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2011-11-30

東京へ行きたしと思えども

・・・あまりに遠し。

突発的に、無性に東京に行きたくなることある。東京にはなんでもある。いつでも何か面白いことが起こっている。・・・地方在住者ならではのうっすら美化された思い入れ、とでも申しましょうか。

例えばこの秋には原宿でこんなイベントがあった。
愛聴しているTBSラジオ「ストリーム」出演者によるスペシャル対談だ。登場するのは・・・淡々と、あるいは耽々とタブーに踏み込む「永田町の地雷」ことTBS政治部記者にして中国ウォッチャー・武田一顕氏。そしてご存知「赤坂の喋る時限爆弾」こと勝谷誠彦氏。この2つの爆弾を、さあどう扱うつもりだ小西さん!(←番組パーソナリティにして国際ジャーナリストの小西克哉氏。ちょっぴりお茶目)
・・・これは絶対に見逃せない。そこでチケット発売日、昼休みに鼻歌交じりに京都駅のぴあに行ってみれば、なんと発売開始わずか1時間足らずで完売したというではないか。ええええ。強面のおっちゃん3人よってたかっての政治談議だよ?一体誰が行くんだそんなもん・・・自分を速やかに棚上げして憤慨するわたくしであった。

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そして。上野国立西洋美術館「ヴィルヘルム・ハンマースホイ展 −静かなる詩情−」今月7日まで開催されていた。東京のみ、巡回なし・・・(泣)。
あまり知られていない画家だと思うけれど、それは素晴らしいものだったそうだ。

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振り向かない女性。脚の足りないピアノ。取っ手がないドア。誰もいない室内。
こうした素材を挙げてみれば内向的で不安定で、孤独や不安をかきたてられそうなものだが、彼の絵はひっそりとした落ち着きとやわらかな冬の日差しのような心地よさをもたらす。
エドワード・ホッパーが描くカラフルな「誰もいない部屋」にはなんとなく不穏な印象を受けるのに(私だけかな・・・)、ハンマースホイの部屋が密やかな安堵感をもたらすのは「人の心の色に最も近い色調を備えた作品」だからでは、という偶然目にした某ブログの評に大いに首肯したことであった。
とても見たかったのだが、気付くのが遅くて日程調整できず、無念。

他にも、ロフトプラスワンには一度は行ってみたいし、青山ブックセンターには毎日でも行きたいし、秋葉原のイカレっぷりをちらりと覗き見たいし、月島あたりをねり歩いてみたいし、おいしいお蕎麦も食べたいなあ等々思いは尽きないのである。
・・・ああまったく、ひょいっと日帰りで行けたらな〜。


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色川武大『うらおもて人生録』金子光晴『絶望の精神史』を並行して読む。

うらおもて人生録 (新潮文庫)

うらおもて人生録 (新潮文庫)

絶望の精神史 (講談社文芸文庫―現代日本のエッセイ)

絶望の精神史 (講談社文芸文庫―現代日本のエッセイ)

もちろん両者とも文句なく面白いのだけど、こんなやさぐれた爺さんのエッセイばかり読んでいては身も心もおっさんになってしまうとの危惧を抱いたわたくしは、久しぶりにドラマを、それも長編恋愛ものを読んでやろうと思い立ったのであった。


イアン・マキューアン『贖罪』。

贖罪

贖罪

映画化もされている有名な作品であり、だいたいのストーリー展開は把握していた・・・にも関わらず、作家の構成力の見事さに唸る。
思春期を迎えた少女の、戦争の、恋人たちの、老いの、この小説では様々な形の残酷が描かれる。精緻極まる情景描写と人の心が織り成すサスペンス、起きてしまったことへの悔恨の、息詰まるようなやるせなさ。そして、このクライマックスは衝撃的に予想外であった。しばし呆然とするような読後感である。
長編小説の醍醐味、ここにあり。

さ、次は山田稔さんのエッセイでも読むかな・・・ってまた爺さんかいっ。

(2008年12月16日記)

魅惑のつぎはぎ

小西康陽のコラム『ぼくは散歩と雑学が好きだった。』をチラチラ眺めておりましたら、お気に入りレコードジャケットを取り上げるコーナーがありましてね。さすが名だたるレコードジャンキーによるセレクト、初めて見るものばかりだったのですが(知ってたのは「原子心母」くらい)ポップでキュートなものばかり。あれこれ選んだり、それについて話すのがとても楽しそうで(音楽に全っ然詳しくない私ですが)ついついやってみたくなったのでございます。改めて数少ない私のコレクションから「おおっ、このジャケットいかす!!」と思いつつ買ったものを並べてみましたら、なんかあからさまに好みの傾向が。

