当ブログは YAMDAS Project の更新履歴ページです。2019年よりはてなブログに移転しました。

Twitter はてなアンテナに追加 Feedlyに登録 RSS

WirelessWire News連載更新、そして翻訳もしたぞ!

WirelessWire Newsで「ティム・バーナーズ=リーのオープンレターを起点に改めて考えるインターネットの統治」を公開。

いやぁ、またしても3回分の分量を1回にぶちこんだ、とち狂った長さになってしまいました。次回こそは短くまとめないと……。

こんな長いと途中のリンクなど辿らない人もいるだろうから、「ウェブの35歳の誕生日を祝う:オープンレター」を訳したことも告知させてもらいます。Tim Berners-Lee の文章の日本語訳です。

今回はいろんな(主に)洋書を紹介させてもらった。

オライリー本家からAI支援プログラミング本が出る

www.oreilly.com

ちょうど Publickey で「プログラミング支援AIサービスまとめ。GitHub Copilot、AWS CodeWhispererなど11種類(2024年3月版)」という記事が公開されているが、やはりこのあたりが次のねらい目なんでしょうな。AI を補助に使ったプログラミング本がオライリー本家から出る。

著者名に見覚えがあるなと思ったら、やはりオライリー本家から出ているメインフレーム開発本の著者である。

メインフレームから AI まで、守備範囲が広いな! と思ってしまうが、この人はそれこそ Web3 本も書いており、守備範囲の広さは伊達じゃない。

思えばワタシも2020年に「AIとのペアプログラミングは可能だろうか?」というエントリを書いているが、LLM のおかげでそんな段階を突き抜け、ペアプログラミングどころか主にコードを書いてくれるのが AI の側という人も増えているわけである。

要件、計画、設計、コーディング、デバッグ、テスト、文書化など、コード作成の全段階で AI 開発ツールを活用する方法を扱う本が出てくるのは必然でしょうな。

ウィキペディアの「2022年以降に不審死を遂げたロシア人実業家」まとめが50人を超えていた……

yamdas.hatenablog.com

これがおよそ一年半前のエントリだが、ウィキペディア英語版における「2022年に不審な死を遂げたロシア人実業家の一覧」を取り上げたものである。

en.wikipedia.org

あのページどうなっているのかなと思い久しぶりにアクセスしたら、当然ながら2022年の後もロシア人実業家で不審死を遂げた人は出ており、それを踏まえたページ名になっていた。これも一種のウィキペディアの「珍項目」と言えるだろうか。

で、数えてみたら、全部で50人を超えていた。マジかよ……。

ここで挙げられている人の中で、最近の大物となるとエフゲニー・プリゴジンになるんでしょうね。アレクセイ・ナワリヌイはリストに入っていないが、「実業家」ではないという判断か。

ジョナサン・ハイトの新刊『不安の世代』はZ世代のメンタルヘルスへのスマートフォンの悪影響を論証する

www.theatlantic.com

スマホキッズは大丈夫じゃないで」という記事タイトルがズバリそのままなのだが、アメリカの社会心理学者ジョナサン・ハイトの新刊 The Anxious Generation は、スマートフォンが今の若者、つまりはZ世代に深刻な悪影響を与え、精神疾患の蔓延を引き起こしていると説く本である。

この人の前作が『傷つきやすいアメリカの大学生たち』だったことを考えると不思議ではない展開だが、以下の表現はすごいな。

2010年代初頭、人類は自分たちの子供に対する最大の野放図な実験として、Z世代にスマートフォンを与え、火星に送って育てたようなものだ。

この本では、2012~2013年に若者のメンタルヘルスが崖が落ちるがごとく悪化したことをデータとともに示しており、それはつまりはスマートフォンが若者世代にも急速に普及した時期と重なるということですね。

これは来年あたり、邦訳出るんじゃないですかね。

ネタ元は Boing Boing

コヴェナント/約束の救出

終映ギリギリになんとか観れた。

ガイ・リッチーといえば『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』、そしてそれに続く『スナッチ』が好きだけど、その後の低迷期の作品はスルーしていた。で、マドンナと離婚して復活した後の『シャーロック・ホームズ』をテレビ放映時に横目で観ながら、おー、あのチャカチャカしたアクションの感じは健在よのーと思ったくらいで、やはりちゃんと観ていない。

