪いことこの上なし。ダンディを気取っていても、痩せ我慢が見え見えで、《きれいな何かが壊れて》身近なキャラになったことで、好感度が急上昇。

鍵となる人物 ノットBについて考えてみれば、コウの後輩 洋平を上書きして作られたという意味でも、コウのコピー人格であるという意味でも、やはり《双子》。今のところの登場人物を見てみると、ノットBに翻弄されそうなのは、サクラに暗い情熱を抱くメイド レイなんですが、果たしてどうなるのか。

外界と眼球との間を遮断して目の働きを失わせるのか、でもサクラには影響が及ばないメガネ祭の謎も含めて、次巻が待ち遠しい。

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2008/02/17 留美のために - 人の制する所と為る、人の為に制せらる

[][][] 留美のために  留美のためにを含むブックマーク

留美と同時期に死んだ羽根木が綴った遺稿「紅玉の祈り」の読書会を開いたミステリーサークルの面々は、その中に秘められた重要「真実」に気付き――逝くサークルクラッシャー後を濁しまくりミステリー

『誰のための綾織』(飛鳥部勝則) *2 *3、『君のための物語』(水鏡希人) *4 *5に続き、題名が「〜のため〜」本。前2冊の「ため」は「for」に相当する意味合いなのに対し、本作の「ため」は、さらに、漢文における「為人所制」の「為」的な、受身における動作主体を表す意味も含んでいます。それでは留美は一体何をしたのか。

ファム・ファタルに喩えられる留美に翻弄されるサークルの男達なんですが、他にも女性メンバーにいるせいか、留美の執着のない等距離外交のせいか、本作当初のサークルの面々の繋がりには妙な安定感があります。

単純に使ったらバカミスと呼ばれそうな謎解きではあるのですが、作中作中作のようなメタな構造のせいでこちらの思考が全然違う方向に向けられてしまい、気付いてみれば見え見えの伏線がそこかしこに大胆にちりばめられています。呆然のお薦め

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2008/02/16 君のための物語 - 魔鏡の原理は反射、屈折、偏光のどれ?

[][][][] 君のための物語  君のための物語を含むブックマーク

著:水鏡希人 画:すみ兵 電撃文庫*1

独り身の寂しい夜、自殺しかけた女性を助けて川に落ちた私は、美しい青年レーイに助けられ、彼女の見舞いを受けることに――ワナビ脱落しかけの僕に現われた読者ストーリー、第14回電撃小説大賞金賞受賞作。

同じくワナビ小説で似た題名の『君だけの物語』(山本ひろし) *2と比べると、本作では「作家になること」そのものへの欲求や理由付けといった、本人内面の問題よりも、彼の周りで起きた事件や、その事件を綴った物語の影響に着目している感じ。小説家になれました体験記、みたいな。

壁井ユカコの評「何はなくとも、この本の素敵な第一章を読んでみてください。」にもある通り、助けた女性セリアと私とレーイの交流を描く第1章は、それだけで一つの話に綺麗にまとまっています。本書全体の中における第1章の位置付けは、『塩の街』(有川浩) *3と同じで、一番印象に残る断章が先頭に来ています。

そういえば、湿っぽい話が続いた後、ラストの章で雰囲気が電撃的に変わるとこも似てますね。

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2008/02/15 誰のための綾織 - ミステリと詰めると洒落たプロっぽい感じ?

[][][] 誰のための綾織  誰のための綾織を含むブックマーク

飛鳥部さんの生徒が書いたというミステリー『蛭女』の暫定稿を読んだ僕は、この作品がフェアか否か、実名のまま公開して良いものか悩み――あの女を愛し憎んだ女子高生の環形吸血ミステリー

自殺した瞳の友人であったが故に孤島に拉致され、“蛭女”の復讐を受けるモネ、由香里、智子ら。彼女たちの端正で歪んだ姿を読んで、『少女小説家は死なない!』(氷室冴子) *2に登場する28歳男の寄宿舎清純百合モノ作家が頭に浮かんできました。表紙もそれ系だし。

