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2018-06-11

[] 『もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて 続・情報共有の未来』への反応 その15  『もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて 続・情報共有の未来』への反応 その15を含むブックマーク

『もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて 続・情報共有の未来』だが、@heartfield さんからありがたい感想をいただいた。

「久しぶりに人の真剣な文章を読んだ気がする」って言っていただけると嬉しい。それだけで書いた甲斐があるというものである。

あと、@heartfield さんが書いているこの話は、ワタシも疑問に思っていたことだったりする。

レスポンスにも書いたが、正直これについてはワタシも正解が分からなくて、BiB/i を使ってブラウザで読んでいるのだが、パソコン(Windows、Mac)/スマホ(iOS、Android)で答えは変わるのだろうな。

ティム・ウーの新刊『大企業の呪い:新たな金ぴか時代における独占禁止法』が今秋出る ティム・ウーの新刊『大企業の呪い:新たな金ぴか時代における独占禁止法』が今秋出るを含むブックマーク

「ネットワーク中立性」という言葉の発明者として知られるティム・ウーの本は、2年前に取り上げているが、結局邦訳は出ないのかな。

さて、前作から2年で新作が出ることを調べものをしていて知った。

The Curse of Bigness: Antitrust in the New Gilded Age

The Curse of Bigness: Antitrust in the New Gilded Age

今回はページ数が170ページということで、これまでよりも分量が少ない。気になるのは『大企業の呪い:新たな金ぴか時代における独占禁止法』という本のタイトルである。

「金ぴか時代」とはアメリカにおいて資本主義が急速に発展を遂げた1870〜1880年代あたりを指し、ウィキペディアによると、「拝金主義に染まった成金趣味の時代として扱われることが多く、政治腐敗や資本家の台頭、経済格差の拡大を皮肉った文学者、マーク・トウェインらによる同名の共著小説に由来する」とのこと。つまり、現在を新たな「政治腐敗や資本家が台頭し、経済格差が拡大する時代」とウーはみなしているわけですな。

また「大企業の呪い(The Curse of Bigness)」という題名は、独占禁止などの合憲性を主張し、労働者の基本的権利を守り、合衆国最高裁判所判事となったルイス・ブランダイスの同名の著作に由来する。

邦訳の刊行が期待される洋書を紹介しまくることにする(2018年版)で、巨大テック企業の脅威を訴えるフランクリン・フォア『World Without Mind: The Existential Threat of Big Tech』にティム・ウーが推薦の言葉を寄せていることを紹介したが、彼の新刊も GAFA をターゲットとしているに違いない。遂に彼も巨大プラットフォームを握るテック企業を批判するトレンドに乗るのか。

こうした巨大テック企業の独占を民主主義の危機ととらえる視座は、ジョナサン・タプリンの Google 分割論、並びに彼の著作にもつながりそうな話である。

ティム・ウーはスタンフォード大学で、ルイス・ブランダイスの『The Curse of Bigness』についての講義を行っており、それはつまり彼の新刊のタイトルでもあるので、その内容もこれを聞けばだいたい分かるだろう。英語の得意な方は、字幕付きで挑戦してみてください。

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シリコンバレー小保方晴子」ことエリザベス・ホームズが新会社を立ち上げようとしているらしい 「シリコンバレーの小保方晴子」ことエリザベス・ホームズが新会社を立ち上げようとしているらしいを含むブックマーク

「『彼女は間違いなく社会病質者傾向がある』:エリザベス・ホームズがなんと新会社を立ち上げようとしている!」という記事タイトルに笑ってしまったが、書いているのはニック・ビルトンか。関係ないが、彼の『American Kingpin』は、結局邦訳出ないのかねぇ。

一時は時価総額が9000億円だかに達したが、後にそのインチキがバレた Theranos の創業者にして、「自力でビリオネアになった最年少の女性」とも言われたエリザベス・ホームズの隆盛と凋落については、同じくニック・ビルトンが Vanity Fair に書いた記事の邦訳「ジョブズになり損ねた女:DNA検査の寵児、エリザベス・ホームズの墜落」に詳しい。

