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読丸電視行

本に遭っては本を読む活字中毒系プログラマー 読丸 の読書感想文日記です。    [総目次]    この日記をアンテナに追加    rss

2009/09/30 逆理の魔女 - 裾を巻き込んでちょうちんブルマにするが吉

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裾を巻き込んでちょうちんブルマにするが吉

眼帯の魔女 雨杯の手伝いをすることになった怪異を映す右目を持つマシロだが、空白の姉 ソラが二人の間に殴り込み――巻き込まれたのは誰?ファンタジー、第8回スーパーダッシュ小説新人賞佳作受賞作。

冒頭こそ不思議少女 雨杯がマシロを戦いに巻き込む展開ですが、ソラが出てきてからは、姉弟に雨杯が巻き込まれる展開。基本的にはマシロ視点で話が進みますが、実質的な主人公は、二人に振り回される雨杯。

風の聖痕』(山門敬弘) *2の綾乃が雨杯に相当するとすれば、和麻の力を根こそぎなくして、彼の達観をマシロに、傍若無人をソラに割り当てたような感じ。姉弟の人格は基本的に完成し切っちゃっているので、雨杯の成長ストーリーとして読むのが正しそう。

知能よりは勢いと力技で攻めるスーパー高校生って、『究極超人あ〜る』(ゆうきまさみ) *3鳥坂センパイや『悪魔のミカタ』(うえお久光) *4部長のように男なのが当たり前と思ってましたが、ソラのように女の子にするのも、これはこれでいいですね。

2009/09/29 絶対女王にゃー様 - 昔にゃんにゃん今はにゃー

[][][][] 絶対女王にゃー様  絶対女王にゃー様を含むブックマーク

昔にゃんにゃん今はにゃー

登校拒否の香苗の部屋を訪れるたびに苛つく優等生 輪玖は、彼女ブラウザ履歴からエロサイトらしき「にゃー様の宮殿」を知り――嘘だらけのチャット自慰キーボードが濡れるかモノ。

昨日の『少年少女飛行倶楽部』(加納朋子) *2と同じく中学生が主要登場人物の本作ですが、面倒を見なきゃいけない幼馴染みの面倒臭さ、気になる女の子に対するドロドロした妄想、爽やかなだけじゃない中学生男子の暗黒面が超リアル

ボイスチャットと見た目が同じ表記になってしまうキーボードチャット。本作では、誤字を使って興奮の度合を見せる工夫で、他人のセックスを見たときの間抜けさ加減がひしひし伝わってきて、妙な臨場感があります。でも実際にやるとしたら、片手タッチタイプ入力じゃないと、タイミングを逸するような気がする。

にゃー様の正体は香苗なのか、高校の推薦を輪玖と競い合う結華なのか。《恋に恋する》と同じで、エロ妄想のうちが華なのかも。

各章結末の《おさまりの悪さ》も後を引きます。次巻が楽しみ。

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2009/09/28 少年少女飛行倶楽部 - ベランダに宙釣りになったお月様の話

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ベランダに宙釣りになったお月様の話

幼馴染 樹絵里に誘われて飛行クラブに入部した海月は、変人部長 神に怒りの感情の高まりを覚えつつも、持ち前の貧乏性からいつの間にか世話役を担うようになり――何かを飛ばすのではなく、自分自身が空を飛ぶための青春小説

情報通で性格が悪い「イライザ」こと良子、トロくて甘ったれな樹絵里、苦労性でついつい面倒を見てあげちゃう海月、三人の感情のもつれ合いを見ていると、女社会の社交の発展度合は中学1年でも超高度。

それに比べて、部長の神や、野球から離れた中村球児の男性陣の単純明解爽快なこと。自分が中一だった頃を思い返すと、もっとドロドロした感情も抱いていたように記憶していますが、そういうところは女の子視点だと見えないのかも。

もう一人の部員 朋は、その名前の読み方のインパクトがすごい。最終話「テイク・オフ」のクライマックスをこの名前で読むと、『一千一秒物語』(稲垣足穂) *2の中の一話みたい。

男の子が主人公だと、人が乗れる飛行機を作る『わんぱく天国』(さとうさとる) *3や『雲のむこう、約束の場所』(新海誠) *4の方向についつい進んでしまいそうなところですが、本作の場合、女の子が語り手なこともあってか、「何らかの手段で飛べればそれでいい」という割り切りがあるところが妙に新鮮。