実は彼の映画を映画館で観るのは今回が初めてだった。

いやー、あのチャカチャカした映像なんて入り込みようがない骨太な映画だった。

現地通訳が瀕死の軍曹を運ぶ場面にしろ、その軍曹の帰還と救出劇にしろスリリングでエンターテイメントとしてよくできている。

映画のあらすじを知り、『ランボー2』みたいなプロパガンダ映画だったらイヤだなという危惧はあったが、ジェイク・ジレンホール演じる陸軍軍曹と、ダール・サリム演じる現地の通訳という二人の「コヴェナント」を描いた映画としか言いようがない。

現地通訳に米国の移住ビザを約束しながら、多くの場合それを反故にした米国のろくでもなさをちゃんと描きながらも、クライマックスなどこれはフィクションだよなという展開にはなるのは仕方ないか。民間軍事会社のトップがやはりろくでもなさそうでそうでなく、ラストでなぜか主人公に対してドヤ顔なのを見て、「お前、肝心な時にはちゃんと電話出ろや、ボケ!」とイライラきてしまったが。

楳図かずお大美術展にギリギリ間に合った

本来なら今月分の WirelessWire News 連載が公開されてもよいころ合いだが、まったく書けてないどころか、今のところ何のプランもなかったりする。実は先週、体調を崩してしまっていた。

そうしている間に、二年前に大阪を離れた後にあべのハルカス美術館で開催されたため行けなかった「楳図かずお大美術展」の福岡での最終日が日曜日と迫っていたため、コロナやインフルでないのを検査した上で行ってきた。

『おろち』、『イアラ』、『漂流教室』、『洗礼』、『わたしは真悟』、『神の左手悪魔の右手』、そして『14歳』といった楳図かずおの作品を愛し、また多大な影響を受けてきた人間として、『わたしは真悟』の続編でもあり、ある種のパラレル作ともいえる彼の27年ぶりの新作『ZOKU-SHINGO』をどうしても観たかった。

てっきり『ZOKU-SHINGO』はすべて撮影禁止かと思い込んでいたが、前半は撮影可能であった。しかし、これは全体を見ないと仕方がないものなので、その紹介は少しにさせてもらう。

体調が完全でない状態でみたので、正直、体の具合に影響を感じるほどの迫力だった。

グッズコーナーでは、『ZOKU-SHINGO』のパーカーを買おうとかとも思ったが、そういえば以前から『わたしは真悟』の扉絵がとても好きで、これを手元に置いておきたい気持ちがあり、しかし、『わたしは真悟』の単行本(に限らず所有する楳図かずお作品)は実家に置いてあるため、扉絵のポストカードを中心に買わせてもらった。今後、辛いときに見直したい。

そして、この豆皿を所有したいという欲求にも抗えなかった。

人気ソフトウェアのオープンソースによる代替をまとめたOpenAlternative

openalternative.co

人気ソフトウェアのオープンソースによる代替まとめというのは、ブログ記事でありがちなのだが(その1その2)、そういう情報をまとめたサイトが最近になってできていた。

例えば、GitHubNotionSlack の代替を見てみると……ふーむ、なるほど。

そういえば、少し前に「『自由ソフトウェア』の開発にDiscordを使わないで」という主張が話題になったが、残念ながら(?)Discord の代替はまだ挙がってないようだ。

しかし、元々オープンソースWordPress も対象になっているのはなぜなんだ(笑)……と思ったが、自分が書いた文章の以下のくだりを思い出し、これも意味があるのかと思い直したり。

徳谷氏も「クラフトインターネット」のコンセプトへの反響に驚いたようですが、アニール・ダッシュの文章への反応で、独自ドメインの個人サイト「インディーウェブ(indie web)」を公開する手段として、Wordpress以外にもパーソナルパブリッシング用のセルフホスティングのプラットフォームがもっと出てこないといけないという意見は重要で、そのあたりがこの動きの広がりを決めるとワタシは見ています。

WEIRDでいこう! もしくは、我々は生成的で開かれたウェブを取り戻せるか – WirelessWire News

ソフトウェアのカテゴリでも見ることができる。代替情報の提案も受け付けており、このプロジェクトのソースコードも例によって GitHub で公開されている。

ネタ元は Boing Boing

ウィキペディアの幹線道路ページの編集者が「出口ランプ」を目指した理由

slate.com

ウィキペディアで幹線道路(ハイウェイですね)についてページ情報をコツコツ貢献してきたウィキペディア編集者が、一部編集者に攻撃されて敵意に直面し(たと感じ)、ウィキペディアのハイウェイ愛好家たちがウィキペディアを離脱して、AARoads というサイト、並びに AARoads Wiki という Wiki を立ち上げるにいたったという話である。