TechCrunchForbes の記事にあるように、今年に入って米証券取引委員会(SEC)は Theranos を「巧妙大規模な詐欺」として告発している。

エリザベス・ホームズについては、ピューリッツァー賞も受賞したことのある調査報道記者にして、Theranos の詐欺行為を最初に暴いた調査報道で2015年のジョージ・ポルク賞を受賞している John Carreyrou が、彼女並びに Theranos についての本を出したばかりで、この記事もそれを踏まえたものである。

Bad Blood: Secrets and Lies in a Silicon Valley Startup

Bad Blood: Secrets and Lies in a Silicon Valley Startup

Bad Blood: Secrets and Lies in a Silicon Valley Startup

Bad Blood: Secrets and Lies in a Silicon Valley Startup

エリザベス・ホームズを「シリコンバレー小保方晴子」という人もいるが、投資額や時価総額を考えれば、経済に与えた影響は小保方晴子の比ではないだろう。エリザベス・ホームズの恐るべきしぶとさについては昨年瀧口範子さんも記事にしているが、彼女はまったくめげてないようだ。John Carreyrou の話を聞いたニック・ビルトンは、ホームズの虚言の悪質さとそのエスカレーションに半ば呆れ、以下のように書いている。

そんな風にふるまう人を見て、しかも彼女は自身の行動が他者の生活を破壊することを完全に無視しているわけで、まず頭に浮かぶ疑問は「彼女ってソシオパス(社会病質者)なのか?」である。

そこでこの記事のタイトルになるわけだが、つまりは John Carreyrou も、エリザベス・ホームズにソシオパス傾向があると見ているわけですね(彼女はまったく反省していないどころか、Theranos の元従業員の話によると、すっかり殉教者きどりらしい)。しかも彼女は現在シリコンバレーの投資家行脚中で、新たなスタートアップのアイデアを売り込んでいるとのこと。いやはや、おぞましい話である。

John Carreyrou の本の邦訳が待たれるところ。ネタ元は Slashdot

[] スタンリー・キューブリックのカメラマン時代の写真を集めた本が出たとな  スタンリー・キューブリックのカメラマン時代の写真を集めた本が出たとなを含むブックマーク

こないだ『2001年宇宙の旅』のHAL 9000の声についての逸話を取り上げたが、今年生誕90周年だったりするスタンリー・キューブリックが、映画監督になる前に Look 誌でカメラマンやってた話は知られている。その当時に彼が撮影した写真を集めた『Stanley Kubrick Photographs: Through a Different Lens』という本が今月出たとな。

彼が雑誌のスタッフになったのは17歳(!)だったそうだが、それから5年間に撮影した写真が収録されているようだ。

ニューヨーク市立博物館において、同名の展覧会が10月28日まで開催されているが、ニューヨーク市立博物館の YouTube チャンネルにあがっている動画で、写真の一部を閲覧できる。

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我々はキューブリックが後になした仕事を知っているから、この時代の写真まで格調高く見えるところがあるが、邦訳も出てほしいねぇ。

あとこれも kottke.org 経由で知った話だが、『2001年宇宙の旅』において宇宙船でクルーが食事に使用したカトラリーはアルネ・ヤコブセンがデザインしたものだが、それが Amazon で買えるんだって。

高いな! 『時計じかけのオレンジ』に出てくる「あのオブジェ」ほどのインパクトはないが、Amazon でこんなものまで買えるんやね。

そうそう、スタンリー・キューブリックについては、5年前に彼が好きだった映画約80本のリストも作っているので、キューブリックに興味のある方にご一読をお勧めする。

[] デッドプール2  デッドプール2を含むブックマーク

前作は吹き替え版を観たが、今回はレイトショーをやってたのが字幕版だったので、そちらになった。字幕担当者も大変な苦労があったようだが、本作のように台詞の情報量の多い映画は吹き替えのほうがよかったかもしれない。

いずれにしても前作以上に楽しめました。本作では、例のメタな作りがさらに冴えている。特にラストで、主人公の(というか、もはやライアン・レイノルズの)修理したアレの使い方には笑ってしまった。

