Deglaciaitonの中国鍾乳石の解釈

1ヶ月前のScienceから

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Zhang et al., Science 362, 580–583 (2018)
East Asian hydroclimate modulated by the position of the westerlies during Termination I

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ハインリッヒ1(H1)とヤンガードリアス(YD)での中国鍾乳石のd18Oを解釈するために、trace elementを分析。
Cave siteは、Upper Yangtze なので、現在の降水のサンドイッチ構造の真ん中、長江集水域に入っている。
驚きなのは、trace elementからは、H1とYDにどちらかというと湿潤になっているということ。それを、鍾乳石d18Oとどう折り合いをつけるか。
簡単に言ってしまえば、鍾乳石d18Oは北部、TEはその場の降水(長江集水域を含めた南部)を表していて、モデルとも整合的だからいいですよね、ということ。

ただし、いくつか問題はあると思う。

1. trace elementと湿潤乾燥の関係が、この論文のように単純なのか。例えば、温度の効果などはどのように解釈に加えるのか?

2. シミュレーションで、7−8月の降水アノマリを出しているが、長江集水域〜 日本にかけては、現在では6月から梅雨が始まるので、7-8月だけを抜き出した図がふさわしいかどうか。Fig3では、5-6月は減っているが、7-8月は増えている。差し引きすると、梅雨全体の降雨アノマリはほとんどなくなるのではないか?

3. この論文のポイントは、中国内、あるいは東アジアモンスーン地域内での地域内パターンの不均一性と、南部は北部よりも降水変動が少ないのでは?という2点に尽きると思う。d18Oの解釈が、その場の降雨量ではなく、降水のd18O>さらに北部がそれに敏感、というのは、時間スケールによってはそうとも言えると思う。それ以外はさらなる検証が必要だと思う。d18Oが北部の降水を表すにしても、23kyのみの卓越は、レスの記録とは整合的ではない。