「この一見愉快なオタク同士の衝突の背後には、20年にわたるウィキペディアの基本理念や価値観を、現状における需要といかに調和させるかというはるかに差し迫った問題がある」とこの記事は分析している。

そしてこの記事では、ウィキペディア編集者でも鉄道オタクと道路オタクの気質の違いについて書かれていて、鉄道オタクは公共交通機関に関する記事を充実させる傾向にあり、道路オタクは題材の即時性に惹かれる。また、アメリカでは車社会なので、鉄道よりも道路に惹かれる人のほうが多い。

そして、ウィキペディア執筆で重要な信頼できる情報源の解釈が、道路ページの編集で問題となった。ウィキペディアの道路オタク編集者が運輸局のページを情報源として使用しようとすると、これは一次資料(一次情報源)だからと他の編集者に拒否されてしまう傾向にあり、軋轢が生じた。

ウィキペディアの記述は新聞など信頼できる二次資料に基づくべきだというけれど、地方紙が弱体化してしまった現在、それを言ってたら他に情報源はほとんどないじゃないの、というのが道路ページ編集者だった人たちの言い分である。

政府機関からの情報をソースとしてはいけないというのは、例えば中国のような権威主義国家を考えればもちろん根拠がある話だし、独自研究禁止のポリシーも、疑似科学が入り込むのを防ぐ意味で重要なのは分かるが、道路ページ編集者たちの不満とは折り合わなかったようだ。

かくして AARoads Wikiウィキペディアから分離独立したわけだが、現状はウィキペディア英語版における道路ページのフォークがほとんどである。また、離脱先でもこのプロジェクトがハイウェイだけにフォーカスすべきか、もっと幅広く道路を網羅すべきか論争が起きているとのことだし、AARoads Wikiウィキペディアの両方に参加するユーザも残っており、一筋縄にはいかないようだ。

この記事は、「隣の芝は青い(The grass is always greener on the other side)」にかけて、「隣の舗道が平らとは限らない(The pavement isn’t always smoother on the other side)」という文で終わっている。

そういえば、日本では先ごろ「アニヲタWiki(仮)」に“怪しい広告”で騒動なんて話があったが、Wiki をめぐってトラブル(やフォーク)が起きるジャンルにもお国柄がありますな。

ネタ元は Boing Boing

トム・スタンデージ『ヴィクトリア朝時代のインターネット』が文庫で復刊される

一ノ瀬翔太さんの投稿で知ったのだが、トム・スタンデージの『ヴィクトリア朝時代のインターネット』がハヤカワ文庫から復刊される。ワオ!

ヴィクトリア朝時代のインターネット』には、ちょっと申し訳ない思い出がある。10年以上前になるが、トム・スタンデージのこれと『謎のチェス指し人形「ターク」』が NTT 出版から出たとき、訳者の服部桂さんから2冊ともご恵贈いただいた。

『謎のチェス指し人形「ターク」』については読書記録を書いたが、『ヴィクトリア朝時代のインターネット』についてはタイミングなどの問題があったか、読書記録を書けなかった。

そのことをジョージ・ダイソン『アナロジア AIの次に来るもの』を読んだときに思い出したのもあり、今回の文庫版での復刊を嬉しく思う。題材が題材ですから、10年以上経とうが変わらず面白い本ですよ。

また、これでトム・スタンデージの名前が再注目され、「車の黄金時代の終焉」について書かれた(現時点での)新刊の邦訳にもつながらないものかとも思う。

セミリタイア状態だった名優クリストファー・ウォーケンが『デューン 砂の惑星 PART2』で映画復帰した理由

fandomwire.com

ワタシもこよなく愛する名優クリストファー・ウォーケンだが、『デューン 砂の惑星 PART2』が4年ぶりのスクリーン復帰であり、この記事では「セミリタイア状態」だったと表現されている。