本作では、ライアン・レイノルズが主演と製作に加え脚本にも参画しているが、本当に彼はすごいキャラクターをものにしたもんだと思う。デッドプールの不死身という設定は、それじゃ結局誰と戦っても勝つじゃないと観客に冷静になられると終わりなわけで、本作の展開はそのあたりもうまく考えられている。

本作では「ダブステップ」という言葉が何度か出てくるが、一方で本作の音楽は(最近の映画に多いが)80年代推しだったりする。『フラッシュダンス』のようなちょっとした笑いどころとしての意匠の利用、『SPACED 〜俺たちルームシェアリング〜』でもやっていた家の外から流す曲がピーガブだったりするのをはじめ、何より「テイク・オン・ミー」の使い方は、あの曲のビデオを知る人にとっては冗談抜きで感動的ですらあった。

なお、本作にあの人とあの人がカメオ出演しているのをうっかりネットの書き込みで読んでしまっていた。あの人の出演場面については、その人について「君、もっとヘタレ役をやりなさい」と昔書いていたワタシ的には、『バーン・アフター・リーディング』以来の良さがあったぞ!

本作は冒頭で「ファミリー映画」だと宣言される。バシバシ主人公が人を殺す血まみれな映画だが、本当に「ファミリー映画」なのである。それは、とんでもなく不謹慎で下品な主人公が暴れまくるこの映画が、包摂と多様性を実現していることとつながっている。

さて、最後にこの映画自体の感想から少し離れるのだが、アメリカの映画やドラマで、車を運転していて、助手席に座る人との会話で運転者が結構な時間はっきり横を向くシーンがワタシは苦手である。危ないだろが! とイライラするのだ。実際そのせいで事故る場合もあるし、そうでない展開もあるが、前向けよ! と怒りすら覚え、その作品自体への悪印象にすらつながる。

教えてもらったところによると、『アメリ』の主人公も「嫌いなのは昔のアメリカ映画で脇見運転するところ」と言ってるらしいが、「昔の」だけではないんですね。『デッドプール2』にもそういうシーンがあって、この映画の場合、それで事故にはつながらないのだが、その場面は観ていてソワソワ、イライラし、疲れてしまった。作品の展開として必然性がなければ、こういう演出もう止めてくれないかなぁ。基本、普通に運転手が前を見て運転し、助手席の人間と話せばいいだけじゃないのか。

2018-06-04

[] 『もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて 続・情報共有の未来』への反応 その14  『もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて 続・情報共有の未来』への反応 その14を含むブックマーク

『もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて 続・情報共有の未来』については、もうそろそろ反応も出尽くしたのかもしれない、それならこのブログもまた無期限更新ステータスに戻ることになるのかなと思っていたのだが、いくつか新たに反応を見かけたので、宣伝のためにしつこく紹介させてもらう。