アルバイトもできない中学生が、どうお金を稼いでどう空を飛ぶのか、確かにこれなら実現しそうな、リアルな飛行譚。お薦め

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2009/09/26 宇宙暮らしのススメ - アクシズ良いとこ、モウサに住もう

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アクシズ良いとこ、モウサに住もう
宇宙暮らしのススメ

宇宙ってどんなところで何が起きる? 地球の外にすむならどこがいい?――人類が揺り籠を出る第一歩の小惑星移住計画。

学習まんがの匂い漂う『まんがサイエンス』(あさりよしとお) *2のような本なのかな、と、手にとったのですが、想定読者の年齢層がかなり広範な感じのする語り口。

軌道エレベーターを批判しようとして計算を始めてはみたものの、意外に役立つかも、なんて結論に至る展開は、「学習まんがシリーズ*3 *4のやっ太とデキッコナイスの掛け合いを一人でやっているかのような感じです。

一旦小惑星に移住してしまった後は、小惑星の間の行き来は蒸気機関で十分、とのこと。太陽光を鏡で集め、ボイラーで水を熱して水蒸気で推進する宇宙船。果たしてこれはスチームパンクなのか。

地球を出るためのロケット構造を学ぶ『まんが〜』と一緒にどうぞ。

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2009/09/20 ヴァンパイアノイズム - スッポンの生き血は酒で割る

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スッポンの生き血は酒で割る

伊達眼鏡の萩生を街角で見掛けた僕は、彼女がいかにも自殺しそうな場所を巡り巡っていることに気付き――死は怖いか不死は怖いかラブストーリー

日々をつまらなく暮らす《僕》の人生のつまらなさ加減が極立つ冒頭の本作、吸血鬼になりたい彼女を手伝う展開なんですが、冒頭の《つまらなさ》が、不死を手に入れた吸血鬼の《退屈》を暗示しているみたい。

そういう風に読むと、本作は、退屈から抜け出すために儀式を行って、死に対する怖れを取り戻す構成にも見えてきます。この構成、基本設定とまるっきり正反対になっているのが面白い。

同じ作者の『ぷりるん。〜特殊相対性幸福論序説〜』*2ハーレム系の日常が痛々しくも壊れていく話でしたが、本作で《僕》を囲む女の子は三人。

ところが本作の場合、幼馴染みの詩歌やクラスの変わり者美人 小野塚への指向はあくまで仄かで、一直線に萩生ルートに進んでいて、確かに青春!なラブストーリーでした。

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2009/09/18 九月の恋と出会うまで - アニメのフィギュアが部屋にあるサラリーマ

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同じ建物に住むサラリーマン平野との無愛想な出会いを、いつものように熊のぬいぐるみに語りかけた志織は、《未来平野》からの声をエアコン穴から聞き――ロクサーヌはいつシラノに気付くのか時空を超えるラブストーリー

街角風景一眼レフモノクロフィルムに撮影するのが趣味の志織。引越しの原因は、現像の薬品の匂いで、高校時代の部室棟の写真部のあの酸っぱい匂いを思い出しました。

シラノこと未来平野から、毎週水曜日自分尾行して欲しい、と依頼され、それに従って行く先々の平野を撮影することになるのですが、後半ではカメラを巡るエピソードが殆どなし。彼女キャラを立てる必要がなくなったからかもしれません。

男の子なら、たとえば『ある日、爆弾が落ちてきて』(古橋秀之) *2みたいに、時間がずれた女の子から話を聞かされてもすぐに信じそう。一方本作では、男と女の役割が逆。

時空を超えた会話には納得できないものを感じつつ、ぬいぐるみが喋るという不思議事態にはすぐ適応できちゃう女性、というのは、確かにそうかも。

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2009/09/17 オオカミさんとスピンオフ - 笠地蔵が食糧を不法投棄

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笠地蔵が食糧を不法投棄

貞操観念強過ぎ少女の地蔵亜美、見た目はおっさん球児の花咲仁、このカップルむずがゆい日常――ちょっと変わった二人のちょっと枯れた恋愛譚。

6人娘の末っ子として育てられ、男運のない姉たちの教育のおかげで、男が苦手で奥手で、女の子としての魅力を発揮することに躊躇する性格に育ってしまった地蔵さん。そんな彼女ですが、一旦恋に落ちた後は、異常なハイテンション、変な意味で行動力があり過ぎ。

一方のピッチャー花咲も、『ドカベン』(水島新司) *2の剛速球投手 土門剛介*3を思わせる風格の持ち主。枯れたようでいて、性衝動昇華させる技に長けているところがいい。