まずは・・・毎回ジャケットが凝っていることで定評があるローリング・ストーンズ。タイトルも最高、Exile on Main St. 「メイン・ストリートのならず者」

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並べてみるとストーンズへのオマージュに見えなくもありません。
U2「Achtung Baby」

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・・・そうなんですよ。
写真とか絵をつぎはぎ、切り貼りして一見ごちゃごちゃしているのにスタイリッシュ、というのがすごく好きなんです。
魅惑のつぎはぎ・・・はい、Collageと言えってカンジですね(笑)。

このセピア調がたまらない。至福のベルベットボイスによるR&B、 Neville Brothers 「Family Groove

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スイートなギターの音色をあなたに。 Pat Metheny 「Secret Story
 
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・・・このかっこいい欧米の方々にタメをはれるつぎはぎ(←しつこい・・・)といえば・・・
これなんかどうだろう。クレイジー・ケンバンド。
どっからみても「そのスジの方」っぽい横山さんですが、
実はサービス精神旺盛なエンターティナーです。ライブ楽しいです。

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いやいやこちらはどうだ。
音楽を作った人もジャケットを作った人も日常的に宇宙と交信中。細野晴臣「はらいそ」

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・・いや。最強はやはりこれだ!(CDジャケットじゃないけど!)

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<おまけ>・・・こういうのもたまんないです。

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以上、つぎはぎと切り貼りの魅力(?)をお届けいたしました。


(2008年12月1日記)

幸福ってなんだっけ。

フランス映画『幸福(しあわせ)』を観る。監督はアニエス・ヴァルダ。

幸福 [DVD]

幸福 [DVD]

なんでまた今頃60年代ヌーヴェルバーグの恋愛モノ(実は苦手・・・)を観たかというと。私は町山智浩さんの映画評ポッドキャストを愛聴しているのだが、毎回B級映画を俎上に下ネタ絡みのバカトークを繰り広げているというのに、この映画評では「・・・これはね、怖い怖い映画ですよ。ホラーより怖い」と淀川長治風に声を潜めて語り始めたのである。世界中のエグい映画を観まくっているアナタが怖いだって?ヌーヴェルバーグといえば、小粋で知的な映画の代名詞でしょうが・・・と興味を持っていたら、先日たまたまBSで放送されたのである。おおなんとタイムリー!

若く美しい妻と天使のような子どもたちといい仕事に恵まれ、夢のように幸福な日々を過ごすフランソワ。ところがある日、都会的で情熱的な女性と恋人関係になってしまう。その事実をためらいながらも妻に告白、「2人の女を愛して僕はとても幸せだ。この愛を止めるなんてバカげてる」などと言って、こともあろうに家庭生活と愛人関係を両立させようともちかける。妻はさほど取り乱す様子もなく、「あなたがそれで幸せなら、私も幸せよ」と微笑むが・・・。

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ソフトフォーカスで撮られた田園風景は眩く美しく(ピエール=オーギュストとジャン、両ルノワールから多大な影響を受けているとのこと)、それに対応する街のポップな色遣いとカメラワークの面白さに見どころが多いけれど・・・なんともいやな話だねえ、これは。ある種の鈍感さ(無邪気とはいわせないよ)は時に人を死に追いやることさえあるというのに、そこには一片の悪意も、悔恨すらないのだ。醜いエゴや、誰にも気付かれることのない犠牲の上に成り立っているかもしれない「幸福」。町山智浩が「胸がむかつくような違和感」と表現したものを「幸福」と名づける監督の、このアイロニー。
説明的な描写が一切されない、ある意味不親切な作品なので、人によって様々な解釈が成り立つことでしょう。いろんな人の意見をきいてみたいところです。

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ところで「幸福」の何たるかを語った書物・格言の類は古今東西あまたあるものと思われます。・・・が、著者がこの人でなければ手に取ることはきっとなかった。
福田恆存『私の幸福論』。

私の幸福論 (ちくま文庫)

私の幸福論 (ちくま文庫)

まっすぐこちらの目を見据えたような誠実でやさしい口調でありながら、内容は鋭く辛辣で大いに面食らいます。
「唯一のあるべき幸福論は、幸福を獲得する方法を教へるものではなく、また幸福のすがたを描き、その図柄について語ることでもなく、不幸にたへる術を伝授するものであるはずだ。」中野翠が解説で取り上げたこの言葉をかみしめつつ、ぐるぐると低空飛行を繰り返し、読者が己の力で高度を徐々に上げていく・・・そんな感じの本です。