まずは Kenichi Murahashi さんのコメント。

もうすぐ絶滅するという開かれたweb〜 長く積んでたの読み始めた おもしろい こういうのかけたらかっこいいよなー

https://twitter.com/sanemat/status/1001727892257062912

いやー、書けてもうだつのあがらないこのザマですよ。コードで世界を変えるほうがどれだけ尊いか。

wired的な文章を読まなくなって久しいけどrssリーダー使わなくなってからそんなもんだよなあ

https://twitter.com/sanemat/status/1001732646068568064

グッドバイルック最後まで読んでしまった 読みふけってしまった

https://twitter.com/sanemat/status/1001975483066699776

この「最後まで読んでしまった」「読みふけってしまった」の「しまった」の繰り返しにいわく言いがたい感じが出ているようで、著者としては嬉しい(笑)。

続いては @eusuke さん。

これは僕ら世代にはどストライクに郷愁を誘うんだよなあ

https://twitter.com/eusuke/status/1002537524080795649

おそらくはボーナストラック「グッドバイ・ルック」のことを指していると思われる。「郷愁」と言われるとちょっとワタシもびびりますが(笑)。

言うの忘れてたけど、あとがきだけは読んどけよー

https://twitter.com/eusuke/status/1002544351723917314

そうです、本文→あとがき→ボーナストラックという順路に従って読むと、なにかしらの驚きがある、かも。

もうすぐ絶滅するという…を改めて読んでると、当時ダナ・ボイドには代表となる著書がなかったのだよなとか、色々思うとこはある

https://twitter.com/eusuke/status/1002552088889458689

確かに何年も連載やっていると、単著もなかった人が気鋭の存在になっていたり、その逆もあったりで、人に歴史ありとか思ってしまいますね。

[] 今こそブラウザをChromeからFirefoxに乗り換えるべき理由  今こそブラウザをChromeからFirefoxに乗り換えるべき理由を含むブックマーク

私はブラウザを Chrome から Firefox に乗り換えた。あなたたちもそうすべきだ、という文章だが、その根拠は何か?

ここでも持ち出されるのは、ユーザのデータを握るプラットフォーム企業の監視資本主義の話である。Chrome の開発元である Google もいうまでもなくプラットフォーム企業の一つであり、そこにインターネット利用におけるキンタマ握られる状態はまずいんじゃないのかというわけ。

その点、Mozilla 財団という非営利組織が開発元である Firefox は、プライバシーとセキュリティ重視の姿勢が、Chrome のプライバシーポリシーなんかと比較すると好ましいとのこと。

とはいえ、Firefox のデフォルトの検索エンジンは Google であり、Mozilla はそれにより Google から資金を得ているわけだけど、それでもプライバシーファーストな姿勢を評価している。

この文章でも、Chrome の市場シェアが大きいため、ブラウザ拡張も Chrome 中心になってしまう Firefox 採用の難点に触れているが、Firefox のアドオンについては、ちょっといろいろ言いたくなるところがあるわな(ところで、Tab Mix Plus 使ってた人って何に乗り換えたのかな?)。

うーん、ワタシはいまどきかなりな少数派(現在のブラウザのシェアは、Chrome が約6割で Firefox は約1割らしい)の Firefox ユーザである。が、それは開発元が非営利組織というのもないわけではないが、正直に書けば、ワタシが長年の Firefox ユーザである理由は、一言で言えば、ワタシが極度のものぐさ、怠惰だからだったりする。

邦訳の刊行が期待される洋書を紹介しまくることにする(2018年版)でも、「四天王」GAFA に代表される、プラットフォームを握るテック大企業の脅威についての本が完全に一つのトレンドであることを書いたが、果たしてその問題意識からブラウザを乗り換える人ってどれくらいいるんだろうねぇ。ワタシは Firefox ユーザだけど、そのあたり懐疑的である。

メアリー・ミーカーのインターネットトレンド報告によると、「自分のメリットになると分かれば消費者の79%は喜んで自分の個人情報を提供するそう」らしいしね。

ネタ元は Slashdot

[] ブロックチェーンと法の関係についての本が面白そうだ  ブロックチェーンと法の関係についての本が面白そうだを含むブックマーク

ハーバード大学のバークマン・センターで、Blockchain and the Law という新刊についての共著者による講演会が行われているのを知る。

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ここで講演している共著者の Primavera De Filippi が CoinDesk に寄稿した No Blockchain Is an Island をざっと読むと、この人もローレンス・レッシグ以降の研究者であることが分かる。ブロックチェーンの技術的な解説やビジネスの可能性についての本は既にいくつもあるが、「ブロックチェーンと法」という切り口は面白そうだ。

上で名前を挙げたローレンス・レッシグをはじめとして、『協力がつくる社会:ペンギンとリヴァイアサン』の邦訳があるヨハイ・ベンクラー、そして意外なところではブルース・シュナイアーといったビッグネームが推薦の言葉を寄せている。これは邦訳出るんじゃないかな。

ブロックチェーンと法」という切り口で本が書かれるのは初めてかと思ったのだが、調べてみると久保田隆『ブロックチェーンをめぐる実務・政策と法』という本があるみたいね。

ローレンス・レッシグ久方ぶりの新刊『America, Compromised』が今秋出る ローレンス・レッシグ久方ぶりの新刊『America, Compromised』が今秋出るを含むブックマーク

