an-pon雑記帳 このページをアンテナに追加 RSSフィード

2011-11-08

『素敵なダイナマイトスキャンダル』末井昭

素敵なダイナマイトスキャンダル (ちくま文庫)

素敵なダイナマイトスキャンダル (ちくま文庫)

 ≪編集する人びと・番外編≫

たぶん、私はそれほどお世話になることはなかろうパチンコ雑誌やエロ雑誌の編集してる、西原マンガでもおなじみ末井どん。雑誌の内容はよ〜知りませんが、あんまりケッタイな人なので取り上げてみました(笑)。
母上がこともあろうにダイナマイトを使って不倫相手と心中するというキョーレツなエピソードから始まり、エロ本作りにまつわるドタバタ話を中心にした著者の青春記といった趣です。と言っても、アラーキーとか赤瀬川さんとか大物、けっこうからんでます。あなどれません。
「エロ本のテクニックはいかにうまく予告編を作るかなのであって、ガバッは反則なのだ。このウラ本と呼ばれているガバッには、精神的余裕というものがまったくありません。」なんて言葉には、なるほど、ナニゴトにも哲学ありか・・・などと思ってしまう。
ただの「ボーヨーとした人物」(by南伸坊)かと思いきや一筋縄ではいかぬ面ももちろんあります。なかなかに観察眼が鋭く行動力もありながら、物事に執着心全くないし(奥様にだけは執着があったようですが!)、金銭感覚もまともじゃないし、あらゆる面で身を守るっていう本能的なものも若干欠けておるようです。そのニヒリスティック味とマヌケ味が絶妙・・・と言えなくもない。つかみどころのない脱力感を味わってみてください。 
(2006.3.4記)


>追記
あまりにも自分と違う人って、逆に興味がわくものです。
こちらもいかがですか。分厚いですよー(笑)。

絶対毎日スエイ日記

絶対毎日スエイ日記

『私の岩波物語』山本夏彦

私の岩波物語 (文春文庫)

私の岩波物語 (文春文庫)

  ≪編集する人びと・その四≫

一刀両断、単刀直入。心に抜き身の刀を持った大人(たいじん)です。温厚な好々爺にしか見えないのに、これだから老人は油断ならん(笑)。
著者はインテリア雑誌である『室内』の編集者でもありましたが、この書は岩波書店講談社などを創業した人物伝を中心に、明治の出版文化から現代の広告事情まで幅広く書かれたものであります。流通はもちろん、紙や印刷や製本の歴史まで知る事ができます。
なにしろ出版・広告業が賤業(!)といわれていた大昔の話ですから、勉強になるうえに無類の面白さ。歴史を語る中に人物の息遣いが聞こえるようです。こういうものを読むと、現代が何を得て何を失ったかを考えずにはいられません。
やはりインテリではなく、職人がお好きのようで、前述の『暮しの手帖花森安治も登場しています。『室内』との共通点と相違点に人間の違いがあらわれていておもしろい。
そして、山本翁は世界の松下だろうが電通だろうが朝日新聞だろうが全く臆することなく批判します。痛快です。知識人の権威であるところの岩波書店を「国語の破壊者」などと彼以外に誰が言えるでしょうか。

出版・広告業界に生きる人の必読の書と思われますが如何。
(2006.3.1記)


>追記
夏彦翁いろいろ読んでいます。
こちらもぜひ。

誰か「戦前」を知らないか―夏彦迷惑問答 (文春新書)

誰か「戦前」を知らないか―夏彦迷惑問答 (文春新書)

『花森安治の編集室』唐沢平吉

花森安治の編集室

花森安治の編集室

 ≪編集する人びと・その三≫

暮しの手帖」。つつましい奥様のような雰囲気のこの雑誌が実は反骨魂あふるるチャレンジャーであることをご存知でしょうか。一切の企業広告を拒否し(!)、大手メーカーの商品の良し悪しを見極めるため、ブッ壊れるまでテストする。(←言うまでもなく大変な作業です、これは・・・)消費者にとって大事な情報だけを洗練された形で伝えようとしました。(あ、今もやってますね)
その編集長が有名な花森安治ですが、容貌魁偉にしてとてつもないかんしゃく持ち、鬼のように編集部員から恐れられていました。当時、編集部員の一人であった著者がおずおずと(よっぽど恐かったんだろうなぁ〜)その姿を書き綴ります。こんなのが上司だったら早晩ノイローゼになるところですが、「なんちゅう無茶苦茶なおっさんや〜」と笑ってればいいのでのん気なもんです。
花森安治を評するのに、多くの人が「職人」という言葉を使っています。決して妥協せず、何から何まで自分ひとりでやってのけました。おもしろいのは、その人柄からは想像もできない、やさしい、品のある絵や文字を書いたことです。「すてきなあなたに」「すばらしき日曜日」などタイトルもとても上品です。本中には多くのイラスト(カラーにして欲しかったな!)や手書き文字も載せており、その人物とのギャップを楽しんでいただきたいと思います。
 
