an-pon雑記帳

表現者と勝負師が好きです。

日々のあれこれ

年明けてはや一月も中旬。
ようやくもぞもぞ起き出しての初日記でございます。
相変わらず思いつきをダラダラ書いていますが、よろしければお付き合いください。


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正月早々、母親からは「今年こそはなんとかしてもらわないと」とねちっこく絡まれ、黙っていればなんとも可愛いチビ(甥:3歳)からは「おばちゃんなんかしらんっ!」と言い放たれ、あうっあうっと呻いているところへ一昨日、右のコンタクトレンズを流してしまいました。
・・・なんかもう、グッド・ラック2010年の私・・と呟きつつどこかへ立ち去りたい気分。ああそれなのに。
立ち去るどころか仕事でまた未知の分野へと足を踏み出すことになってしまいました。「CMS」という新たな道へ・・・

*(※)CMSCMSとは、Webコンテンツを構成するテキストや画像、レイアウト情報などを一元的に保存・管理し、サイトを構築したり編集したりするソフトウェアのこと*

福祉畑の片隅にひっそりと生息しているつもりが、なんの因果かウェブ構築。
・・・さすがにゼロから何かを作り上げるレベルとまではいわないものの、「ちょっとここんとこ、直しておいて」「はいよ」くらいのことはできるようにならねばならないらしく、早速講習会に参加することに。
最初に習った「タグ打ち」なんてのは、テキストに暗号チックな記号や文字をちまちまちまちま入力していく、うんざりするくらい煩雑で根気のいる作業である。
で、効率UPのためにショートカットキーを華麗に駆使して高速で入力していくワザを教わるのだが、このあたりで「中学時代、因数分解の授業ですっかり取り残されたときの猛烈な焦燥感」が四半世紀の時を越えて生々しくフラッシュバックし、アタマと指先が硬直してしまいました。
・・・重ねて行く末に幸多かれ、私。
・・・どうもパッとしない話題が続いたのでここらで気分転換を。
年の初めに「今年の目標!」を掲げる習慣はありませんが、好きなことや興味のあること、そして知らないこと(ウェブ構築!)にも、少々の時間や手間やお金を惜しまず積極的に楽しむようにしたいもんだと思っています。・・・ということで最近観たこの二作。


◆『アバター』J・キャメロン監督

      

いやはや、評判どおりすごかったです。
体感を心地よく刺激するダイナミックさとスピードと色彩、アニメーションに通ずる滑らかで繊細な動きを持つハイテクな表現力は、異空間と異形の生物たちの息遣いを感じさせるのに充分であり、それはもう見事。
ただしストーリー自体は子供向けですので、映像美を堪能するためにも、ここはやはり3Dで鑑賞するのがよろしかろうと。


◆『イースタン・プロミス』D・クローネンバーグ監督

      

くわえタバコで相手を睥睨する様、サングラスをはめてさっと黒塗りの車に乗り込む一連の動作、そしてロシア訛りの英語(ちょっと変な感じの英語に聞こえます、ええ)・・・等々何気ないしぐさのひとつひとつが、触れれば手が切れそうな存在感を際立たせていました。
ジェームズ・ウッズ、ジェレミー・アイアンズと監督がお好きな「奥目の骸骨顔」役者の中でも、パーフェクトにクローネンバーグの世界を体現する男、ヴィゴ・モーテンセン。・・・すごい俳優です。そして脇を固める役者陣もすばらしい。

正視できないようなシーンも多々あるバイオレンスな作品(話題になった全裸格闘シーンは確かに凄絶)ですが、凛とした緊張感の中に時折ふっと立ちのぼる情感といい、抑制されたエロスといい、非常に端正なたたずまいの大人な映画だな、と。

園子温の『愛のむきだし』がとても観たいが(京都では今日までアンコール上映!)5時過ぎからの上映にはとうてい間に合わんなあ。
・・・観られた方、ぜひ感想をお聞かせください。


(2010年1月15日記)


追記

・・・おもしろかったです。

  