上で Primavera De Filippi について「ローレンス・レッシグ以降の研究者」と書いたが、そういえばコリィ・ドクトロウが O’Reilly Fluent Conference での基調講演を前にして受けたインタビューで、今一度ローレンス・レッシグの教え、すなわち『CODE』で彼が規定した、以下の4つの人を動かす力を思い出すことを勧めている。

  1. アーキテクチャ(コード)
  2. 規範
  3. 市場

それが、コリィ・ドクトロウが言うところの「設定可能で自由なインターネット(configurable and free internet)」のために闘う上で必要という認識で、それは『もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて 続・情報共有の未来』とも共通する問題意識である。それはともかくとして、そういえばそろそろレッシグ先生の本とか出ないのかなと調べたら、今年の秋に出るようだ。

『Republic, Lost』の第二版から3年になるが、純粋な新刊となるとかなり久方ぶりである。シカゴ大学Randy L. and Melvin R. Berlin Family Lectures の依頼を受けて書いた本みたい。

残念ながら、と書いてはいけないのだろうが、「Five Studies in Institutional Corruption」という副題を見ても分かる通り、本の主題はデジタルフリーダム周りではなく、彼の現在の研究テーマである「(特にアメリカにおける)腐敗と民主主義の危機」である。『Republic, Lost』同様、この本も邦訳は難しいのでしょうな。

さて、レッシグ先生の最近の講演となると、TEDx でいくつか行っている。いずれにも日本語字幕版はないようだが、レッシグ先生は講演の名手で聞きやすいし、字幕をつければなんとかなるでしょう。

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いずれにしても民主主義と平等がテーマであり、新刊の内容にも反映されているのだろう。しかし、レッシグが「ネットはいかに民主主義を破壊したか」というタイトルの講演をやるとは! これだけ見るとアンドリュー・キーンの本のタイトルみたいやないか。

[] 犬ヶ島  犬ヶ島を含むブックマーク

ウェス・アンダーソンのストップアニメーション映画というと、『ファンタスティック Mr.FOX』がすごく評価が高いのだけど、ワタシはなぜかあれが肌に合わなくて、正直彼のストップアニメーション映画はパスしたかったのだが、当代最高の映像作家の一人である彼の新作はやはり映画館で観ようと足を運んだ次第である。

ウェス・アンダーソンというと、強力なヴィジュアルコントロールで知られ、前作『グランド・ブダペスト・ホテル』はその一つの極みともいえるし、それがパロディの対象にもなってからかなり経つくらいである。本作では、作品のこぎれいさにつながりがちなヴィジュアルコントロールは排されており、美しさが失われたヴィジュアルの中で作品が展開するところに、紛れもなく彼の映像作品でありながら、さらに上を目指す感じがあってすごいなと思った。

多分映画としては、『ファンタスティック Mr.FOX』のほうが上なのかもしれないが、個人的には題材的にも本作のほうがよかった。ただし、ワタシが観たのが字幕版なこともあってか、劇中頻繁に登場する日本語を英語字幕で読み、さらに頭の中で日本語にまた訳してしまうような感じがあって(ちょっと説明しにくいですが)、観ていてヘンに疲れたところもある。

本作については、描かれる日本がステレオタイプだとか「ホワイト・ウォッシング」といった批判があるそうだが……バカですか? つーか、本作に描かれる「日本」が実在しない、監督の頭の中にある架空の存在であることが分からない人は映画鑑賞自体に向いていないのではないか。くだらない。この手の指摘って、最終的に自分たちの首を絞めることになるのが分からないのかな。

むしろ本作を観ていて、ウェス・アンダーソンは日本の現在の政治状況について特に知識がないはずだが、そういうのにリンクして観てしまう自分にいささか当惑した。これこそ(監督の)想像力の力だと思う。

2018-05-29

[] 『もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて 続・情報共有の未来』への反応 その13  『もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて 続・情報共有の未来』への反応 その13を含むブックマーク

ようやく正式版が出た『もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて 続・情報共有の未来』だが、正式版が出たというので購入いただいた方もいるようである。