もちろんその間、まったく仕事をしてなかったわけではなく、スティーヴン・マーチャントが手がけた英国のコメディドラマ The Outlaws に出演し、劇中、ウォーケンがバンクシーの壁画を塗り潰してしまった(!)のが世界的にニュースになったりもした(このドラマ、日本ではどこで観れるのだろうか?)。また、Apple TV+ のドラマ『セヴェランス』にも出演している。

ウォーケンがバンクシーの画をペンキで塗りつぶす場面は、以下の動画の7分30秒過ぎをごらんください。

しかし、かつて引退について聞かれ、「いや、考えたこともない」とキッパリ答えたウォーケンが、4年も映画に出ていなかったこと自体、現在のハリウッドを象徴している、とみる向きがあるのも分かる。

その彼が『デューン 砂の惑星 PART2』の皇帝役でスクリーン復帰したのは喜ばしい話だが、その理由を以下のように語っている。

もちろん、『DUNE/デューン 砂の惑星』第一作は何度も観ていた。大好きだし、ドゥニ・ヴィルヌーヴの映画には敬服していた。『メッセージ』は素晴らしかった。しかも、これほどの素晴らしい俳優たち――ハビエル・バルデム、ジョシュ・ブロ―リン、ティモシー・シャラメ、フローレンス・ピュー、ステラン・スカルスガルド――とブダペストという美しい都市に一緒にいられる。むろん、それで生計を立てているのだしね。私にはたった三週間だったけど。つまり、すべてが魅力的だったんだよ。

どうやら大好きなブダペストに行けるというのも大きなポイントだったらしい(笑)。

しかし、「それで生計を立てている」と付け加えるところで、ワタシが何度も引用する彼の素晴らしい言葉をやはり思い出してしまうのだ。

他にできることが何もないんだよ。私には趣味がない。子供もいない。テニスやゴルフもしない。文章を書いたり画を描いたり、役者がするような余芸をやってみようとしたこともあるが、気に入らなくてね。私にできることは、健康を保ち、できるだけ長く演技を続けることだけなんだ。

クリストファー・ウォーケンのキャリアを振り返るインタビューがグッときた - YAMDAS現更新履歴

かくしてクリストファー・ウォーケンは SF 大作で復帰を実現させたわけだが、この記事では彼が『スター・ウォーズ』第一作でハン・ソロ役のオーディションを受けていた話にも触れている。そのオーディションの際にウォーケンの相手役を務めたのは、ジョディ・フォスター(!)だったそうな。これは知らなかった。

【藤井聡太八冠】将棋アマ四段の免状を取得した【羽生善治会長】

yamdas.hatenablog.com

もう5年以上前になるのだが、羽生善治九段が竜王戦に勝って永世七冠を達成したのを受けて、羽生善治の名前が入った免状を手にできるのもこれが最後の機会だろうとアマ三段の免状を取得した(実際、翌年の竜王戦で羽生さんは広瀬章人九段に敗れ、無冠となっている)。

これを超える機会はワタシが生きている間に来ないと確信したわけだが、その後、藤井聡太さんが将棋界を席巻したのはご存じの通り。そして、遂には昨年、八大タイトルを全冠制覇するに至った。

一方で、羽生善治九段は無冠のままで、通算タイトル獲得数100期の達成は果たせていないが、やはり昨年、日本将棋連盟の会長に就任している。

前回のエントリにも書いたように、将棋の免状には、竜王、名人、そして日本将棋連盟会長が署名する。つまり、今免状を取得すれば、そこには藤井聡太八冠(竜王・名人)と羽生善治会長の新旧史上最強の棋士の名前が並ぶことになる。これは歴史的事態だ!

やはり前回のエントリに書いたことだが、アマ四段の免状を取得する資格は既にある。しかし、それは将棋倶楽部24における瞬間風速で得た資格というだけで、とてもではないが自分にアマ四段の実力がないことは分かっている。それを言うなら、アマ三段の実力もないわけだが、ともあれ少し逡巡するところがあった。

けれども、この機会を逃したら絶対後悔するのも分かっていたし、偶然にも今なお日常的に遊んでいる将棋倶楽部24において、また四段にほぼ達する(あと2点!)ところまで来たため、これはやはり免状を取得しろということなのだろうと都合よく考えることにした。