二人ともかなりの《変人》なので、羨ましい、というよりは、見守っていきたい、とか、観察していきたい、とか、そんな感じになります。

このシリーズの前巻*4で化けの皮を剥がれた腹黒ロリ宇佐見は、地蔵さんの親友にして相談相手。腹黒な割には、意外に面倒見が良い、というか、情に厚いところが良い。熱い友情を見せてくれます。悪役が友情パンチで好敵手に、の展開が好きな方にお薦め

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2009/09/16 浜村渚の計算ノート - ♪逃げてゆく黒いπ それともi

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♪逃げてゆく黒いπ それともi
著:青柳碧人 画:桐野壱 講談社Birth*1

数学義務教育から外したことに反抗して、天才数学者率いる「黒い三角定規」は数学テロを開始。学校勉強しないにもかかわらず数学が好きの女子中学生 渚は、警察に協力して、彼らの行動原理推理する――数学は役に立たないのかサスペンス

同じく天才数学少女が登場する『数学ガール』(結城浩) *2との最大の違いは、登場人物に数学嫌いがいるかどうか。本作の場合、敵と渚以外は全員数学嫌い、と、実に徹底しています。

「0÷4は0、では4÷0は?」との問いに対する登場人物の答えも、『数学ガール』の世界ではおよそ考えられない間違え方。このあたりに、作者の学習塾での経験が感じられます。

渚が持つ数学の知識は、雑誌でいえば「数学セミナー」級で、さらりとバーゼル問題が出てくるあたり、『数学ガール』の《僕》よりは上、ミルカさんと《僕》の間ぐらいでしょうか。

今巻のテーマは、四色問題、0による割算、フィボナッチ数、π。警察の面々の反応を見ていると、虚数単位iや自然対数の底eなんかの話題をとりあげるのはかなり難しそう。どういう話題で攻めるのか、次巻が楽しみです。

数学が嫌いな人がこれを読んでも、果たして数学が好きになるかどうかはちょっと謎ですが、学習指導要領円周率はおよそ3」に愕然とした方なら、お薦め

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2009/09/14 私立!三十三間堂学院 - 花泥棒は罪になる

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花泥棒は罪になる
著:佐藤ケイ 画:かみやまねき 電撃文庫*1

法行をベースに任命して音楽祭に出場しようと画策するギターの元天才 まこ は、元ドラマー 蕾花をバンドに誘うが、蕾花にはスティックを取らない理由が――何故ギターを選んだのか軽音楽モノ。

今巻は、法行を巡る権謀術数というよりは、『さよならピアノソナタ』(杉井光) *2から恋愛分をすべて除去したかのような、完全なるバンド結成ストーリー

この作者の作品には、テーマにしたジャンル蘊蓄を熱く語る傾向があります。本作の場合にも、乱舞するテクニカルタームリズム感が、躍動する蕾花の心理にうまくマッチしている感じ。

音楽の実力だけでCDを3000枚売ったらプロデビューを認める、という父親に挑戦して、見事負けた経験を持つ まこ。その挫折が、彼女の芯の強さを形作っていて、『さよなら〜』のヒロイン真冬の《弱さ》とは対照的です。

トラウマ解消ストーリーに落とし込まなかった展開が超好み。法行は最早どうでも良くなってきた今、女の子の友情分を欲する人にお薦め

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2009/09/10 敵は海賊・短篇版 - HALもラジェンドラもトチローも男

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HALもラジェンドラもトチローも男

海賊刑事ラテルは、叔父が失踪したと訴える少女デートするよう命ぜられるが、同行した猫型宇宙人の同僚アプロの悪口に悩まされ――インターセプターかエシュロンSF短篇集。

表題作「敵は海賊」は、ラテルとアプロが男同士喧嘩し合いながら謎を追うサスペンス展開。ヒロインとの恋愛が絡まないストーリーを読んだのは、何だか久し振り。モテ非モテを気にせずにいた頃の男子校部活動時代に引き戻されるようで、回春された感。

海賊マーゴが駄目男に惹かれてしまう「わが名はジュディ、文句あるか」は、一応は色恋の話なんですが、マーゴによるマーゴ自身の分析が冷静沈着で、「LOVE寄せ」な感じはゼロ

かつて表題作と同じ頃に読んだ『銀河郵便は“愛”を運ぶ』(大原まり子) *2では、冴えない郵便配達員イルと男女可変セクサロイドラムジーの二人の距離感ホモっぽさにやきもきするのが楽しかったんですが、ラテルとアプロには、そういう匂いを感じません。

