TOKYO巡礼歌 唐獅子牡丹

文楽(人形浄瑠璃)と昭和の日本映画と麻雀漫画について書くブログ

マゾヒストMの肖像

天職と 万人に言われてみてえな 俺の麻雀も (字余り)
―――黒沢義明 心の俳句

賭博堕天録カイジ』9巻をやっと読み終わりました。しかし『天牌・外伝』10巻がまだ読み終われません。このままタラタラしていると新刊が出てしまいます。今週のゴラクもまだ読んでないし。

 アイデア ヤン・チヒョルト特集

『アイデア』(誠文堂新光社)最新号312号がヤン・チヒョルト特集だったので購入しました。¥2,970。
ヤン・チヒョルトは20世紀の偉大なるタイポグラファ(タイポグラフィのデザイナー)。最もモダンなローマン体、Sabonの設計者としても知られています。欧文タイポグラフィのアイドル的存在です。ああ、ちょうカッコイイ。彼はいつの日も私にベーシックでそれでいて新しくて美しいもののすばらしさを教えてくれる。


今回の特集のお気に入りは、別冊付録についている「&」記号のタイポグラフィ史における変遷。書体に関する歴史的考察などはデザインの必須知識ではありますが、こういったオプション的な活字の歴史もおもしろい。はっきり言ってただのタイポグラフィオタクの所業。最高です。
ところで、以前、少しだけ麻雀の牌活字の誕生のお話をうかがったことがあります。ただでさえ和文の装飾用書体(花形)は研究者が少ないようですが*1、生粋のタイポグラファや研究者などは牌活字なんて活字とも思っちゃいないだろうし、牌活字の歴史はタイポグラフィの歴史の闇に消えてゆくのでしょう。
個人的には、そもそも麻雀牌の図案の変遷に興味があります。ぱっと見て、数字が判別しやすいかと言われると、少々「う〜ん…」と思ってしまうところもありますが、数・量などの表記については独特で興味深いですね。牌そのものの美術品的価値より、その意匠のほうに興味がいってしまいます。



ところで、文字の美しさについてニヤニヤしているのは、はたから見れば、数式を見て「美しい…」とうっとりしている理系の研究者と同じくらい「あらカワイソウ…」なものに見えるのでしょうか。

*1:専門書は一応存在しています。見た事ある。

 ダイナマイトダンディ 地獄のワニ蔵

押川雲太朗 竹書房(2000?〜2003 近代麻雀オリジナル連載)
全5巻


『根こそぎフランケン』に登場する博打打ち・ワニ蔵こと庭野茂蔵を主人公とした外伝的漫画。主にギャグ漫画、兼・競技博打麻雀漫画…?。


┃あらすじ
前半:「モメごと大好き☆」なワニ蔵様がいろいろと暴れる話。以上。
後半:竹井ンとこのメンバー・田中くんがいろいろとがんばる話。以上。


個人的には、前半の、とにかくワニ蔵様が暴れる話が好き。ウハウハ教を潰すとか、チューレン君で殴打とか、とにかくムチャクチャでよい。ワニ蔵様が良家のご子息というのもよい。押川先生の絵のアレさ(失礼)がうまい方向にいった漫画だと思います。

後半の田中くんががんばる話もおもしろいのですが、破壊力はいまいち。
しかし、田中くんの、澄み切った…そして狂気を孕んだ目は実に気持ち悪くて最高です。若い男子のくせに頭の中は麻雀のことでいっぱいとは、なんてかわいそうな子。でも、田中くんの、『根こそぎフランケン』含め登場人物の中で最も麻雀を愛しているところが好きです。田中くんだけが博打打ちなのではなく、麻雀打ちなんだよね。才能がなくて、努力しているけど報われなくて、しかしそれでも一生懸命がんばる田中くんに涙。世の中、片チン漫画みたいに努力すれば報われるわけじゃないのですね。それでも自分の力で歩いていこうとする田中くんはすばらしい…。最後にはその努力が(少しではあるが)報われて、ほんとによかった。


個人的お気に入りシーンは、竹ちゃんと田中くんが一緒にテレビ(麻雀番組)見てるシーンで、CM中にテレビ画面に鬼太郎と目玉親父が映っているところです。
あと、ワニ蔵様のお父様が「百万・二百万程度の小銭を賭けるからバクチなんじゃ。大金を賭ける場合は勝負と言う」と言い出すシーン。親子揃って実にすばらしい。