同じ同性愛系でも、『シロツメクサアカツメクサ』(森奈津子) *3とかとは、生々しさの方向性がちょっと違う感じ。腐敗か発酵か、のような差じゃなくて、素材をそのまま発酵させた納豆か、一旦加工してからさらに発酵させた豆腐餻(とうふよう)か、の差みたいな。

ミステリー談議で始まる本作、「原稿用紙千枚で説明される『死体が見えるはずなのに見損なっていた第一発見者』の話」の条には爆笑。すでに古典になりつつある作品を下敷きにしつつの捻りの数々には唖然呆然。飛鳥部と僕の最後の台詞には、木の杭で胸を突かれたような爽快感(?)があります。

小学校卒業文集アンジー/『はみだしっ子』(三原順) *4 *5イラストを描いていた女の子を思い出し、彼女の言動や雰囲気を重ねることで、『蛭女』に綴られるモネの心情がすっと心に入ってくる感じがしました。

タイトルが何とも凄い『堕天使拷問刑』*6も読んでみよう。

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2008/02/13 SFが読みたい! 2008年版 - 今日の早川さんでは紙葉くんが一押し

[][][] SFが読みたい! 2008年 SFが読みたい! 2008年版を含むブックマーク

昨年*2までと表紙の雰囲気ががらっと変わった*32008年版。

SFマガジン読者が選ぶベストSF 2007」では、投票者が1位から5位までに選んだ作品に得点10点〜6点を割り振って集計しています。

その結果の得点分布なんですが、国内は1位48点〜10位17点、海外は1位59点〜10位19点。つまり、

投票した読者の総数は、一体何人だったんだろう?

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2008/02/12 藤堂家はカミガカリ - レジ袋でもエコバックでもなく、買い物カゴが

[][][][] 藤堂家はカミガカリ  藤堂家はカミガカリを含むブックマーク

著:高遠豹介 画:油谷秀和 電撃文庫*1

親を亡くした春菜と周慈が二人だけで住む家に強引に住み込んだ神一郎と美琴目的は、何者かから周慈を守ることだった――子供の好物の定番ハンバーグ ストーリー、第14回電撃小説大賞銀賞受賞作。

設定的には、日本神話基調の神一郎と美琴外国神話基調の敵と戦う異能モノ、に見える本作ですが、実際のところは、孤独双子のもとに父親・母親/兄・姉/従兄・従姉がやってきたモノでした。

弱気な周慈に喧嘩を教えるのが美琴強気春菜を懐柔するのが炊事洗濯掃除担当する神一郎で、この役割分担が絶妙です。おさんどん青年を描いているところは超好み。

大根サラダは、余った刺身のツマを水洗い、フィッシュアーモンドをかけて最後にドレッシング、なんてのを作ることがよくありますが、神一郎が作るのは歯応えがありそうな千切りに海苔・鰹節版ですね。

擬似家族モノだけに、ハンバーグ重要な鍵にしているところがミソ。やっぱり家族は揃って食事をしないと!のお薦め

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2008/02/11 月光スイッチ - 晴れた日には白菜を干して餃子にしよう

[][][] 月光スイッチ  月光スイッチを含むブックマーク

出産で奥さん不在の1箇月半、セイちゃんと私の穏やかな偽新婚生活は、訳ありの住人ばかりのマンションで始まり――貸しビル業の3代目は料理好きストーリー

料理に関わるエッセイ小説から私の中のイメージが決まっちゃっている作家が何人かいます。たとえば東海林さだお*2昭和ホッピーの匂いがする貧乏性オヤジ系。島田雅彦*3はピカピカの輸入ステンレス包丁のセットを使いまくる気取り系。池波正太郎は五月蝿い外食派で自分では作れないんじゃないか、とか。実態と合致してない可能性は高いんですが。

料理記事がブログ*4で公開されるたびに、橋本紡dancyu*5系なのかな?なんて思ってたんですが、本作で、セイちゃんが柳宗理のボウルに言及しているのを見て、チェリーテラス*6系にイメージが固まってしまいました。バーミックスを使って料理しているかどうかはわからないんけど、パスタマシンはインペリアだろうな、とか。