そうして昨年10月に免状を申請したのだが、しばらく経ち、12月に入ったあたりで日本将棋連盟から以下の文面のメールが来た。

免状の発送は注文した日から「5~7か月」ほどかかるって!? 考えることは皆同じらしい(笑)。日本中のアマ有段者が免状取得を応募したんだろうな。

正直、特に急ぐ気持ちはないので大船に乗ったつもりで待っていたのだが、上記のメールで予告されたよりは早くに免状が無事届いた。

例によって、免状は木箱入りである。

前回の羽生善治永世七冠達成記念の時計には及ばないが、藤井聡太八冠の色紙は家宝にさせてもらう。

そして、問題の免状である。まさかこんな形で藤井さんと羽生さんの名前が並ぶ機会が来ようとは。これ以上の機会はないだろう……強いて言えば、羽生善治九段が竜王戦名人戦藤井聡太八冠を下してタイトル戦獲得通算100期達成(して羽生さんと藤井さんの名前が今回と違った形で免状に並ぶの)がそれにあたるかもしれない。

さすがにワタシはアマ五段の資格獲得は不可能なので、万が一そのときが来たら、大いに悔しがることにしたい。

以上、自慢でした。

せっかくなので、ワタシが将棋について書いた代表的な文章もよろしくお願いします。

note.com

note.com

マーク・ザッカーバーグが2004年以降に公に行った全発言のデジタルアーカイブがあったのか

zuckerbergfiles.org

いやぁ、驚いたねぇ。サイト名で「Facebookファイル」を連想するがその話ではなく、Facebook あらため Meta の創業者であり CEO であるマーク・ザッカーバーグが、2004年以降に公に行った全発言のデジタルアーカイブである。

1700をこえる文章全文、300を超える動画ファイルをアーカイブしており、マーク・ザッカーバーグという、21世紀前半を代表する大企業を作り上げた人物を研究する人であれば絶対欠かせないサイトといえる。

面白いのは、このサイトをホストしているのがマーケット大学であること。このサイトは公益があるということなのだろうが、サイト設立は2013年らしいので、10年以上やっていることになる。知らなかったな。

このサイトにザッカーバーグイーロン・マスクの金網デスマッチの映像が入る日は、残念ながらなさそうであるが。

ネタ元は Boing Boing

ローリー・アンダーソンがルー・リードのAIチャットボットを作成したって!?

www.theguardian.com

ローリー・アンダーソンというと、少し前に過去のパレスチナ支援表明を大学側が問題視したため、芸大の教授職を辞退なんて遺憾なニュースがあったが、ルー・リードの言葉やスタイルを模倣する AI チャットボットを作成しており、「私は完全に、100%、悲しいほどにはまってるんです」と語っている。

このチャットボットは、ルー・リードの言葉、歌、インタビューを学習させたもので、「ルー・リード・アーカイブ」を実現させたドン・フレミングらの仕事が基盤になっているのだろう。

しかし、ルー・リードのインタビューというと、時にインタビュアーを血祭りにしジャーナリストを「最底辺の生き物」と断言するなど当たりの強さが有名な人なので、余計なお世話ながらちょっと心配になるが、ローリー・アンダーソンの発言を読むと、止むに止まれぬ彼女の気持ちが伝わってくる。

相変わらずアンソニー・デカーティス『ルー・リード伝』を牛歩の歩みで読んでいるが、ルー・リードの女性の扱いの悪さというのはよく言われており、ローリー・アンダーソンがそれほど入れ込んでいることに、彼女との関係はそれまでのパートナーとは違ったものだったのだろうなと勝手に救われた気持ちにもなる。

さて、ルー・リードと言えば、彼の歌がタイトルの元ネタであり、それが劇中でも流れる『PERFECT DAYS』が公開されたり、こないだはキース・リチャーズが彼の曲をカヴァーしていて驚いたが、要は新しいトリビュートアルバムも出るようで、死後10年以上経って名前が忘れられないのは素晴らしいことである。

そう思いながら、調べものをしたら、『ニューヨーク・ストーリー: ルー・リード詩集』が再々発されるのを知った。これはマーティン・スコセッシが序文を書いたものではなく、30年以上前に出た彼の詩集だが、「魔法と喪失(1) バンドマジックの裏側」でも引用したプラハ来訪&ヴァーツラフ・ハヴェル会見記や、ルーによるヒューバート・セルビー・ジュニアへのインタビュー(!)など貴重な文章が収録されているので、再発されるだけでありがたいことだと思う。