このような暴君編集長はもう旧時代の滅びゆく存在でありましょう。しかし、まさに魂をかけて雑誌作りをする、そういう人がひとり、またひとりといなくなってしまうのは、どうにもさみしいものですね。
(2006.2.27記)


>追記
『エプロンメモ』もかわいい。

エプロンメモ

エプロンメモ

たしか、今の「暮らしの手帖」の編集長も有名ですよね。

『編集狂時代』松田哲夫

編集狂時代 (新潮文庫)

編集狂時代 (新潮文庫)

 ≪編集する人びと・その二≫

筑摩書房の偉い人です(笑)。前述の安原さんとは全くタイプが違ってこちらはソフト。雑誌のモデルになるくらいの洒落者でもあります。
松田さんの編集者人生は、その時々のイキのいい人をかぎつけるのがうまく、またそういう人が自然に集まっちゃって楽しく遊んでたらそれが仕事に・・・というノリで始まっています。『ガロ』の面々(奇人ぞろい!)との交流、赤瀬川原平南伸坊藤森照信らとの「路上観察学会」の活動など、いつも本人が一番楽しそうです。でも、好きなこと、興味あることには尋常でないほどの「凝り性」の面をのぞかせ、なるほど「編集狂」であるわいと深く納得したりするわけです。
天下の遅筆・井上ひさしや超曲者・野坂昭如ら作家との〆切をめぐる攻防や、精根こめた雑誌がすぐ廃刊になったり、会社が倒産したり(!)修羅場をくぐっているはずなのに、なんとなく飄々とした雰囲気が漂うのは、やはりお人柄なのでしょう。

個人的には、60〜70年代の赤瀬川さんが思いのほかアグレッシヴなアーティストであったこと、著者と安野光雅氏との意外な関係が発見でした。
「ええな〜、こんな面白そうな仕事、オイラもやってみてえ〜」という感想をお持ちになると思います。若者よ、編集者を目指せ! 
(2006.2.24記)


>追記
松田さんは人気TV番組で、本の紹介などされていたようですが・・・
私とは好みが甚だしく異なることが判明(笑)、まあしかし、好みは人それぞれですからね。

『編集者の仕事』安原顕

決定版「編集者」の仕事

決定版「編集者」の仕事

 ≪編集する人びと・その一≫

本と映画の批評に関して、私は中野翠さんとこの安原顕さんを全面的に信用しております。その安原さんとの出会いの書であり、バイブルでもあるこの一冊。彼の死で数少ないナビゲーターを失ってしまったけれど、ここに登場する本を読むだけで一生かかりそうです・・・。
著者が手がけたのは『パイデイア』『海』『マリ・クレール』『リテレール』等々、すべていわゆる純文学・思想・芸術系の雑誌です。その長い長い編集者生活の中でのさまざまな出会い、膨大な企画(雑誌の目次の羅列!)とその思い出などが綴られます。
この人けっこう短気な人でして、無礼な物書きとか無能な上司とか出版業界の理不尽さ(詳しくは読んでいただきたい・・・)をえらい剣幕で怒っています(笑)。その「怒」モードにただならぬパッションを感じます。口は悪いが、みな正論だし。一度怒りだしたら社長はモチロン、大権威である大江健三郎にだって逆らっちゃうよ。
この「決定版」では、武田百合子野坂昭如山田風太郎色川武大吉増剛造谷川俊太郎らのインタヴューも読むことができます。

スリリングな小説を読みたい、アグレッシブな新人に出会いたい、良い雑誌を作りたいという気持ちだけで、損得省みず全力疾走した人でした。いなくなって本当に寂しい。
(2006.2.22記)