コンビニでカップ麺代を立て替えてもらったことが切っ掛けで友人になる弥生さんのピクニックランチレシピ、バジリコスパの炭水化物をご飯に交換して乾燥トマトも追加しちゃうイタリア風炒飯にちょっと興味。今度プチトマトが安売りされてたら、干してみよう。

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2008/02/10 傷物語 こよみヴァンプ - 大きくて重いパンドラの箱は開くのが大変

[][][][] 傷物語 こよみヴァンプ  傷物語 こよみヴァンプを含むブックマーク

著:西尾維新 画:VOFAN 掲:KODANSHABOX MAGAZINE パンドラ Vol.1 2008 WINTER 講談社*1

弱味を作ることをおそれて友達を作らなかった暦は、彼に急接近する委員長キャラ翼から、金髪吸血鬼の噂を聴くが、噂をすれば影――残酷ホチキス彼女ひたぎに出会う『化物語』(西尾維新) *2 *3以前の阿良々木暦を描くバッドエンドストーリー。

吸血鬼キスショットがどうなるか、も、翼との関係がどうなるか、も、すでにわかっている状態で読み始めた本作は、何だか、『セラフィムスパイラル少年の檻〜』*4で、主人公暁人が幼馴染みの少女 紗月に飼われるバッドエンドをリプレイしているような感覚

万事に積極的で動じない翼と、押されまくりの純情エロ激ニブ少年暦の掛け合いも、楽しいことは楽しいんですが、暦と翼の関係の顛末がわかっているだけに、その明るさの中に一沫の寂しさを感じてしまいます。

自分の命を捧げる、とか、君に一生を縛られる、とか、互いに傷を舐めあおう、とか、そういう暦のロマンチックな態度は、実はできるだけ決断を先送りにしようというモラトリアムに過ぎないのかも。各ヒロイン達に暦が見せる明るいおバカな雰囲気と、吸血鬼に見せる何とも深刻で感傷的な雰囲気と、この2つのギャップは分離してしまった生クリームみたいで、妙にクセになります。

好きになっても実がない男の子なのに、やっぱり好きになってしまう、羽川翼の失恋ストーリーと思って、全話をもう一度読み返してみよう。

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2008/02/09 征服娘。 - マリアが囲う水夫に鶏鳴狗盗の技はあるか

[][][][] 征服娘。  征服娘。を含むブックマーク

富裕貴族の娘マリアは、男の添え物でしかない女の地位に飽き足らず、親友アッシャとともにドラヴィア共和国をその手にする野望を抱くが――少女が描く野望の王国ストーリー

東大生のエリート二人が日本を手に入れんと智力の限りを尽くす『野望の王国』(雁屋哲由起賢二) *2 *3舞台中世ファンタジー世界に、主人公貴族の娘とかつての王族今は奴隷の娘の二人にしたかのような本作、暴力装置を外部に求めるところも似ています。

すぐに誰かを殺すことに発想が及んでしまうところは、何ともスペード女王的というか残酷少女的というか。

しかるべき者が国王に名乗りをあげないなら私が、と、決意する『図南の翼』(小野不由美) *4 *5の珠晶と、この国を手にする、という希望を抱く点では似ていますが、本作では、馬鹿な兄より私の方が当主に相応わしい、と、動機がより身近な感じ。

自分の野望の実現を信じきれず、ハードルを下げそうになってしまうマリアとアッシャが、その弱さをどう克服していくか、次巻が楽しみです。

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2008/02/08 ライトノベルは終わったのか? - まだだ、まだ終わらんよ

[][][] ライトノベルは終わったのか?  ライトノベルは終わったのか?を含むブックマーク

ダヴィンチ 2008/03月号

ダ・ヴィンチ」3月号(『よつばと!』特集号) *1の次号予告によると、4月号(2008年3月6日発売号)の特集は、「ライトノベルは終わったのか?」。こんな内容の模様です。