2009年「この3冊」

はい、毎日新聞からネタいただき。著名人が選ぶ2009年「この3冊」。
年末恒例あちこちでなされるこうした企画、本好きのはしくれとしては興味津々、著名人だけでなく、名もなきブログの片隅に書かれたものさえチェックしてしまう。
そこで私も・・・と思いついたはよかったが、あらいけない。私ってば新刊をほとんど読まないヒトだったのだわ、そういえば。最新情報に疎いというのもあるけれど、「あっ、これは!」と思ってネットショップの買い物かごにどんどん放り込むも、結局ゴソゴソかき回したあげく古いものを優先して購入することがほとんどである。時間がたつと評価が安定してきて選びやすいし、廉価で入手できることが多いしね・・・というわけ。こう見えてわりと慎重派なのである。
なので、こんなのを考えてみた。「2009年:今すぐ読みたい新刊3冊」。

カート・ヴォネガット『お日さま お月さま お星さま』

ヴォネガットが書いた唯一の絵本で、デザイン界の偉い人(アイヴァン・チャマイエフ・・?)との共作ということもあってたいそう美しく(表紙も素敵ですね)、イエスの誕生をやさしく謳いあげるような内容であるとか。シニカルな無神論者であるはずの著者が一体どんなものを・・と思うとこれはどうしても早急に入手したい物件のひとつである。


木田元『ピアノを弾くニーチェ

ハイデガーの専門家が書いたエッセイ、なんて聞くとややとっつきにくそうだが、タイトルからは文学的な香りが漂って魅力的だ。氏の読書歴や身近なことを書かれたコラムなどが楽しめる内容らしい。小林秀雄の話もぜひ読みたいし。


古井由吉『人生の色気』

こんなタイトルだが渡辺淳一先生ではなく。
『杳子』でこれはしんどい、と思って以来すっかり遠ざかっている古井先生だが、畏怖すべき孤高の文学者であることは重々承知している。そんなお方による人生指南。
2010年には「不惑」の歳を迎えるこの私(・・・惑いまくりだっつの)、粛々とありがたく拝読せねばならぬ。なんたって「色気」だもの。


さて次は、このところ携帯していた「どのページから読んでもOK、気軽に楽しむこの3冊」をご紹介しよう。一般にはあまり知られていないもの、あるいは専門的だったり難解だったりする素材を、誰でも楽しめるように工夫して書かれた読み物は私の大好物である。
・・・よかったら、ちょっと覗いてみませんか。

飯泉太子宗『壊れても仏像 文化財修復のはなし』

仏像や仏教美術にはそれほど関心がないのだけど、「仏像の修理」というレアな現場にかかわっている専門家のお話はぜひとも聞いてみたいもの。仏さまの修理ってくらいだから、熊谷守一っぽい渋い爺さんが黙々となさっているのだろうかと思いきや、著者は1974年生まれの青年である。ややこしい仏像のお名前や特殊な道具をコミカルな自筆のマンガで説明したり、プラモデルのパーツにたとえてみたりと若者ならでは遊び心があってとても楽しめる。
それまでのユーモラスな口調から一転、

(仏像が)現在まで残っているのは、人の思いの連鎖があるからだ。仏像を大切だと思い、信じて、残していきたいと願う−そういう想いがないと仏像は消えていってしまう。

という言葉には、そうだなあ・・それは仏像に限らずいろんなことにあてはまるよなあ・・と思いめぐらしてみたり。


飯沢耕太郎『きのこ文学大全』

あなた・・・確か写真評論家じゃなかったでした?そう、そしてもうひとつの顔が堂々「きのこ文学研究家」なのである。きのこ文学・・・きのこが出てくるお話ね(漫画も含)。
・・・私などが思いつくのは「不思議の国のアリス」と宮沢賢治モノくらいのもんで・・・
よくまあこれだけ集めたな・・・と感嘆すること必至。
コミカルなもの、うまそうなもの、幻想譚(泉鏡花が秀逸!)、毒と狂気を秘めたもの、そしてもちろんエロいものだってご用意しております。
・・・きのこパワーによって炸裂した想像力(創造力も)の豊かさをとくとご覧あれ。


小林泰彦『むかし道具の考現学

昔の、あるいは特別な地域(アイヌ、ネパールなど)だけで使われていた見たことないような道具を、あたたかみのあるイラストで紹介してくれる。野外作業で使われる道具が多くとり上げられていて、私には珍しいものばかり。
ショイコ、背負いカゴ、ソリなどの運搬道具のその多彩なこと!
作業衣・小道具・民家などの記述も多く、柳宗悦や民芸ファンにはたまらない一作かと。
明治の昔にチベットを旅した「河口慧海の旅支度」なんて章もあり、そのひとつひとつのディテールに感心して読みふけってしまうのであった。

(2009年12月22日記)