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2018-05-16

[] 『もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて 続・情報共有の未来』の正式版が公開  『もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて 続・情報共有の未来』の正式版が公開を含むブックマーク

達人出版会において『もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて 続・情報共有の未来』の正式版が公開。サポートページにも反映させてもらった。

ベータ版公開から正式版販売開始まで半年近くかかってしまった。これで「正式版待ち」と書いていた人たちも安心して買えますよ!

実は少し前に達人出版会の高橋さんらと飲む機会があったのだが、高橋さんが少し不思議そうに「yomoyomoさん、あの本 Amazon で売らないんですか?」と聞いてきて、あなたがそれ言うか! と思わず高橋さんの首を絞めそうになったものである。

ご存知ない方がいるかもしれないので書いておくと、達人出版会は電子書籍に関する独占的な権利を主張しないポリシーで、ワタシは『もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて』を Amazon など他の販路に持っていくことは可能なのである……が、編集で散々お世話になった達人出版会の恩を仇で返すようなことをするわけないだろが!

正直に書くと、ここまでのこの本の売り上げは、著者として到底満足いくものではない。今や売れっ子のブレイディみかこさんが「ボーナストラックの長編エッセイに泣きました」と書き、芥川賞作家円城塔さんが「読んでおいた方がよい」と勧めてもそうなのは、ひとえに知名度をはじめとする著者の力不足が一番なのは分かっている。

しかし、このままでは高橋さんに迷惑をかけてしまう。達人出版会の命脈を保つためにも『もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて 続・情報共有の未来』をよろしくお願いします!

さて、正式版が出たことで、このブログの期間限定公開状態を無期限停止ステータスに戻してもよいのだが、めぼしい反応があればここで宣伝したいし、あと少し追加したいコンテンツがあるので、もう少しだけお付き合いいただく形になるだろう。

キャシー・オニールが起業したアルゴリズムの偏見を検証する第三者監査会社は注目だし、彼女の本の邦訳も出るぞ! キャシー・オニールが起業したアルゴリズムの偏見を検証する第三者監査会社は注目だし、彼女の本の邦訳も出るぞ!を含むブックマーク

これは『もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて 続・情報共有の未来』的にも非常に注目すべきニュースである。

ワタシは「もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて」「我々は信頼に足るアルゴリズムを見極められるのか?」において、「食料品や医薬品について検査や取り締まりを行う食品医薬品局(FDA)にあたる監視組織をアルゴリズムについても設けるべき」というドリース・バイテルトの主張を取り上げつつも、現実には難しいだろうねと書いている。

キャシー・オニールが起業した O'Neil Risk Consulting & Algorithmic Auditing は、そのアルゴリズムの監査に挑戦するものである(これを「AIの偏見を検証する第三者監査会社」というのはミスリードではないか)。これは成功してほしいところ。

さて、邦訳の刊行が期待される洋書を紹介しまくることにする(2017年版)で取り上げたそのキャシー・オニールの本だが、来月『あなたを支配し、社会を破壊する、AI・ビッグデータの罠』として邦訳が出るとな!(邦題にやはり AI の文字があるのが気になるが……)

これは注目やで。彼女の TED 講演「ビッグデータを盲信する時代に終止符を」を見れば、彼女の主張の大枠が分かるでしょう。

電子フロンティア財団による「アルゴリズムに頼る前の5つのチェックリスト」とアルゴリズムが自動化する不平等についての本 電子フロンティア財団による「アルゴリズムに頼る前の5つのチェックリスト」とアルゴリズムが自動化する不平等についての本を含むブックマーク

これもキャシー・オニールの主張に通じる話なのだが、電子フロンティア財団が、「数学は必ずしもすべての問題を解決できない」として、アルゴリズムに頼る前に確認すべき5つのチェックリストを公開している。

  1. そのアルゴリズムは、人間の生命(生活)にネガティブな影響を与える可能性がある決定を下す――あるいはその基礎となる――か?
  2. 手に入るデータは本当に良い結果につながるか?
  3. そのアルゴリズムは公平か?
  4. アルゴリズムの結果は(本当に)人間の手で活用されるのか?
  5. アルゴリズムによる決定に影響を受ける人々は、何かしらそのシステムに何かしら影響力を持つのか?

これだけでは分かりにくい項目もあるので、気になった方は原文をあたってくだされ。

面白いと思ったのは、この文章の中で引き合いに出されているのが、件のキャシー・オニールの『Weapons of Math Destruction』に加え、Virginia Eubanks の『Automating Inequality』という本である。

2018年に入って刊行された本だが、記憶を辿ると、Boing Boing で Cory Doctrorow が気合の入った書評を書いていた。彼以外にもナオミ・クラインイーサン・ザッカーマンダナ・ボイドが推薦の言葉を寄せている。

この本も邦訳の刊行が期待される洋書を紹介しまくることにする(2018年版)に入れるべきだった。後悔。

さて、Virginia Eubanks の『Automating Inequality』だが、「いかにハイテクツールが貧者をプロファイルし、取り締まり、罰するか」というタイトルがなかなか強烈である。要は現在 AI という言葉でまとめられるハイテク企業の武器は貧者も平等に享受できるものではなく、結果不平等と格差が自動化するという主張である。