落下の解剖学

本当は『コヴェナント/約束の救出』を観たかったのだが、都合と上映時間の兼ね合いでこちらになった。

裁判劇に優れた映画が多いし、子供の頃に観た『十二人の怒れる男』で陪審制を知ったのをはじめ、ワタシは映画を通じて裁判というものを学んだところがある。ワタシ自身が人生で裁判を傍聴したのは二度だけだから日本の裁判についても大して知見があるわけではないが、それでも日本と異なる裁判制度を前提にする劇はやはり興味深い。

Netflix で観た『運命の12人』で、ベルギーにおいて20年近く時を隔てて行われた2件の殺人事件について同一の被告人に対して同時に裁判を行うのに驚いたのは記憶に新しいが、本作の裁判の場面で、証人弁論の間も被告がずっと立ちっぱなしで、検察や弁護士からの質問に答えるのには面食らった。フランスの裁判は実際こうなのだろう。

さて、その裁判劇で最後に暴かれる真相は! ……と本作を法廷ミステリー映画として観ると、肩透かしをくってしまう。そうした意味でスッキリする映画ではないからだ。本作のクライマックスとなる証言にしても、証言自体が綱渡りなのでかなりひきつけられるが、それが本当だったからだから何が断定できるという話だし、結局は本作において主人公の有罪/無罪を明確にジャッジできる材料は提供されない。

ならば本作はどういう映画かといえば、裁判を通じて露になる微妙にお互い妥協してきた夫婦の多面性な関係、小説家である主人公にとっての虚構と現実の境界を描くものである。

それにしても主人公夫婦の軋轢と破綻が法廷で明らかになる決定的な場面、そこでのやりとりがこれまでであれば男女逆であること、そして同情を買おうとしない主人公のあり方がとても現在的である。特に、夫婦喧嘩の中で主人公が、小説家としてものにならない夫を明らかに見切る表情を見せるところも怖いものがあった。

もっともワタシは、かつてベンジャミン・クリッツァーさんが書いていた「いつも思うのだが、世のクリエイターは女の不倫に甘過ぎる」というフレーズをまたしても思い出してしまったわけだが。

デューン 砂の惑星 PART2

『DUNE/デューン 砂の惑星』からおよそ2年半を経て公開される続編である。IMAX での先行上映を金曜夜に観てきた。以下、未見の人はご注意を。

さて、映画館の IMAX シアター前にあったポスターを撮ったのだが、ちょっと気にならないだろうか?

本作の登場人物全員が並ぶ中で……いや、皇帝を演じるクリストファー・ウォーケンがいないな。おい、ウォーケン様をなんで除いてんだよ! ……という話ではなく、その中央にいるのが主人公を演じるティモシー・シャラメではなく、その母親を演じるレベッカ・ファーガソンであることだ。

しかし、本作を観た人であれば、それをそれほどおかしいこととは思わないだろう。

もちろん本作も主人公はティモシー・シャラメなんだけど、その主人公の行動の原動になるのは、レディ・ジェシカなんですね。

何しろワタシは原作をちゃんと読んでない勢であり、原作と比べてどうという話はできないし、前作、本作と観て、ちゃんとストーリーを理解できていないところがある自信がある(そんな自信持つな)。しかし、本作がとにかくどえらい映画であるのは分かるわけで、それを堪能させてもらった。

IMAX 体験という意味で、『ダンケルク』以来となる「体感」のある映画だった。これは IMAX で観ましょう。

コロナ禍に続く脚本家や俳優組合のストライキもあり、ハリウッドの衰退は続いているわけだが(本作でも核兵器の扱いの雑さはまさにハリウッド的だったが)、そこで2020年代における超大作を規定する作品を作る責任を正面から引き受け、必然的に作品設定を伝えるのに力を割いていた前作を遥かにこえるアクション、活劇、そして暴虐をスクリーンに設計、展開したドゥニ・ヴィルヌーヴに敬意を払いたい。

本作のラストをみると、これはここでは終わらないと分かるわけだけど、本作も順調に大ヒットし、パート3制作が実現してほしいとしか言いようがない。

[YAMDAS Projectトップページ]


クリエイティブ・コモンズ・ライセンス
YAMDAS現更新履歴のテキストは、クリエイティブ・コモンズ 表示 - 非営利 - 継承 4.0 国際 ライセンスの下に提供されています。

Copyright (c) 2003-2023 yomoyomo (E-mail: ymgrtq at yamdas dot org)