>追記
今でも何か事件が起こるたびに、この人だったらなんていうかなあ、と思ったりします。この本読んでほしかったな、とか。
憎まれっ子世にはばかる・・・はウソですね(笑)。
亡くなる直前まで書いてました、こちらも。

ファイナル・カウントダウン―ヤスケンの編集長日記

ファイナル・カウントダウン―ヤスケンの編集長日記

『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』本谷有希子

腑抜けども、悲しみの愛を見せろ

腑抜けども、悲しみの愛を見せろ

BSで大きく紹介されてたくらいだから、そのスジ(どのスジだ)では有名な人なのでしょうか。著者はまだ20代の若さ。それにしてもなんという挑発的なタイトル、装丁山本直樹祖父江慎!!)でありましょう。これだけかましといて中身がヘタレだったら、おばさん、容赦しませんぜ・・・ってな意気込みだけで手に取りました(笑)。
劇団の脚本をもとにした小説らしく、なるほど密室の中で病んだ家族がだんだん崩壊してゆくさまが息詰まるタッチで劇的に展開される。しかしですね、両親の異常な事故死、家庭内暴力、虐待、近親相姦なんていうショッキングな舞台設定を次から次へところがすもんだから、つい家庭内サスペンス劇場か・・・などと思ってしまうわけだ。テレビドラマみたいなんですよね。
さすがに主人公・澄伽の「誰にも必要とされないまま死んでしまうかもしれない」存在意義を否定される恐怖に愕然とするラストシーンは迫力がありました。きっと誰もが感じたことのある不安であり、恐怖。それとどう折り合いをつけて生きていくかを描く物語のほうが、私は好みですな。
(2006.2.21記)


>追記
順調にご活躍、芥川賞候補の常連となりつつあります。すごいなあ。
しかしあいかわらず奇を衒った感じのタイトルになかなかなじめず、あんまりよく知らない。若いなあ、ってカンジ(笑)。

『今夜、すべてのバーで』中島らも

今夜、すベてのバーで (講談社文庫)

今夜、すベてのバーで (講談社文庫)

生前は、ラリ中でアル中鬱病にはなるわ逮捕はされるわで実に難儀なおっさんであったわけです。しかしこの人、とろ〜いしゃべりで皆を煙に巻き、ハラホロヒレなことを言うわりに目つきは鋭かったですよね。差向かいになったら恐いかも、というくらい。
これは自伝的な要素を多く含んだ小説ですが、アンバランスで危ういムードながら、本質的には真っ当な人であったことがよくわかる。

依存症という精神の危機を、砂山が少しずつ崩れてゆくようにリアルに描いていますが、(主人公のアル中以外の)生き生きした登場人物と、コントみたいに挿入される病院生活のエピソードによって悲壮感はありません。偽善も自己憐憫も全くなし。あの鋭い目で自分を突き放す、潔い人です。そういう人が危機をどう克服し、迫りくる越えてはならない一線をどう踏みとどまるのか。この小説は、しんどい時のちょっとした妙薬になるかもしれません。
・・・小説のラストはさわやかでしたが、現実の世界ではさあどうだったのでしょう。
(2006.2.19記)


>追記
おもしろい人がいなくなって本当に残念、とは思いますが、長生きするタイプの人ではないですね。
(・・・真っ当・・・じゃない、たぶん。笑)
早速奥方が暴露本を出したときはやれやれ・・・と思ってしまいました。
これもよく読んだな。

中島らものたまらん人々 (双葉文庫)

中島らものたまらん人々 (双葉文庫)

『不肖・宮嶋南極観測隊ニ同行ス』宮嶋茂樹

不肖・宮嶋南極観測隊ニ同行ス (新潮文庫)

不肖・宮嶋南極観測隊ニ同行ス (新潮文庫)

白髪の悪ガキカメラマン。去年京都で写真展をしていたので見にいきましたら、本人がいました。年配のお客にペコペコ頭をさげている様子を見て好感をもち、「なぁなぁ、ホンマにロシアでお姉ちゃん買ーてんの?」などとはとても聞けませんでした(笑)。
さて。なにしろ書いているのがあの勝谷氏であるので、冒頭からとばしまくり、ちょっと悪ノリしすぎているきらいもありますが、それもご愛嬌ってことで。

