転生

著:篠田節子 写:Glen Allison/gettyimages 講談社ノベルス*1

政府の意に染まぬ演説で暗殺されたパンチェンラマ十世は、金色のミイラにされた自身の体に転生して、モモと女の体を求めつつインド亡命へ向かうが――虐げられるチベット人を救う珍道中物語。
通常は幼い男児に転生するパンチェンラマは、その肉体的限界から死を免れることはできないはず。ところが本作では、既に死んでいるミイラ(元の自分の体ですが)に転生したことで、不死身の体を得ることになってしまいます。行く先々では崇拝され、色ボケ欲ボケな行動をとってもすべてが許される超人状態。『ゴルゴ13』(さいとうたかを) *2犬神明『狼の紋章』(平井和正) *3か、といった感じです。
となると敵は当然、CIAやKGBじゃなくて、中国公安当局や政府要人になるわけで、彼らがたくらむ陰謀が、さすが中国三千年、気宇壮大なことこの上なし。それを防ぐはパンチェンラマ、神出鬼没、自在如意の彼がとった作戦がまた爽快。
チベット問題には及び腰の日本マスコミもちょっとだけ活躍する、痛快娯楽作です。お薦め。

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