そういう方の感想ツイートを取り上げさせてもらう。

もう絶こと「もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて」、Beta取れたので買ってぼちぼち読み始めてんだけど、先に追加コンテンツを斜め読みしてしまったら何なんですかこれ…という気持ちだ…

https://twitter.com/cetacea/status/998551206388682754

そういう重い話を読もうとは思っていなかったわけだが…という気持ち…

https://twitter.com/cetacea/status/998551314626891776

とんでもないものを読ませてしまい、申し訳ない(笑)。

いや、笑ってはいけないのだが、やはりこういう反応をいただくと、「ボーナストラック書きますので」とだけ伝えられ、電子書籍化のための作業が佳境に入ろうかというところで、いきなり「グッドバイ・ルック」を読まされた達人出版会の高橋さんの困惑はいかばかりだったかと思ってしまう。

ただ、このボーナストラックを読んでから、また本編を読み直すと、これはそういうことだったのかと作者について合点がいくところがいくつもあったりするのです。

「バーチャルリアリティの父」ジャロン・ラニアーが「今すぐソーシャルメディアのアカウントを削除しよう」と呼びかける新刊を出している 「バーチャルリアリティの父」ジャロン・ラニアーが「今すぐソーシャルメディアのアカウントを削除しよう」と呼びかける新刊を出しているを含むブックマーク

最近なぜか GDPR について Wired で面白い文章を書いている武邑光裕やはり GDPR についての文章経由で、ジャロン・ラニアーの新刊が出るのを知る。

Ten Arguments For Deleting Your Social Media Accounts Right Now

Ten Arguments For Deleting Your Social Media Accounts Right Now

でも、ちょっと待った。ジャロン・ラニアーって、「バーチャルリアリティの父」の面目躍如な本を昨年刊行したばかりじゃないか。

それから半年で新刊なのだからペースが早い。今回は160ページの分量ということで可能だったのだろうが、よほど書きたいテーマだったのだろう。

で、書きたいことは何かというと「今すぐソーシャルメディアのアカウントを削除しよう」というのだから、『人間はガジェットではない』(asin:4153200166)やワタシも WirelessWire 連載1回目「インターネットによる中流階級の破壊をマイクロペイメントが救うか」で取り上げた当時の新刊のインターネット批判を先鋭化させている印象がある。

ジャロン・ラニアーのサイトにこの新刊のサポートページができているが、そこに真っ先に書かれている注記に笑ってしまった。

No, Jaron does not have a Twitter account. No Reddit account. No Facebook account. They're all fake fake FAKE!

Web resources related to the book Ten Arguments for Deleting Your Social Media Accounts Right Now by Jaron Lanier

いやはや、徹底してますな。このページを見ると、「お前は自由意志を失おうとしている」に始まり、「ソーシャルメディアはお前の魂を嫌悪している」にいたる、この本の主張である10の議論が読めます。

[] Linuxオープンソースのファン(の子供たち)が読むべき本のリスト  Linuxとオープンソースのファン(の子供たち)が読むべき本のリストを含むブックマーク

Linuxオープンソースのファン向けの17冊とのことで、明らかに古い本が入ってるのが気になるが、面白いのは無料で全文読める本がそこそこあること。そういえば、ワタシも昔「無料で読めるLinux本ベスト20」というブログエントリを書いたことがあるが、それとの重複はいくつかあるね。

邦訳があるのは以下のあたりか。

これは日本語訳が全文オンライン公開されている。

オープンソースソフトウェアの育て方

オープンソースソフトウェアの育て方

こちらも日本語訳が全文オンライン公開されている。

プログラミング言語AWK

プログラミング言語AWK

この本だけフィクションである。

こちらは子供を Linuxオープンソースを好きになってもらうための15冊のリストである。Al Sweigart の本が何冊も入っているのが印象的である。彼の本ってどれも全文をオンラインで読めるんだな!

それにしても子供向けのプログラミング本っていろいろ出ているんだね。邦訳があるのは以下のあたりか。

Pythonからはじめる数学入門

Pythonからはじめる数学入門

たのしいプログラミング Pythonではじめよう!

たのしいプログラミング Pythonではじめよう!