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前述しました「幸福論」もそうですが、このところちくま文庫から目が離せません。
波乱万丈の人生だと自ら言いたがる人は世の中に大勢いるわけですが、まごうかたなき正真正銘の「波乱万丈」をちくま文庫から選んでみました。ご賞味あれ。

◆『田中清玄自伝』

田中清玄自伝 (ちくま文庫)

田中清玄自伝 (ちくま文庫)

インタビュー形式なのでサラッと読めますが、そのサラッと話す内容がものすごい。度肝を抜かれます(笑)。“謎に包まれた大物フィクサー”という禍々しいイメージとは裏腹に、「公明正大」とか「正々堂々」といった言葉がふさわしい快作(怪作?)。

◆『「芸能と差別」の深層』

俳優の三國連太郎民俗学者沖浦和光の丁々発止の対談集です。
「生きざま」という言葉が頻発されるのには少々閉口いたしますが、三國連太郎の「万事行き当たりばったりなのに思い込んだら命がけ」的な性向には驚くやら呆れるやら(笑)。タイトルに関心をもたれた方にももちろん楽しんでいただけると思います。



        ねーこは  コータツで  まーるくなる〜♪ 

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         ・・・幸せそうで何よりだ。

(2008年11月20日記)

秋の夜長のブックレビュー

菊五郎といえば六代目、文楽といえば八代目、山口組といえば三代目、・・・そしてサントリー社長といえば二代目なのである。小玉武著『「洋酒天国」とその時代』。

『洋酒天国』とその時代 (ちくま文庫)

『洋酒天国』とその時代 (ちくま文庫)

アンクル・トリスのイラストが漂わせるムードそのまんま、軽妙洒脱ながらもちょっぴり屈折したユーモアをにじませる読み物を掲載したサントリーのPR誌『洋酒天国』が二代目社長・佐治敬三の発案のもとに創刊されたのは昭和31年のこと。
残念ながら私は読んだことがないけれど、一企業のPR誌にあるまじき豪華な執筆人と、どこかで耳にしたことがあるコピー(「トリスを飲んでHawaiiに行こう!」など)になんとなく惹かれて読んでみた本書は、現場を知る者の回顧録だけにとどまらず、当時の生活文化の萌芽と文壇エピソードを融合させた大変に面白いものだった。
「やってみなはれ」。口は出さぬが金は出す、男前気質な社長(・・・後年は経営者のトップにありがちな失言でえらい目にあってらっしゃいますが)にバックアップされ、新進気鋭の才人・開高健山口瞳、そこに群がる個性派たちによって新しいものをつくりだそうとする溌剌とした空気が存分に味わえる上、絡んでくる人物がまたどいつもこいつも興味深いのだ。「植草甚一世代の登場」(←はい、今でもファン多いですね)「薩摩治郎八のパリ・浅草伝説」(←初めて知りました。現代人にはもはや理解不能クラスの明治生まれの豪快さんです)「埴谷雄高の酔虎伝」「酒場文化の復権」等々、目次タイトルを並べるだけで「おおっ」と思う方がおられるだろうし、花森安治淀川長治吉行淳之介、ジャーナリストの本田靖春もチラリと顔を出したりする。
つれづれなる秋の夜長、昭和30年代モダニズムを肴に一杯いかがでしょう。

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沢木耕太郎ノンフィクション『凍』(壮絶すぎて目まいが・・・)、平松洋子の料理道具エッセイ(道具、ってとこがミソ)『平松洋子の台所』、酒見賢一のチャイナ・ファンタジー(たまにはこんなのもね〜)『後宮小説』などをハイペースで読了。
ついで職場にて電話番があまりに退屈なので青空文庫岡本かの子『鮨』再読。
・・・これらの本に共通する感想以下一言。
いやぁ〜、女って本当にすばらしいですね。強くて、やさしくて、かしこくて。
男どもが夢中になる気持ちがわかるぜ・・・って、そんなことわかってどうする(笑)。

凍 (新潮文庫)

凍 (新潮文庫)

平松洋子の台所

平松洋子の台所

後宮小説 (新潮文庫)

後宮小説 (新潮文庫)

岡本かの子 (ちくま日本文学全集)

岡本かの子 (ちくま日本文学全集)

(2008年11月7日記)