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シリアスマン

本作の日本での公開が遅れたのは、内容や使われている言葉がユダヤ人の慣習に密着しているから、という評判を聞いていたので少し身構えたが、ひどく理解しがたい話というわけはなく楽しめた。とはいえ理解し損ねた文脈があると思う。たとえばワタシのようなボンクラには、プロローグと本編にどのようなつながりがあるか正直分からなかったし。

彼らの映画ではこないだ『トゥルー・グリット』を観たばかりだが、これより本作のほうがワタシは好きだ。その理由は話の転がり方とオフビートなコメディ感覚で、『トゥルー・グリット』は悪い映画ではないし、ヘイリー・スタインフェルドがとても良かったが、あの映画はコーエン兄弟にしては「直線的」すぎるのだ。

本作は、コーエン兄弟の誘拐ものに顕著な思わぬ方向への話の転がりこそないものの、平凡な大学教授が、長年連れ添った妻から別離を言い渡されることに始まり、戸惑い明確な拒絶の行動を取ることができないうちに、厄介者の兄やら押し付けがましい妻の再婚相手やら単位を寄越せと賄賂を渡そうとする韓国人学生とそれに居直り主人公を名誉毀損で訴えると脅す彼の父親やら次から次に地味な苦難が主人公に降りかかってくる。そのこんがり方とそれに付随するとぼけたユーモアがいかにもコーエン兄弟らしくてよかった。

本作のストーリーが、その後の運命を示唆する電話とともにあっけなく終わるラストまで、現代の我々の目から見ればまったく理不尽に神に試され人間が酷い目にあわされる旧約聖書の世界をなぞっているのは間違いないだろう。前述の通り、言われているほど事前知識を要する作品とは思わなかったが、たとえばジェファーソン・エアプレインを知っていたほうがよいとかはある。主人公の息子とラビが対峙する場面、映画館でワタシだけ笑い出してしまったよ。

『Coders at Work』日本語訳が遂に出るぞ!

鹿野桂一郎さんのツイートで知ったが、『Coders at Work』の日本語訳が来月遂に刊行される。

Coders at Work プログラミングの技をめぐる探求

Coders at Work プログラミングの技をめぐる探求

思えば一昨年の夏に刊行前の原書を紹介し、そして秋には青木靖さんから翻訳情報を教えてもらっていた。

あれから一年半が経つが、この本は簡単に古びるような本でないのでまったく問題なしである。しっかり時間をかけて本を作る編集者と仕事できる青木靖さんが本当に羨ましい。

真夜中のニューヨーク公共図書館でゲームイベントが開催される

これは面白そうだ。

来月5月20日の夜、ニューヨーク公共図書館(NYPL)に500人の参加者が集い、図書館内部を探索してそこにある様々なブツ(本に限らない)を見つけながら、それを記録する本を書いていくというコラボレーションゲーム企画 Find the Future at NYPL: The Game を開催するというのだ。

screenshot

夜の図書館というのにまずゾクゾク来るが、NYPL という世界有数の図書館が、よくこういうチャレンジングな企画を受け入れたものだと思ったが、サイトを見ると「人々が夢をかなえ、自身の未来を発見する場所として図書館を見てほしい」という図書館側の熱意が伝わってくる。これは最近の図書館を巡る議論にも深い示唆を与えていると思う。

この企画を主導しているのが著名なゲームデザイナーにしてゲームの研究者ジェーン・マゴニガル(Jane McGonigal)とその夫の Kiyash Monsef で、彼女については以前新刊を紹介したが、10月には日本語版も出るらしい。ほぅ。

Reality Is Broken: Why Games Make Us Better and How They Can Change the World

Reality Is Broken: Why Games Make Us Better and How They Can Change the World

農業をオープンソース化する試みについて

ReadWriteWeb のエントリを読み、農業をオープンソース化しようとする Open Source Ecology の活動を面白いと思い、後で TED 講演の動画を見ようと思っていたら、早速日本語字幕版があがっていた。素晴らしい。

Wikiや3次元デザインツールなどを利用し、TEDフェローのマーチン・ヤクボスキーは50もの農業機械の設計図をオープンソース化し、誰でも一からトラクターや収穫機を作れるようにしています。これは完全に自立した集落を目指すための取扱説明書を書く上での第一歩に過ぎません(初期費用は1万ドルから)。

マーチン・ヤクボスキー:文明の設計図をオープンソース化する試みについて | TED Talk

(ほら、はてなダイアリーにTED Talksの動画を貼り付けられたほうがいいでしょ?)

農業というと何となく縁遠そうだが、ワタシも少し関わっている MAKE 周りの DIY ムーブメント、そしてオープンソースハードウェアの延長でできることがあると分かると俄然身近に感じられる。

ピーター・フックの自伝の邦訳『ハシエンダ マンチェスター・ムーヴメントの真実』が出る

ハシエンダ マンチェスター・ムーヴメントの裏側

ハシエンダ マンチェスター・ムーヴメントの裏側

これは嬉しいねぇ。ピーター・フックの自伝についてはマンチェの新クラブ FAC251 の話のときに取り上げているが、『24アワー・パーティ・ピープル』とは違った形でマンチェスター・ムーヴメントを語った本になっているだろう。来月刊行とな。

ピーター・フックというと、フリーベースを一緒に組んでいたマニから金に汚いジジイと無茶苦茶言われたりして(後にマニはこれを謝罪したそうだが)、ジョイ・ディヴィジョンの『アンノウン・プレジャーズ』の完全ライブをやる企画にもあんまり良い印象はない。そんなんやるならバーニーに詫び入れてニュー・オーダーやれや、と。

そうそう、ニュー・オーダーというと、彼らの公式 YouTube チャンネルをこないだはじめてみたのだが、未だにピーター・フックの以下の動画が迎えてくれるんだよね。

バンドから一抜けした人間からのウェルカムメッセージって……微妙だ。

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