これも重要な論点だと思うが、こちらは邦訳は出るかねぇ。

『負債論』が話題となったデヴィッド・グレーバーの新刊は、人間にあてがわれる「無意味な仕事」の勃興がテーマ 『負債論』が話題となったデヴィッド・グレーバーの新刊は、人間にあてがわれる「無意味な仕事」の勃興がテーマを含むブックマーク

ブレイディみかこさんから『そろそろ左派は〈経済〉を語ろう レフト3.0の政治経済学』asin:4750515442)を恵贈いただき、読んでいるところである(すいません、ワタシ、本を読むのが破壊的に遅いのです)。

面白く読ませてもらっているのだが、国の借金と財政破綻といった話題のところで、どうしてデヴィッド・グレーバーの『負債論 貨幣と暴力の5000年』(asin:475310334X)の名前が言及されないのかなと少し不思議だった(ワタシが読み落としているだけで、出てきているならすいません)。

デヴィッド・グレーバーの本は、他にも『アナーキスト人類学のための断章』(asin:4753102513)、『資本主義後の世界のために (新しいアナーキズムの視座)』(asin:475310267X)、『官僚制のユートピア テクノロジー、構造的愚かさ、リベラリズムの鉄則』(asin:4753103439)といった邦訳が出ており、この邦題を見ても分かる通りアナキズム寄りの人であり、みかこさん好みかと思ったのだが。

さて、そのデヴィッド・グレーバーの新刊が出ることを Guardian に抜粋されているので知る。

Bullshit Jobs: A Theory

Bullshit Jobs: A Theory

Bullshit Jobs: A Theory (English Edition)

Bullshit Jobs: A Theory (English Edition)

新刊のタイトルは『Bullshit Jobs』というなかなか強烈なものだが、要は空っぽの部屋を監視するとか、メールをただコピペするとか、一見忙しそうに見えるが、実は何の意味もないように思える仕事をしているという人が多いのはなぜかという話のようだ。これも邦訳出るでしょうな。

AI(人工知能)により人間の仕事は大方奪われてしまう――式の脅し記事をよく見る昨今ではこれは切実なテーマである。もっとも、グレーバーはこの話題について5年前から書いているので、最近の AI 絡みのニュースがもたらす不安に安易に乗っかった本ではないだろうが。

[2018年05月20日追記]ブレイディみかこさんより、「だから、「負債論」を思い出されたとすれば、それはむしろ本に書いてあることを喋っていたから(笑)」というコメントをいただきました。

[] レディ・プレイヤー1  レディ・プレイヤー1を含むブックマーク

中年オタク接待映画という声も聞いていた。実際、オープニングのヴァン・ヘイレンの「ジャンプ」に始まる80年代文化の肯定はなんだかなというところもあるのだが、それでも膨大に引用されるゲームや特撮、アニメ方面に留まらず、よくできていた『シャイニング』の再現やら、主人公達のゲームを支えるジェームズ・ハリデーを巡る裏ストーリーの構図が『ソーシャル・ネットワーク』のパロディになっているところ、そして言及される『市民ケーン』と、映画について知識を持ってるほうがよいよな、という教育的な効果を持つ作品だった。

『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』のときにも書いたが、近年は政治的状況が製作の動機となった、必然的にすっきりしない社会派映画も撮るスティーヴン・スピルバーグだが、本作は彼が本領を発揮したエンターテイメント傑作だったと思うし、あらためてスピルバーグはヤヌス・カミンスキーを切るべきだと思った。特に本作は、彼の映像スタイルが合っていなかった。

上で本作について教育的な効果を持つ作品と書いたが、それは VR(ヴァーチャル・リアリティ、仮想現実)分野についてもいえるだろう。今後は『レディ・プレイヤー1』みたいなアレ、と大枠の説明がつくのだから。本作の VR 描写に斬新な未来感がないのに不満を持つ向きもあろうが、娯楽作品である本作の教育的な効果はバカにできない。

やはりスピルバーグは観客を興奮させる術を知っている。いろいろあれど、クライマックスの「俺はガンダムで行く!」には、この世代では珍しくガンダムに何の思い入れもないワタシですら血が沸き立つものがあったしね(これについて「ダイトウ、行きまーす!」のほうが良いという町山智浩さんの指摘はズレまくっていると思う。あの場面でモノマネかますってバカでしょ)。そういう瞬間を観客に提供できることこそ映画の素晴らしさだろう。

演者では、マーク・ライランス『ブリッジ・オブ・スパイ』のときからすると、年齢設定的にかなりスレスレな役をやっているのだが、さすが名優である。あと彼の元相棒をやっているのがサイモン・ペッグで、本作では彼はスーツ側の人間なのだが、ミッション:インポッシブルスター・トレックスター・ウォーズ、そして遂にはスピルバーグの映画出演って、世界一幸福なオタクだねぇ。

あと『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』でのボブ・オデンカークに続き、本作では『マスター・オブ・ゼロ』でおなじみリナ・ウェイスが起用されており、今隆盛を誇るテレビドラマ界からちゃんと人材を引っ張ってきているのはさすがである。

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