今となってみると、恋愛サービスが一切されないというのも、それはそれで清涼で、気分が良いですね。お薦め

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2009/09/09 ピクシー・ワークス - ピクシー製の下着は体に超フィット

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ピクシー製の下着は体に超フィット
著:南井大介 画:バーニア600 電撃文庫*1

小型ロケット打ち上げに部費を使い込んだ天文部の芹香・奈緒子千鶴は、会計検査で目をつぶってもらうかわりに、生徒会副会長 由衣の監視の下、戦闘機の修理をすることに――飛翔体の夏、青春白書

空を飛びたいというヴァルトローテの願いを叶えるため、天才問題児集団が17歳の夏休みをかける本作の設定は、『なつのロケット』(あさりよしとお) *2や『ロケットの夏*3寄り。『雲のむこう、約束の場所』(新海誠) *4で、サユリ飛行機にしてヒロキとタクヤが頑張る話、恋愛分すべてヌキ、みたいな感じ。

一応一人だけ生徒会書記 蓮が男の子として登場しますが、妙に枯れていて、恋愛分はほとんどなし。蓮に対する由衣の好意を利用して天文部の面々のマネージメントをさせるシーンがちょっと目立つぐらいで、あとはほとんど絡んできません。

少年ドラマシリーズ的な展開だと致命的なシーンでの対立と劇的な和解がつきものですが、本作の場合、誰もが自分の役割をかなり自覚している模様。修理した戦闘機を飛ばして軍隊に追い掛けられる、というハードな展開の割には、何だか『けいおん!』(かきふらい) *5のようなまったり感がありました。

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2009/09/08 探偵小説のためのインヴェンション「金剋木」 - アイルランド蕪

[][][][] 探偵小説のためのインヴェンション「金剋木」  探偵小説のためのインヴェンション「金剋木」を含むブックマーク

免許取り立ての諾子先輩の運転で山間のペンションに向かったあかねたちは、樹海廃校隔離された色白の兄妹達に出会い――いのち宇宙を支えるちからなんだミステリ

今回の相手は、冒頭からしてどう見ても吸血鬼。血のかわりに薔薇エキスで命をつなぐ耽美吸血鬼ポーの一族』(萩尾望都) *2 *3 *4で育った私には、本作の吸血鬼薔薇が苦手、という設定に驚き。吸血鬼を消滅させるための杭の材料として使われる山査子は、確かにバラ科でした。

シリーズの謎解きは、条件を論理パズル的に組み合わせる形式で、巻を追うごとに、前提条件の提示の整理の仕方がすっきりしてきています。第一の事件の解決は、特に衝撃的。言われてみれば確かにそうなんだけど、思い付きもしなかった《トリック》でした。

探偵役コモのザビ家ネタやコモの部下 保丞警部コロンボネタは健在の今巻ですが、何と中表紙イラストに「妄想もかるたもないけどガンバル☆」との台詞が。

個人的には、超爆走するあかね妄想や扁平胸に言及されると湧出する江戸っ子人格をかなり楽しみにしているので、五行相剋が一巡する次巻(最終巻なのかな?)では、是非復活を希望

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2009/09/06 神林長平+新世代作家トークショー - 雪風バビューン

[][][][][][] 神林長平+新世作家トークショー  神林長平+新世代作家トークショー を含むブックマーク

青山ブックセンターで開催された神林長平デビュー30周年記念イベントに行ってきました。

第一部は、「大学に入ってから読んだ」円城塔、「中高生で読み始め」桜坂洋、「雪風以外は作家になってから」辻村深月の三人が登壇。円城・辻村が作品から一歩引いた立場で見ているのに対して、作品にどっぷりつかった話題で攻める桜坂。一番多感な時期に、発行を待っては読む経験をしたかどうか、の差でしょうか。

作品論の桜坂読書体験論の辻村に、円城が突込みを入れる形式の鼎談にしたら、もっと引き締まったかも。

第二部は、「小松左京に大作家と呼ばれた男」神林長平の登場。小松よりも入稿が遅かったがためにこの栄誉(?)を得た神林、11月発行予定の『神林長平トリビュート』用の短篇(締切は8月末)がまだ書き上がっていない円城・桜坂の三人に対して、短篇脱稿済みの辻村。さすが、優等生の苦悩をテーマに書き続けているだけのことはある、という感じ。

突き詰めて考える、という話題では、零からみた雪風*2の姿は、機械から見たヒトの姿の裏返しになっている、とか、電脳空間内だけで生きるヒトの思考は、機械の思考そのもののはずだ、とか、『膚の下』(神林長平) *3 *4は、ヒトじゃなくて機械のためのバイブルのつもり、とか。プログラムデバッグのときに、言語処理系エラーメッセージを、機械の気持ちになって考えてあげている自分連想されて、超納得。

参加報告リンク集

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2009/09/03 幻竜苑事件 - 大家族は家父長のハーレム?

