アンゲルゼ 孵らぬ者たちの箱庭

天使の桎梏 壊してみたい いつか ソレソレ

天使との戦いが続く中、父母を亡くし叔母に育てられた陽菜が、目立たぬよう暮らす学校生活の重圧から逃れることができるのは、森の奥の「マリア」の前で歌を歌うとき――残酷な天使が人の心を壊すエンジェリック・ファンタジー
同じく天使が人間世界をさいなむ『殺×愛』(風見周) *2シリーズの見処は、甘い覚悟が周りの人々を不幸にし、その罪に陶酔する主人公 密の爛れた性根かと思うんですが、本作はといえば、出る杭は打たれるどんぐりの背比べ集団の中での圧迫感、仲良し三人組だった女の子の友情がちょっとした抜け駆けで一気に瓦解するときに、彼女たちが抱く暗くて醜い感情。絶品です。
見ていて苛々するところは『カラミティナイト』(高瀬彼方) *3の智美も同じなんですが、彼女は既に孤立しているのに対して、陽菜は孤立するかしないか、ちょうど塀の上に立っているところ。陽菜の息苦しさは、足がすくんで進むに進めず戻るに戻れず、塀から落ちてしまえば楽になれる、そういう感じ。
嫌味な軍人 敷島、陽菜に苛々する幼馴染み 覚野、後先考えない馬鹿 湊と、一癖も二癖もある男性陣もなかなか。女に頼ることも男に頼ることもできない陽菜の状況が次巻でどう変わるのか。お薦め。

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