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ティム・ウーの新刊『大企業の呪い:新たな金ぴか時代における独占禁止法』が今秋出る

「ネットワーク中立性」という言葉の発明者として知られるティム・ウーの本は、2年前に取り上げているが、結局邦訳は出ないのかな。

さて、前作から2年で新作が出ることを調べものをしていて知った。

The Curse of Bigness: Antitrust in the New Gilded Age

The Curse of Bigness: Antitrust in the New Gilded Age

今回はページ数が170ページということで、これまでよりも分量が少ない。気になるのは『大企業の呪い:新たな金ぴか時代における独占禁止法』という本のタイトルである。

「金ぴか時代」とはアメリカにおいて資本主義が急速に発展を遂げた1870〜1880年代あたりを指し、ウィキペディアによると、「拝金主義に染まった成金趣味の時代として扱われることが多く、政治腐敗や資本家の台頭、経済格差の拡大を皮肉った文学者、マーク・トウェインらによる同名の共著小説に由来する」とのこと。つまり、現在を新たな「政治腐敗や資本家が台頭し、経済格差が拡大する時代」とウーはみなしているわけですな。

また「大企業の呪い(The Curse of Bigness)」という題名は、独占禁止などの合憲性を主張し、労働者の基本的権利を守り、合衆国最高裁判所判事となったルイス・ブランダイスの同名の著作に由来する。

邦訳の刊行が期待される洋書を紹介しまくることにする(2018年版)で、巨大テック企業の脅威を訴えるフランクリン・フォア『World Without Mind: The Existential Threat of Big Tech』にティム・ウーが推薦の言葉を寄せていることを紹介したが、彼の新刊も GAFA をターゲットとしているに違いない。遂に彼も巨大プラットフォームを握るテック企業を批判するトレンドに乗るのか。

こうした巨大テック企業の独占を民主主義の危機ととらえる視座は、ジョナサン・タプリンの Google 分割論、並びに彼の著作にもつながりそうな話である。

Move Fast and Break Things: How Facebook, Google, and Amazon Cornered Culture and Undermined Democracy

Move Fast and Break Things: How Facebook, Google, and Amazon Cornered Culture and Undermined Democracy

ティム・ウーはスタンフォード大学で、ルイス・ブランダイスの『The Curse of Bigness』についての講義を行っており、それはつまり彼の新刊のタイトルでもあるので、その内容もこれを聞けばだいたい分かるだろう。英語の得意な方は、字幕付きで挑戦してみてください。

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