そういえば、ソノラマ文庫の新刊ラインアップに谷山由紀が入ってる! と喜んだのは、今を去ること2年前でした。

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2008/02/07 ラッキーチャンス! - 作者渾身の爽やか系変態ついに登場

[][][][] ラッキーチャンス! 2  ラッキーチャンス! 2を含むブックマーク

前職 厄病神、現職 福の神キチの食い扶持のせいで何故かますます貧乏になっていく雅人。美少女ニノミーとの恋路の行く末に立ちはだかるのは――あまりに純情な二人、あまりに無知な一人のハッピー学園ラブコメ

キチが幸福を招来するための呪文が「雅人、大好き!」。男女合体時のオルゴンエネルギーによって事件を解決する『魔女でもステディ』(岬兄悟) *2にも似た、気恥ずかしい設定なんですが、展開を複雑にしているのが二之宮良子の存在です。

良子と雅人は健全高校生として両思い、雅人とキチは(血の繋がらない)兄妹として両思い、この三角関係をどう解決するのか。『生徒会の一存』(葵せきな) *3の鍵が陥ったのと同じ状況ですが、雅人には、二人とも幸せにするだけの甲斐性がありそうな感じ。

いぬかみっ!』(有沢まみず) *4啓太もそうでしたが、雅人も、誰も嫉まず誰も憎まず、粛々と貧乏を楽しむ心の余裕、女の子を大切にする男の子正義感を持ち合わせていて、数々の女の子が彼に惹かれるのにも、自然と得心させられます。

ピースがありがちに見えたとしても、その繋ぎ方やテンポが絶妙で、とにかく楽しい作品。お薦め

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2008/02/06 転生 - 侘び寂びとかけ離れたラマの金ピカのミイラ

[][][] 転生  転生を含むブックマーク

著:篠田節子 写:Glen Allison/gettyimages 講談社ノベルス*1

政府の意に染まぬ演説で暗殺されたパンチェンラマ十世は、金色ミイラにされた自身の体に転生して、モモと女の体を求めつつインド亡命へ向かうが――虐げられるチベット人を救う珍道中物語

通常は幼い男児に転生するパンチェンラマは、その肉体的限界から死を免れることはできないはず。ところが本作では、既に死んでいるミイラ(元の自分の体ですが)に転生したことで、不死身の体を得ることになってしまいます。行く先々では崇拝され、色ボケボケな行動をとってもすべてが許される超人状態。『ゴルゴ13』(さいとうたかを) *2犬神明『狼の紋章』(平井和正) *3か、といった感じです。

となると敵は当然、CIAKGBじゃなくて、中国公安当局や政府要人になるわけで、彼らがたくらむ陰謀が、さすが中国三千年、気宇壮大なことこの上なし。それを防ぐはパンチェンラマ、神出鬼没、自在如意の彼がとった作戦がまた爽快。

チベット問題には及び腰の日本マスコミもちょっとだけ活躍する、痛快娯楽作です。お薦め

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2008/02/05 千の剣の舞う空に - 江戸の仇を長崎で討つ生き方もあり

[][][][] 千の剣の舞う空に  千の剣の舞う空にを含むブックマーク

著:岡本タクヤ 画:柏餅よもぎ ファミ通文庫*1

空手で全国第3位にまで上りつめた僕は、交通事故で肩を痛め、世界最強になる夢を諦めてネットゲームに没頭し――最強になる瞬間を君に見ていて欲しいストーリー、第9回えんため大賞優秀賞受賞作。

怪我の後、自分より格下の相手に負け、自分の体が思い通りに動かないことに苛立って世界最強の夢から逃げ、すぐに空手を止めてしまった真一。彼がゲームに打ち込む姿には、野球部レギュラーとして活躍する実力を持ちながら本気になり切れずゲームにのめり込む『連射王』(川上稔) *2 *3をさらに先鋭化したような、鬼気迫るものを感じます。

