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ヤング≒アダルト

ヤング≒アダルト [DVD]

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『マイレージ、マイライフ』がとてもよかったので、ジェイソン・ライトマンの新作が出たら観ると決めていた。本作は監督、脚本が『JUNO/ジュノ』のコンビとのことだが、彼の旧作は観そびれたままである。

前作の主役ジョージ・クルーニーがはまり役だったように、本作のシャーリーズ・セロンも年齢相応のやつれた感じ(ワタシと同年代の設定ですね)、しかし未だ紛れもなく美人であり、毒を失ってない主人公にぴったりだったと思う。

ミネアポリスに住むヤングアダルト小説(なっちの字幕では『花のハイスクール』というすさまじくダサいタイトルになっていたが、"Waverly Prep" なんだから『ミネソタ高校白書』ぐらいにしとけば……ってダメ?)のゴーストライターの主人公メイヴィスは、子供が生まれたばかりの高校時代の恋人バディからの誕生パーティへの誘いに、彼と自分は運命のカップルなのだから彼を取り戻すと確信して故郷に乗り込む。そのとき車でかけるのが高校時代に彼からもらったミックステープ、しかも1曲目のティーンエイジ・ファンクラブの "The Concept" を何度もリピートする……この時点でグッとこないと本作は受け入れられないかも(この曲は劇中でも使われるが、そのときの主人公の表情には苦笑いする)。

本作の宣伝に『女子をこじらせて』が話題の雨宮まみさん(id:mamiamamiya)が駆り出されていたが(雨宮さんの映画評)、高校時代「女王様」ポジションだった本作の主人公の境遇だけとれば、雨宮さんとはかなり異なる。しかし、自意識の問題としてみた場合、高校時代という過去の栄光、そして田舎町を飛び出し都会でクリエイティブに自由に生きているというよりどころを手放せない本作の主人公もかなり「こじらせて」いるわけで、前述の同じ曲を何度もリピートさせるところも主人公の病的さ部分を最初に表現しているともいえる。

故郷に帰った彼女はバーで、高校時代ロッカールームが隣通しだったマットで出会う。彼女は冴えないマットのことなど覚えてないが、彼が高校時代ジョックたちに森で暴行され、大怪我を負わされた過去を思い出す。当初ゲイ差別の被害者と報道され、実際はゲイでなくただのデブいじめだったと注目されなくなるマットの設定が絶妙で、彼もまた高校時代から抜けられなくなった人物なのである(普段着るTシャツが主人公はキティちゃん、彼がピクシーズというのが示唆的)。

本作の日本語公式サイトで「感動のヒューマンドラマ」と謳っているのはとんでもない話で、ホントそういう映画じゃ全然ないから!! これは実際に観ていただくしかないが、本作で描かれる決定的な破局(主人公は自らの過去を語るのに、マットと同じ表現を使っている)、そしてその後の彼女の改心のなさにはここまでやるかと感心したし、ここまできたらワタシはとても彼女を笑う気持ちにはなれない。

最後のマットの妹で主人公にずっと憧れていたサンドラとの会話も実はかなり怖くて、ここからホラー展開になるのではと妙に緊張してしまった。

映画としては前作のほうがずっと好きだけど、ちょっとした会話で住む世界の違いを浮かび上がらせる脚本の妙もあり、本作も捨てがたい。

『情報共有の未来』への反応 その6 #infoshare

『情報共有の未来』だが、正式版になったのを受けてたつをさんが以下のように書かれている。

正式版になる前からダウンロードして iPhone で読んでいるのですが、んーと、どこが変わったのか分からないのが難点ですね。だからといって、最初から読み直すのもアレなので気にしないことにします。

【今読んでる本】「情報共有の未来」が正式版に!

その後にも書かれているが、変更点は基本的にサポートページの正誤表になります。意外に知らない人がいるのだが、達人出版会で購入した電子書籍は、バージョンアップ後も MyPage から何度もダウンロードできるので、β版を購入された方もせっかくなので最新版に更新されるのをお勧めします。

ローレンス・レッシグが新刊『One Way Forward』を電子書籍で出していた

これを見るまで知らなかったのだが、レッシグ先生は新刊 One Way Forward電子書籍で出してるのね。

お値段は1ドル99セントで、どれくらいの分量なんだろうと Amazon.com を見たら、ページ数でなく 231KB というデータ量が記載されていて苦笑い(実際は62ページだそうだ)。

抜粋も公開されているが、Web 2.0 以降の双方向性、Occupy ムーブメントなどの草の根運動からの触発、そして昨年秋に出たばかりの Republic, Lost の延長上の政治性を踏まえた内容のようだ。

なお、レッシグ先生はこの書名を冠したブログを立ち上げていて、そこでの議論を踏まえ書籍を改訂すること、そしてそれをクリエイティブ・コモンズ・ライセンスの元で公開することを告知している。

Open Knowledge Foundationが「オープンデータ」ハンドブックを公開

Open Knowledge FoundationThe Open Data Handbook の正式版 v1.0 を公開したよとのことだが、これがなかなか面白い。最初の「はじめに」、「なぜオープンデータなのか?」、「オープンデータとは何か?」だけでも読んでおきたい。

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オープンソースよりオープンデータのほうが重要、というのは宮川達彦さんが2005年ぐらいに既に書いていた話なのだが(その1その2)、コンシューマ向けウェブサービスだけでなく、最近のオープンガバメントの流れを受け、その定義などをはっきりさせる意義が出てきたように思う。

このハンドブックはクリエイティブ・コモンズの表示 3.0の元で公開されており、自由に翻訳できる。既にスペイン語やイタリア語など翻訳が進んでいるが、日本語への翻訳はまだ始まってないようだ。

敵の敵は味方、なのだろうか? ネット企業の覇権争いと危うい均衡

TechCrunch の「敵の敵は味方」は、憎みあってしかるべき Appleマイクロソフトが、今では Google を共通の敵としていることについての文章である。

これを読んでワタシは自分が過去書いた二つの文章を思い出した。

一つは「マイクロソフトからGoogleに受け継がれる「悪の帝国」の座」で、これはかつて「悪の帝国」と言われたマイクロソフトの位置を今では(この文章を書いた2008年当時)Google が占めつつある状況について書いたもので、事態は確実に進んだわけだ。

もう一つは「インターネットプラットフォーム戦争:「インターネットOS」に一番近い企業はどこか」で、これは id:mame-tanuki さんの以下のツイートからの連想。

つまりティム・オライリーは、「一つの指輪」がすべてを支配する世界よりも主要プレイヤーが「緩やかに連携する」ほうをよしと考えていたわけだが、現実は「一つの指輪」を求めて争う結果、お互いが協力できるところでは協力しあうというきわどい均衡が成立しているようにも見える。HTML5DRM を持ち込もうとしている! と海外のニュースサイトで先週話題になったHTML5対応のコンテンツ暗号化APIの標準化の話のように、Googleマイクロソフトが協力する事例もあるわけで。

要は「敵の敵は味方」というのは局面ごとにどんどん変わるし、そんな単純なものではないということ。これから Facebook がターゲットになる局面も多くなるだろう。「マイクロソフトからGoogleに受け継がれる「悪の帝国」の座」でも引用したニコラス・G・カー先生の言葉を最後に再び引用しておく。

それに「敵の敵は味方」と言うが、私の記憶が確かなら、これはかつて合衆国政府がサダム・フセインについて言った言葉でもある。

マイクロソフトからGoogleに受け継がれる「悪の帝国」の座 | ワイアードビジョン アーカイブ

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