マイナス40度の中での観測隊の感動的な仕事ぶり、とかじゃなくて彼の下世話な興味と好奇心によって語られる隊員たちはエリートどころかただの「ヘンな奴」・・・プロジェクトX度はかぎりなくゼロに近い。まぁ、現場ってこんなんかもしれないな。キツい任務とバランスとるためにあえてキツいボケかます・・・というか。
さすがの不肖宮嶋も、南極内陸部の観測隊のあまりに過酷な労働と環境に悲鳴をあげています。「周りはクレバスだらけだから、落ちると死ぬよ。拾うの面倒くさいから、脱走なんて考えないでね」っていうセリフがグー。彼の若白髪はこの南極体験からすすんだそうです。さりげなく朝○新聞とかピースボートをおちょくったりしているところも笑える。いやぁ〜、いつでもどこでも体当たり、しかも現場で使える男っていいもんですね。 (2006.2.18記)


>追記
この度の震災でも、被災地をあちこち飛び回って働いているそうです。
政治的な発言には正直なところ「・・・!?」と思ったりもしますが(笑)、彼の怒りはいつも胸にまっすぐ迫ってきます。

不肖・宮嶋 イツデモドコデモダレトデモ

不肖・宮嶋 イツデモドコデモダレトデモ

『立花隆秘書日記』佐々木千賀子

立花隆秘書日記

立花隆秘書日記

タイトルそのまま、秘書として過ごされた約5年間の奮闘記です。
まずは「学歴なし、特技・資格なし、コネなしの40代独身女性」が500倍の競争率を突破して秘書の座を勝ち取ったことに拍手喝采。この採用試験の内容がまた、すさまじいのです。これくらい気合のはいった試験をされた日にゃ、たとえ不合格でも清々しいことでしょう。
この佐々木さんという方、文章から察するに機転がきいて実務能力に優れ、さっぱりした気性の方のようで、多くの編集者や東大の事務方や学生などに好かれたのではないでしょうか。オペラが好きで、その描写になると筆が冴えます。美しいものを大事にしたい人なのだな・・・と思います。
日常業務のあれこれから、角栄の死、阪神大震災、オウム事件・・・などの大事件まで、かの立花隆と共有した目まぐるしい時間と思いを綴ります。有名ジャーナリストの舞台裏をのぞく楽しさがあります。
ラストは思わず苦笑させられるあっけない幕切れですが、この5年でますます佐々木さんは強靭な女性になられたことでしょう。あとに続かねば!
(2006.2.18記)


>追記
この本には励まされたなー。
かっこいい40代ってやっぱいるんだ、と思ったし(←そりゃそうだ!)。
今はたしかジブリにお勤めのはず。

『女神』久世光彦

女神(じょしん)

女神(じょしん)

「女は強い、女は抽象的な問題で死んだりはしない、「産む性」に生まれついたということは、生きるということに「前向き」に出来ているものなのだ」(中野翠『甘茶日記』より)そう、したたかなリアリスト、それが女であるはず。しかしこの人は。この女性は。

小林秀雄菊池寛河上徹太郎大岡昇平など文壇の堂々たる男たちを虜にし、昭和一の骨董目利きであった青山二郎とこれまた昭和一カッコいい婆さんであった白洲正子を終生の友としながら、若くして自死を選んだムウちゃんこと坂本睦子。
この小説は、ムウちゃんの静かなモノローグの間に時折著者のナレーションが挿入される形をとって展開されます。 さすがに久世光彦、エロスが匂いたつような美文をもって、いつも物憂げに放心したようなムウちゃんの色っぽさを余すところなく描き出しています。
この人は男たちにも、生きることにも執着がなかった。疲れ果ててしまった。哀しいことです。 「愛」とはいったいなんだろうか、と少しばかりセンチメンタルな気分になれることでしょう。そういう気分もたまには良いものです。 本書に興味をもたれたら、『白州正子自伝』もあわせてどうぞ。白州正子がムウちゃんをするどく分析しています。やっぱ女の目はこわいねえ。
(2006.2.15記)


>追記
久世さんもお亡くなりになりました。
この人はなんだか、「女」というものに美しい幻想を抱いていたような気がします。なので、女の私からすると、その小説は時にファンタジーのようであったりします。
ちょっと目先を変えて、こちらもどうでしょう。

ニホンゴキトク

ニホンゴキトク

美しいチラシ

    
 
      f:id:yoneyumi0919:20111108105117j:image:w360




       f:id:yoneyumi0919:20111108105122j:image:w360

アーツ&クラフツ関係のチラシはいつもきれいだな。