スラムオンライン』(桜坂洋) *4では、ゲームにハマる理由を『げんしけん』(木尾士目) *5オタクはなろうとしてなるものではなく気付いたらなっているもの」流にさらりと流すことで、孤独な《達人》の闘いの風情を醸し出していますが、本作は、周りの人がいてこそ強くなれる《俗人》の戦いといった感じで、実は対照的な作品といえるかもしれません。

次作は後書より、格上の相手との組み手に逃げに回ってしかも負け、後悔するタクヤが逃げるのをやめて再度空手に挑む、王道熱血青春ストーリー希望

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2008/02/04 人を殺す、という仕事 - ああっ、神さまっ

[][][] 人を殺す、という仕事  人を殺す、という仕事を含むブックマーク

著:大石圭 写:Nikolaevish/photonica amanaimages 光文社文庫*1

見知らぬ《C》の指示に従ったことで飛行機事故を免れ、その命令を信頼するようになった僕に、少女を殺さなければ母が死ぬ、との新しい命令が――僕は石になりたかったはずなのに、暗黒ホラー小説

たとえば、『交換殺人には向かない夜』(東川篤哉) *2のように、殺してあげるかわりに殺せ、という契約はある種の等価交換のように見えますが、一方が役目を果たしてから他方が役目を果たすまでの間に利子が嵩むのが常道で、ちょうどトイチで金を借りるのと同じ。

一方本作は、勝手に金を振り込んでおきながら返済遅延金を要求する押し貸しに相当する感じ。人を殺す代償が身内が殺されないことで、自分をごまかす言い訳がしやすく、そのごまかしが僕の中の黒いモノを生じさせてしまうところが悪質。

ミステリーサスペンスホラーを比べると、話にオチがついたときに説明し切れない何かがどれだけ残っているかが違うんだな、と実感させられました。

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2008/02/03 バカとテストと召喚獣 3.5 - 男は弱し、美少女は強し

[][][][] バカとテスト召喚獣 3.5  バカとテストと召喚獣 3.5を含むブックマーク

著:井上堅二 画:葉賀ユイ ファミ通文庫*1

明久を巡る美波と瑞希の争いに思わぬ伏兵葉月、惜しみなく雄二を襲う恐怖の幼馴染み翔子、そんな彼女達の背後に迫るは美少女最大の敵、演劇部の正ヒロイン秀吉――テストも召喚もないエクスプロージョンストーリー短篇集。

フルメタ』(賀東招二) *2、『伝勇伝』(鏡貴也) *3風の聖痕』(山門敬弘) *4等、富士見ファンタジア文庫シリーズは、短篇長篇世界の明るさ暗さのコントラストを極立たせるのが一般的ですが、本作も、暗さの原因であるテスト召喚獣を除去した短篇集。

もっとも、ストーリーの基調は他の巻とほとんど変わらず、明るい基調。これはおそらく、登場人物の《異能》に、重苦しい戦いとか使命とかの世界観を持ち込んでいないからでしょうか。

あまりに綺麗な双子の弟 秀吉を持ってしまった姉 優子の悩みは、女装が似合う従兄 涼音に悩まされる藤くん/『前略ミルクハウス』(川原由美子) *5 *6よりも深いものかもしれません。

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2008/02/01 パンドラの火花 - のび太は結局のび太なのか

[][][] パンドラの火花  パンドラの火花を含むブックマーク

著:黒武洋 画:西口史郎 新潮文庫*1

死刑の執行を免れるには、犯行以前の過去に戻って「ある人物」を説得し、凶行そのものを未然に防がなければならない――72時間限定の説得クライムサスペンス

数十年の刑務所生活の果てにタイムマシンに乗って過去に戻り、問題が起きるのを未然に防ぐ、と、重いテーマの本作。ですが、その基本は、『ドラえもん』(藤子・F・不二雄) *2夏休み宿題をやるためにのび太未来の自分を連れてきたり、過去の自分に説教したりする話を思い出します。

『いつか陽のあたる場所で』(乃南アサ) *3での刑期満了後の女囚の姿や本作の死刑囚の様子を見ていると、一線を超えてしまうと更生したのかどうか、自分でも分からなくなってしまうのかも。

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