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大家族は家父長のハーレム

突然現れた少女 美樹に両親を殺した犯人を捕えるよう依頼された野上は、彼女無礼な態度に冷たく断りを入れるが、探偵志願の少年 俊介とともに彼女の周囲を探ることになり――男やもめは家族が欲しいミステリ

裁判官被告説教をする報道を耳にしたときに、果たしてその説教被告の心に通じるのか、何ともいえないもにょり感を感じることがあります。

一方の本作、火曜サスペンス劇場で言えば断崖の絶壁の告白シーンに相当するクライマックスでは、謎を解き明かした俊介犯人説教することになります。裁判官の場合と違って、犯人がそれを受け入れる様子にすとんと腑に落ちるところがあるのは、彼の身の上の不幸のせいか、それとも素直な性格のせいか。

そんな良い子 俊介保護者を自認する野上は、といえば、美樹やアキの会話でも、いい年をした大人がこれはどうか、という態度をとる始末。

前巻*2でも、性格に難有りの野上俊介やアキにモテることが最大の謎だな、と感じてはいたのですが、考え直してみると、野上の大人気のなさは、どんな相手とも対等に、相手の目線に合わせて振舞っていることになるのかも。

気配りのできる俊介、気は強いけど実は――なアキ、彼らに慕われる野上、《家族を作りたい》本シリーズの構図は、家長 野上を囲むハーレムものと見ることもできそうです。

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2009/09/02 創立!? 三ツ星生徒会 3 - トイレットペーパー飛び交うステージ

[][][][] 創立!? 三ツ星生徒会 3 それでも恋3は終われない  創立!? 三ツ星生徒会 3 それでも恋3は終われないを含むブックマーク

文化祭の開催が突然1箇月前倒しになって全校大混乱の中、陽菜に告白して玉砕した恵、鳥越との仲がギクシャクした陽菜、恵と金魚神が合体した仮の姿 水穂に想いを募らせるまどか――三者三様の恋模様コメディ

今巻では、女系家族の仲で育った恵が、服飾センスが欠落したまどかのために、デパートレクチャーするシーンが絶品。恋には不器用ながらも、落ち込む恵を気遣えるところに、好感度アップ。

会長の切札』(鷹見一幸) *2光明が智将なら、本作の恵はゆっくり調整型。一方のまどかは早急に智将型だし、この二人が引っ付いて、互いに補完し合う関係になるのが理想的じゃないかしら。

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2009/09/01 名前探しの放課後 - 下妻ジャスコにスタバあり

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同学年の誰かが自殺する3箇月先までの記憶とともにジャスコの屋上に戻ってきたいつかは、同級生のあすなや秀人らと、誰が自殺しそうか調査を始め――ファスト風土*3済みの千葉田舎サスペンス

犯した罪に対してどういう罰を与えるかを論理的に追求する展開の『ぼくのメジャースプーン』(辻村深月) *4に対して、本作は、誰がどう動いたら誰がどう動くかを緻密に推論する展開。

誰かの自殺を止めるため、真相を明かさずに周囲でお膳立てする、というやり方は、後で真相を聞かされたらちょっとムっとするところですが、結末では、このやり方と自因自果的な考えがうまく融合しています。

絢乃と別れて鶴田先輩とつき合おうと考えているいつかは、女に飽きっぽくて、本当の愛を知らないモテ男子。そんないつかが相談を持ち掛けるのがちょっと地味な文系女子のあすな。この冒頭からは、遊び人女の子献身真実の愛に目覚めるストーリーを予想したのですが、結末はまるっきり逆で、主人公は、いつかではなく、あすなと考えた方が良いかも。

子供の頃からずっと椿とつき合い続けている秀人の冷静さ・老成ぶりは、『古典部シリーズ』(米澤穂信) *5の敏志に似ていますが、秀人の方がひねていない感じ。伊原からの求愛を拒み続ける敏志とは人生経験が違う、ということかもしれません。

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文中、作家・評論家等の公人については敬称を略します。
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