[] Linuxがifconfigやnetstatといった昔からおなじみのネットワークコマンドを置き換える本当の理由  Linuxがifconfigやnetstatといった昔からおなじみのネットワークコマンドを置き換える本当の理由を含むブックマーク

もはや Linux で ifconfig や netstat といった昔からある(つまり Unix 由来の)ネットワークツールを非推奨にして、ss や ip といったものに置き換えているという話をワタシが知ったのは……記憶を辿ると、どうやら山形浩生経由らしい。

この方針に対し、古手のシステム管理者には、なんで安定して動いているものを置き換えなければならないのかとイライラする向きもあるのだが、それが必要な理由について解説している。

まず一つには、/proc 配下のいろんなファイルを読む ifconfig や netstat は、iproute2 の一部であり netlink ソケットを利用する ss や ip よりもコマンドの実行が非効率というのがある。これが大規模なシステムだと問題になるというのだ。

そしてもう一つには、古いコマンドはある意味板ばさみにあるということ。つまり、片方ではこうしたネットワークのコマンドは、Linux カーネル自身のネットワーキングの有様を知りたいから利用するのだが、もう片方ではこれらのコマンドは、コマンドラインからの出力という伝統的なインタフェースでの利用を想定しており(追記@takeh_t さんからご指摘いただいているが、ここは誤訳っぽくて、問題はコマンドラインという形式ではなく、コマンドラインの出力内容が実態と乖離していることが問題ということです)、それがカーネルのネットワーキングの現実を反映できなくなっているとのこと。

そして、カーネルの現実にコマンドを合わせようとすればするほどスクリプトを破壊することになってしまう。このように不正確だし修正するのが大変な ifconfig や netstat といったプログラムの置き換えは誠実なアプローチとのこと。

ふーむ、そうなのか。ネタ元は Slashdot

Linuxネットワークプログラミング

Linuxネットワークプログラミング

[] 「オーケストラ・ヒット」の歴史を辿る動画がよくできていた  「オーケストラ・ヒット」の歴史を辿る動画がよくできていたを含むブックマーク

河村奨さんの「30代から始めるYouTube入門」がとてもためになるのだが、その中でも YouTube のジャーナリズムとして見逃せないと紹介されている Vox チャンネルの Earworm シリーズで取り上げられている「オーケストラ・ヒット」の歴史の話が面白い。

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そもそもワタシは「オーケストラル・ヒット」として記憶していたのだが、原語では Orchestra hit が正しいらしい。

要は、オーケストラが一斉に「ジャンッ!」とやる感じの音を指すのだが、アフリカ・バンバータが1982年に「プラネット・ロック」で採用し、以降80年代にやたらと流行した手法である。

Vox の動画でも出てくるが、再結成イエスの「ロンリー・ハート」が、個人的には当時もっともインパクトがあったな。

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Vox の動画を観ると、スミスのような一見こういう手法を使わなそうなバンドも使っていたのに気づかされて驚いてしまう。

そのように80年代一世を風靡した手法なのだが、そういえば山下達郎は以下のように語っていたっけ。

あとは流行の楽器や流行のミックス手法といった「時代の音」というのがあって、刺激的なものほど陳腐化も早いので、そういうものになるべく手を出さない。80年代にゲートリバーブをついに一度も使わなかった。オーケストラヒットなんてもってのほかだった(笑)。

山下達郎「OPUS ?ALL TIME BEST 1975-2012?」特集 (5/8) - 音楽ナタリー 特集・インタビュー

つまりはあまりに流行ったがために、山下達郎のような音楽職人は意識して避けていたし、90年代以降はそれを使うのがだんだん恥ずかしくなっちゃったわけだが、近年ブルーノ・マースのような人が、オーケストラ・ヒットにまつわるノスタルジーを意識的に利用しているというわけである。

オーケストラ・ヒットというと、上記の通りアフリカ・バンバータあたりが一番最初と言われるが、この Vox の動画が面白いのは、その始祖をイーゴリ・ストラヴィンスキーの「火の鳥」に求めているところ。そして、ハービー・ハンコック、クインシー・ジョーンズ、ピーター・ガブリエル、そしてフェアライトCMIといった欠かすことのできない人や楽器が網羅されていて、よくできていると思った。

ネタ元は kottke.org

ロンリー・ハート

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