雪螳螂

斧よりも剣を選んだ雪蟷螂
著:紅玉いづき 画:岩城拓郎 電撃文庫*1

和平のため敵族に嫁ぐアルテシア、彼女の影武者ルイ、停戦交渉を成功させたロージア。ファルビエ族の女達は、想い人を喰らうほどに愛して――相手を噛むのはコトの前か後か、人食い譚第三弾。
優れた剣の使い手が自分の心の奥底を最も見つめることができるのは、相手と剣で戦っているとき。『神のみぞ知るセカイ』(若木民喜) *2春日楠篇でも言及されていた通り、久しぶりで「勝負して勝つのが落ちる条件」系を読んだような気がします。
当初はアルテシアにルイが献身的に尽くす話か、と思っていたら、思わぬ急展開。アルテシアの見せ場を食ってしまう大活躍で、本人が死んだ後の『影武者』(黒澤明) *3モノというよりは、本人が生きたままの『幻に心もそぞろ狂おしのわれら将門』(清水邦夫) *4系かも。
三者三様とはいいつつも、雪螳螂と称される激しい愛し方をそれぞれに、この長さで必要十分に描き切ったお薦め。三部作の中では一番好きかも。

><