葉桜が来た夏

嘘をつくときの仕草は男17通り、女20通り

異星人アポストリの宇宙船墜落を端緒とした戦争も終結し、二種共存特区となった琵琶湖付近で彼らに反発しつつ暮らす学は、葉桜と名乗るアポストリと共棲することになるが――序章は自衛隊モノの第14回電撃小説大賞選考委員奨励賞受賞作。
友好から始まり沖縄が《特区》となる『あそびにいくヨ!』(神野オキナ) *2では、異星人の少女エリスと地球人の少年 騎央は最初から仲がいいわけですが、戦争から始まり彦根が《特区》となる本作では、二人の仲も反発から始まります。
『あそびに〜』が友好ムードを基調とするのに対し、本作は、吸血鬼との戦争の傷跡もまだ癒えない《特区》を舞台にした『BLACK BLOOD BROTHERS』(あざの耕平) *3に雰囲気が似ているかも。もっとも、人間側代表を見てみると、『B.B.B』のミミコと本作の学では、相手をどれだけ知ろうとしているか、その根本的な姿勢が違います。
とある事情でアポストリ全般を憎むようになった学に欠けているのは、目的に近付くために必要な情報を収拾する姿勢。『失敗の本質―日本軍の組織論的研究』(戸部良一他) *4に掲げられる理由を、まさに個人で実行している、そんな感じ。
学が武骨系で葉桜が口煩さ系なせいか、耽美なはずの設定も妙にサワやかな感じ。次は、美少年と共棲するボーイッシュなアポストリの組み合わせがいいな。

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