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yomunelの日記 Z

2018-01-15 (Mon)

本とサンドイッチ

 いろいろなことが手に負えなくなってくると、私は野草の本とサンドイッチ二個をポケットに入れて、スタテン島の南岸へ行き、海岸沿いの古い共同墓地をぶらぶらと歩く。(p.211)

ジョゼフ・ミッチェル作品集の第二弾『港の底』に収録されている「ジョージ・ハンターの墓」のこの冒頭部分を読んでいて、「本とサンドイッチ二個をポケットに入れて」っていうのがさすが本場というか、全然わざとらしくなくていいよなと思った。うっかりマネをすると、気取った感じにならないようにしているけれども、どうしても漏れてしまう気取った感じ、をもて余すことになる。

今日は珍しく昼休みがとれたので、コートのポケットに財布と文庫本(絲山秋子『忘れられたワルツ』)を入れてランチに出る。セルフのうどん屋で、かけうどんにちくわ天とねぎと生姜をどっさり、一味をひと振りして、鼻水を拭き拭き、ハフハフ食べる。空腹の胃袋にしみわたる。天ぷらの衣が溶け出したおつゆがおいしくて、飲み干してしまった。ほてりを冷ましながら途中のベンチに座って、『忘れられたワルツ』の最後の「神と増田喜十郎」を読んでしまう。4年ぐらい前にも読んでいるはずなのに、いったい私は何を読んでいたのだろう。絲山秋子の本を読むと車でどこかへ行きたくなる。自分もNR(ノーリターン)だったらいいのにと思いながらきちんと時間通りに職場に戻った。

先週読んだ本。高橋順子『夫・車谷長吉』(文藝春秋)ふ、夫婦って……。松村圭一郎『うしろめたさの人類学』(ミシマ社)。角田光代 河野丈洋 『もう一杯だけ飲んで帰ろう。』(新潮社)これも夫婦もの、おなか空く。

2018-01-07 (Sun)

ハロー、2018年

年が明けてからもう1週間が経っていた。お正月は、起きている時間は常に何かが口の中にあり、らくだのようにもぐもぐさせていたのが、仕事始めの4日からは、朝から退勤するまで何も口にできず、断食道場に放り込まれたような3日間だった。メリハリありすぎ。この連休でやっと一息つける。摂りすぎた栄養は1週間単位で調節すればいいと昨年読んだ松永和紀の新書に書いてあった。それに従えばこの1週間でプラマイゼロになるはずだが、体重は大幅にプラスに傾いたままでやばい。

仕事始めの日、朝礼でひとりずつ今年の抱負を言わされた。右手で左の二の腕を握る「ねじ式」の人のポーズで立って(朝礼のときはいつもこのポーズ)、「えーと、スペシャルなことが何も起きずに、平穏な一年を過ごせたらいいと思います」とあまり抱負っぽくないことを言った。とくに反応なし。

犬と暮らしている友人が多く、年賀状に毎年犬の写真を載せてくるので、今年は戌年、○○ちゃん(犬の名前)元気ですか?なんて他に書くことがないので犬ネタでお茶を濁していたら、なんと3人の友人の年賀状に、○○は昨年天国に旅立ってしまいましたとあった。あちゃー、この間の悪さ、傷口に塩を塗るというか、なんか音声のズレで噛み合わない衛星中継のようなことになってしまった。

お正月に持って帰った食料もなくなったので、買物がてら散歩に出る。スーパーで食品を買い、本屋をのぞき、ブレンドとドーナツで休憩しながら少し本を読んでから帰る。やっといつもの生活が戻る。落ち着く。

読んだ本。旧版の小野博『世界は小さな祝祭であふれている』(モ・クシュラ)よかったのだけど、一人称のカタカナの「ボク」が読みながら魚の小骨のようにずっと引っかかっていた。いとうせいこう『「国境なき医師団」を見に行く』(講談社)。綿矢りさ『勝手にふるえてろ』(文春文庫)「自分で自慢をふったくせに謙遜されると、頼んでもいないのにあざやかな手つきで手品を披露された気分になる」ふふふ。

なにか新年ぽいというか、正月ぽい本をと思っていたが、結局いつも通りの行き当たりばったりの読書になってしまった。今年も気の向くままいろいろ読んでいきたい。古い本も読みたい。

2017-12-31 (Sun)

静かな年末

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30日。仕事納め。穏やかな晴天が続いている。今日も電車は空き空き。なんとか仕上げた年賀状を出勤途中に投函。ポストの左側が年賀状用の投函口になっている。輪ゴムで束ねた年賀状をかばんから出し、輪ゴムをしたままか、外してから投函するか迷う。投函後にポストの中でひっちゃかめっちゃかになる年賀状が浮かび、結局いつも輪ゴムをしたまま投函するのだけれども、出前の重箱を返却する際、きれいに洗ってから返されたものもどうせまた洗うのだから、かえって迷惑みたいなことを武田百合子が書いているように、こちらがよかれと思ってやったことも、相手から見ると余計なおせっかいかもしれない。輪ゴムを外す作業が手間!とか輪ゴムごみが大量に出る!とか。あれこれ考えても正解は見つからず今年もまた輪ゴムをしたまま投函する。

最後の仕事を終え、カレンダーやお菓子や果物を分け合い、よいお年をと事務的に口にしながら退勤。大きな買い物袋を両手に提げた人たちが、足早に行き交う年の瀬の街を抜けて帰り、冷蔵庫のなかを整理し、明日の帰省の準備。ふう、今年もなんとか無事に終わりを迎えられた。


■日記ブログは、今ではもう平野ノラが持っているデカい携帯電話のように時代遅れの感じになっていますが、そのまどろこしさと、遠い距離感が自分にはちょうどよいと思っています。スピードや情報はほどほどでいい。何かを検索していて間違ってこのブログにたどりつき、うわ、自分語りうざっ!と1度きりになる人がほとんどだと思いますが、そんななか、今年もコメントやメールをくださった皆様どうもありがとうございました。とてもうれしかったです。どうか来年がよい年でありますように。(写真は心斎橋アセンス書店の津村さんのPOP)

2017-12-29 (Fri)

シチュエイション大賞

明日まで仕事があるが、昨日ぐらいから電車が空いているのがありがたい。座ってゆっくり本を読める。でも帰りは、疲れと、電車のほどよい振動と、足元から出てくる暖気で、目がトロンとしてくる。

今年読んで印象に残っている本(順番は適当)

  • 滝口悠生『茄子の輝き』『高架線』
  • 松浦理英子『最愛の子ども』
  • エリザベス・ストラウト『私の名前はルーシー・バートン』
  • 津村記久子『エヴリシング・フロウズ』
  • 柴崎友香『わたしがいなかった街で』
  • 彩瀬まる『あのひとは蜘蛛を潰せない』
  • 春日武彦『鬱屈精神科医、お祓いを試みる』
  • 平田俊子『低反発枕草子』
  • 武田百合子『あの頃』

今年は、なんといっても滝口悠生イヤーだった。「寝相」「わたしの小春日和」も好き。『私の名前はルーシー・バートン』は薄い本だけど、ズシンときた。翻訳小説で真っ先に頭に浮かんだのがこれだった。津村記久子の最後の未読本『エヴリシング・フロウズ』とてもよかった。『ウエストウイング』も読み返した。これに登場する梅北地下道が先日閉鎖され、通ったこともないのに何だか寂しかった。柴崎友香は『千の扉』もよかったけれど、桜の季節に読んだ『わたしがいなかった街で』が好きだった。「入江さんがルワンダに行こうとして死んだことを知ったときに、わたしにとってはルワンダという場所が存在し始めた。地図に書いてある名前ではなく、こことつながった場所として、歩いて行けばいつか辿り着く、同じ時間を生きている場所として、存在するようになった」 抜き出したい箇所がたくさんある。新潮のアメリカ滞在連作シリーズも毎回たのしみ。春日武彦は前作の「占いにすがる」よりもこちらが自分には面白かった。イヤオモ。

そして今年のシチュエイション大賞は、初夏の軽井沢でやわらかな木漏れ日を浴びながら読んだ、たいへん重苦しい角田光代『坂の途中の家』でした。

今年も面白い本をいっぱい読めてよかった。本の好みは少しずつ変わっていくものなんだなあと感じています。エヴリシング・フロウズ。相変わらず映画は何を見ても面白いです(目が痩せている)。

2017-12-24 (Sun)

スキヤキスト

木箱に入った牛肉をもらったからすき焼きをするよと友人から誘いがあり、昼ごろに出かける。別の友人がケーキを持ってくると言っていたので、ビールやチューハイを買って行く。自分が飲まないので何の銘柄がいいのかさっぱりわからない。なんか名前にプレミアムとかが付いてればいいんじゃね?と適当に選ぶ。すき焼きの最後に入れたうどんがめちゃくちゃおいしかった。クイーンズリングが余計なことをしてくれたと友人が立腹している。

正木香子『文字と楽園 精興社書体であじわう現代文学』(本の雑誌社)をたいへん興味深く読んだ。精興社書体には前から興味があったが、素人なので、なんとなくエレガントっぽい、という「なんとなく」とか「っぽい」とか、おおざっぱな雰囲気でしか、どこがいいのか言い表せなかった。これを読んで、へえと思ったことがたくさん。

  • 荒川洋治の「ぼく」のよさ
  • 川上弘美『センセイの鞄』は単行本(石井中明朝体オールドスタイル)、文春文庫(凸版明朝)、新潮文庫(精興社書体)とすべて書体が違う
  • デザイナーの葛西薫が『村上ラヂオ』の本文で精興社書体を使おうとしたところ、「高雅に過ぎる」と著者の意向で変更になった
  • 「精興社ありき」ではじまった新潮クレスト・ブックスは、短篇、中編、長編など内容に合わせて本文の組みかたにいくつかパターンがある
  • 精興社書体で芥川賞受賞作品が出版された作家は、野呂邦暢、大江健三郎、堀江敏幸の3人だけ
  • 安野モヨコ『食べ物連載 くいいじ』のハートマークについて

など面白いエピソードが色々紹介されている。『くいいじ』また読みたくなっちゃった。

先週、赤染晶子のエッセイを読みたくなり、図書館で検索をしたところ、『ベスト・エッセイ2011』に収録されている「かまい」と『ベスト・エッセイ2013』に収録されている「書道ガール」の2編が本の形で読めることがわかりさっそく読んでみた。「かまい」は前に読んだのを覚えていたが、もちろん面白く、「書道ガール」はここ最近でいちばん笑った気がする。村上弘明。京都新聞に連載されていたというエッセイもまとめて読んでみたい。